- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041303191
感想・レビュー・書評
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衝撃的。リアルで凄まじく怖い。1970年当時の星新一さんの着眼点、2020年からしたら、予言者の域。
スマホのメモ機能、オンライン授業、おすすめ機能を持つネット通販にアレクサ、サブスク、SNSの友達の誕生日通知機能など、現代人にはお馴染みのツールやサービスを彷彿とさせるコンピューターの多機能化と、人間とコンピュータのどちらが主従かもはや分からないほどの依存がこれでもか描かれていて、身につまされる。
そして、利便性のためにデータとして保管・管理されるようになった個人情報の保護意識の高まりと、
情報資産としての高い価値化、
漏洩への不安、
だからこその、他者の秘密を覗き見る快楽や罪悪感といったものも余すことなく盛り込まれている。
星さん、タイムマシンで50年後の2020年に来てこっそり覗き見してから書いたんじゃなかろうか。
いや、もう、ほんとうに、すごい。
うん、すごい。
すごい。(興奮のせいで語彙力崩壊。)
この作品は、ショート・ショートの神様と言われた星さんにしては珍しく、12階建の某マンションを舞台に、12人の登場人物を用いて、12ヶ月の物語として描いた、12編からなる連作短編集。
第1、2章を読んで、3〜4ページで明確でハッとする結末をいくつも作り出してきた星さんにしては、うーん、なんかぼんやりしたまま終わったな…と思ったと思えば。
3、4、5章…と読み進めていくうちに、連続性や伏線が明らかになると同時に、描かれている人間の多様性、少なからず体験した覚えのある不安感や欲望、罪悪感などに引き込まれてしまう。
そして、迎えた結末はといえば…。
こんな未来、本当に来るかもしれない。
いや、もう始まっているのかも。
この、ネット社会を予知していたとしか思えない生々しさや驚きは、ネットがなかったゆえに近未来のSF作品として捉えていただろう1970年当時よりも、2020年を生きている現代の読者こそ味わえるものだと思います。
50年越しに今こそ読むべし、と思った名作。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
星新一の名著中の名著。この人の頭の中はいったいどうなっているのか。すごいのひとこと。
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廻る歳月、辿る階層。無から有へ、有から無へ。円環する世界。電脳と人間の甘やかな蜜月関係。
完成度が高すぎる。電脳網とメロンの網目をかけてるなどネーミングの妙も心踊る。 -
初・星新一です。
読んで最初の感想は「この人いつの作家?」
ある時代、電話は単なる通話の道具ではなく、様々な情報とサービスを提供するものだった。
商売に有益な情報を得る事も病院の診察を受ける事も買い物も、ダイヤル一つで家に居ながらにして済んでしまうのだ。全ては偉大なる機械文明の恩恵……。
さて、作者である星新一氏は97年までご存命だったそうです。「だからこういう作品なのね」と思いましたが、この『声の網』が発表されたのはなんと1970年!本当に本当に驚きました。
なんでインターネットがここに?正にそんな感じでした。
登場人物たちから感じられる、情報への依存・情報に対する危機感の欠如・モラルの欠如・万能感……怖いくらいに現代社会に当てはまり、新鮮で、ぐいぐい引き込まれました。
知識をエネルギーと定義し、文明の発展・行く末を宇宙の誕生になぞらえた件が興味深かったです。
ラストはバッドともハッピーともつかない……読み手と言う傍観者の立場から「これでいいの?」って思いながらもあの世界に生きる一人として「何にも問題ないじゃん」とも思ってしまう、というより思わされてしまう迫力がありました。 -
解説に1970年に書かれた本だと記されている。驚くほどの正確さで背筋が寒くなる。おそらく人の営みとその要望に対する深い洞察が為せる技(欲しい物は可能である限り、そのうちにつくられるから)。最近流行りのchatGPTと音声認識を使えば、ほとんどそっくりなことができる。
ただ一つないのは秘密を保持する情報銀行だけ。プライベートな情報の保存という意味ではdropbox辺りが、プラットフォームという意味ではGAFAM辺りが一番近いだろうが、人々のセキュリティへの関心も相応に高まっていて、この話ほど不用意に秘密を保持させる方法は支持されないように思える。
シンギュラリティが実現されていそうな、10年後に読んだら感想がどう変わるか知りたい本。 -
『空気を読むな、本を読め』の推薦本。1970年代に書かれたとは思えないぐらい、現在に通じるところがある。連作短編小説という形式で、一話完結の短編が集まって、ひとつの大きなお話になっている。
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星新一がひたすらすごい
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娘に勧めたところ、何度も読み返すほどの気に入りようでこちらも嬉しくなる。何十年も前の作品であることをどれほど分かっているだろうか。先見の明、なんていう言葉では軽すぎるほど。