無罪請負人刑事弁護とは何か? (角川oneテーマ21)

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  • KADOKAWA/角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041107645

感想・レビュー・書評

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  • 国策捜査について興味深く読ませてもらった。マスコミ、新聞主導で国民感情が誘導されてしまう場合がある。刑事弁護の奥深さを知ることが出来る一冊。

  • 読みがいがある内容だった。戦う弁護士。

  • ●まず刑事裁判とは何か。警察や検察長が捜査した上で、検察官が起訴して始まるものである。犯罪を認定し、死刑や懲役といった刑罰を科すことを目的とする。これに対して民事裁判とは、私人の権利関係の判断である。要するに「金を払え」とか「建物を明け渡せ」といったことを要求する裁判である。
    ●三浦和義のロス疑惑、阿部医師の薬害エイズ事件で無罪を勝ち取った。
    ●「公判前整理手続」とは、裁判の迅速化効率化を図るため、裁判が始まる前に、裁判所と検察官、弁護側が、争点や証拠絞り込んで審理計画を立てる手続きのことを指す。
    ●収賄事件の難しさ。政治家の場合、支援者からお金をもらう事はよくある。その一方で政治家の活動が特定の支援者のためになる場合もある。いずれも通常の政治活動の一環である。「お金をもらったから、その活動した」と言う筋書きを作る。これを覆すのはなかなか難しい。
    ●戦後から、石橋湛山や鳩山一郎、田中角栄など対米自立路線を模索した政治家たちは、何らかの形で政治の表舞台から引きずり降ろされている。米国の圧力が疑われる。
    ● 住管の仕事は、いわば弁護士が国家権力の側につき、警察の力を使って、民事紛争に踏み込んでいくことを意味した。
    ●弁護士は、あまり「社会正義」などを高く掲げず、被告人の利益を守ると言う1点において尽くしたほうが健全だと私は考えている。

  • ・村木厚子さんの事件(無罪)。
    ・小沢一郎さんの事件(無罪)。
    ・鈴木宗男さんの事件(一審有罪→控訴審からの受任、有罪確定)。
    ・薬害エイズの安倍医師(無罪→控訴後公判停止)。
    ・ロス疑惑の三浦氏(有罪→逆転無罪)。
    ・虚偽診断書作成・同行使罪で起訴された医師(無罪→逆転有罪)。
    ・麻原彰晃の主任弁護人だった安田氏(有罪)。
     これらはすべて弘中弁護士が担当した刑事事件で、この本に出てくる。特に村木厚子さんの弁護の話が面白かった・・・。検察の「悪事」のぼろが次々と剥がれていく様は、こういっちゃなんだけど、爽快。
     小沢一郎さんと鈴木宗男さんの事件の国策捜査感。「国策捜査は時代のけじめをつけるために必要。時代を転換するために何か象徴的な事件を作り出してそれを断罪する」「揺さぶれば必ず何か出てくる、そこに引っ掛ける」、「捕まえれば、必ず事件を”仕上げる”自信がある」…そんな観点で狙い撃ちされては、たまらない。おそろしい。
     そして、判決は無罪確定でも、逮捕や起訴や、そこに至るマスコミ報道によって社会的地位は不可逆的な大打撃を受ける。そんなのあり?!悔しい。
    武富士の社長の代理人をしたり、薬害エイズの安倍氏を弁護したりしたことで団体のバッシングを浴びたりしたそうだ。
     強者と弱者はそう簡単に分けられない。お金持ちであっても、医師の世界で権力があっても、刑事事件の被告としてみれば、マスコミと対峙すれば、弱者。このあたりを知って、弘中弁護士の信念がわかった気がした。

  • 内容は面白いが主張はあまり好きではない

  • 今の人間社会において「法」というものが存在する中、「法学」については、固く陰険で、警察・検察の右向け右・これがルールだ的な秩序思想がどうも苦手で...、目をそらしてました。

    そんな中、本書は「法」に堂々と向き合いつつ信念にブレが無いと感じた。検察、すなわち国家権力の不正・不当に明確な異議を唱えている。
    (犯罪者を弁護するわけではないが)刑事立件されたら一般人は勝てる訳がないルールなのが本当によく分かり、腹が立つ。供述での弁護士立ち合いと可視化、こんな当たり前のことが実現されない現実に悲しくなってくる...。

    しかし何といってもやるべきことは目を背けず知っていく努力をすることだろう。「次は我が身」の可能性は”ある”のだから...。

  • ゴーンハズゴーンで有名な弘中弁護士。
    この本はその事件に関わる前の著述。
    書いてあることはいちいち納得。
    裁判所は酷いが、やっぱり検察がひどい。
    何時もではないと思う。やっぱり有罪率90%以上は、綿密な事前捜査に基づくものなんだろううが、所詮は官僚組織、上部組織の見込み違いが修正できない。
    裁判は真実を争うところではなく、証拠の正否を争うゲームだってのは判るが、官僚組織が無辜の市民を、圧倒的な有利な条件の下でゲームを仕掛けて有罪にして、何が残るのか。

    怖いわ。

    ただ、国策調査って言葉は引っかかる。国ではなく、検察でないの?

    で、この後ゴーンさんの事件でああなってしまったわけだが、それについての著書をぜひ書いて欲しいと思っている。

  • 衝撃的だなー。正義はどこにあるのだ。国策捜査は冤罪の温床だと!?(((( ;゚Д゚)))

    P79 その意味で刑事事件では、当人がそれまで送ってきた全人生、人間性のすべてが試される

    P85 国策捜査とは検察、なかでも得喪検察が、ある政治的意図や世論を動かすために進める捜査を指す。たまたま犯罪があることが発覚したので犯人を逮捕・起訴するのではなく、何かの理由をつけて特定の人物を逮捕・起訴することを前提にすすめるのである。このため、恣意的な法律の適用や権力乱用的な操作を招きやすく、冤罪の温床となりうる。標的は政治家に限らない。官僚、経済人、学者、弁護士など、社会の中枢に位置する人物が対象となる。

    P107 検察側が作成した調書に署名しなければ返してもらえなかった。「この場で一応サインして、法廷でいいたいことを話せばいい」と言いくるめられ、最後は疲れ果ててサインするーーーこれまでの冤罪事件と構図は同じである。

  • 2冊目(1-2)
    担当していたカルロス・ゴーンがレバノンへ行ったので読んでみました。この本を読んでる最中にもカルロス・ゴーンの会見が行われたが、日本の司法に対してゴーンが行ったことと全く同じ事が書かれていた。

  • 著者は、カルロス・ゴーン氏の弁護人を務める弘中惇一郎弁護士。無罪請負人とはマスコミがそう呼んだだけで、何が何でも無罪獲得というものではないのは本書にある通り。
    弘中氏が過去に弁護を務めた人物はWikipediaなどにありますね。もちろん、本書で一部は詳しく著されています。

    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%98%E4%B8%AD%E6%83%87%E4%B8%80%E9%83%8E

    ゴーン氏の事件、裁判ははとても興味深い(といったら失礼かもしれないけど)。世界的にも、色々な意味でとても注目されてるのでは。本書の第五章「刑事司法の現実」にある通り、日本の司法の実態が露わになる可能性があることにも期待したい(良くも悪くも)。検察官の作文、シナリオ尋問による誘導、有罪率99%以上など、日本以外の先進諸国はあり得ないことが起こってきたわけで。さてどうなるやら。
    以下は本日のニュース。本書で述べられていることと重複しますね。

    https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190304-00010006-wordleaf-soci
    “今の日本のこの拘留は、人質司法と呼ばれるぐらい、つまり検察官の言うとおりに自白をしないと、その罰としていつまでも拘留を続けるということになってまして、これは大変各国から批判が多いところです。私どもとしてもそういう状況を訴えて、1日も早く保釈を取るようにしたいと思っています。”
    “もう1点補足しますと、本来であれば、検察官は有罪にできるだけの証拠が集まったと思って初めて起訴をするわけですね。だからこそ刑事訴訟法では、起訴された被告人には保釈を受ける権利があると、権利となっているわけです。ところが検察官は、まだまだ自信がないと。もしかしたら自分の証拠が弱いかもしれないという、そういうもう心配事から、なんとか被告人の防御権を弱くしようということで拘留を長引かせるわけですが、これは極めてアンフェアだというふうに私は思っています。”

    で、本書は面白い…のだけも、結構脱線がある。熱意はとても伝わってくる。でも、書籍の作りとして、もう少し項目ごとにしっかり区分して、それぞれで何を重点的に言いたいのかをわかるようにする方が、読みやすいのでは感じた。

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著者プロフィール

弁護士、法律事務所ヒロナカ代表。一九四五年、山口県生まれ。東京大学法学部在学中に司法試験に合格。七〇年に弁護士登録。クロマイ・クロロキン事件などの薬害訴訟、医療過誤事件、痴漢冤罪事件など弱者に寄り添う弁護活動を続けてきた。三浦和義事件(ロス疑惑)、薬害エイズ事件、村木厚子(郵便不正事件)、小澤一郎事件(「陸山会」政治資金規正法違反事件)など、戦後の日本の刑事訴訟史に残る数々の著名事件では無罪を勝ち取った。

「2021年 『生涯弁護人  事件ファイル2 安部英(薬害エイズ) カルロス・ゴーン 野村沙知代・・・・・・』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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