三つ首塔 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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感想 : 78
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041304068

作品紹介・あらすじ

華やかな還暦祝いの席が三重殺人現場に変わった! 宮本音禰に課せられた謎の男との結婚を条件とした遺産相続。そのことが巻き起こす事件の裏には……本格推理とメロドラマの融合を試みた傑作!

感想・レビュー・書評

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  • ゆる〜く横溝正史を読み直そう!『三つ首塔』です

    『三つ首塔』にはちょっと思い出がありましてね
    確か小学五年生か六年生だったと思うんですが、幼なじみに本屋の息子がいまして仲良くしてたんですね
    その彼が誕生日にプレゼントしてくれたのが本書でした
    自分からリクエストしたかどうかは忘れてしまいましたが、角川文庫の横溝正史シリーズを収集してる途中だったので少なくとも何を持ってないかの確認はされたと思います
    『病院坂の首縊りの家』上下巻も一緒だったので実家が本屋とはいえ小学生としてはかなり太っ腹な誕プレでしたね今思えば
    今さらながらありがとうね(届くはずもないお礼コメント)

    しかし、我ながら小学生の誕プレで横溝正史て!しかもよりによって『三つ首塔』て!

    はい、『三つ首塔』ね
    作品紹介によると「本格推理とメロドラマの融合」みたいなこと書いてありましたが、本格推理の要素はほぼないです
    どちらかというと運命の恋に落ちた男女の冒険小説って感じですね

    直接的な描写はないんですが、主人公音禰は言ってみればレイプされた男に恋しちゃうわ
    近親相姦に近いようなものや、当時は非常に嫌悪されていた同性愛も出てきて小学生が読む本じゃねーな全く
    どうなっとんねん!(お前だ)

    まぁでもね、好きですこういうの
    結果なんやかんやでハッピーエンドだし
    ええやんええやん、ご都合主義
    ヒロインのひとり語りの体裁だったり、金田一耕助あんまり出て来なかったりでシリーズの中ではかなりの異色作ですが、あたしゃ好きですよ

    よし、次は『悪魔の手毬唄』行きます!(予定)

    • ひまわりめろんさん
      riyumomさん
      こんにちは

      嬉しいこと言ってくれるじゃないですか

      横溝正史は今から70年くらい前の作品になりますので内容的にはもちろ...
      riyumomさん
      こんにちは

      嬉しいこと言ってくれるじゃないですか

      横溝正史は今から70年くらい前の作品になりますので内容的にはもちろん古いんですが、とても読みやすいんです
      なので中身はともかく表現としての難しさはなかったので小学生でも読めたんですよ
      もちろん周りに横溝正史読んでる友達いませんでしたけどw
      ぜひぜひご一読を!
      2023/10/16
    • みんみんさん
      なんであえての三つ首⁇って思ったけど…
      好きなのね( ̄▽ ̄)笑
      なんであえての三つ首⁇って思ったけど…
      好きなのね( ̄▽ ̄)笑
      2023/10/16
    • ひまわりめろんさん
      まぁそうね
      数ある中で『三つ首塔』上位に持ってくる人あんまりいないかもねw
      まぁそうね
      数ある中で『三つ首塔』上位に持ってくる人あんまりいないかもねw
      2023/10/16
  • いつもの金田一シリーズに輪をかけて愛欲金欲まみれのゲスなお話だなぁと思ったけど、一応それだけではない事情もあったみたい。ともあれ何でもありでツッコミどころ満載なんだけど、いつの間にかハラハラドキドキさせらせてしまうのでした。

    それにしても、差別・偏見が酷い。ちょっと昔なだけでこんな感覚だったのだと知るだけで勉強になる。マイノリティは生きづらかっただろうな。

  • 冒頭50ページで3人が死ぬという、シリーズの中でもハイペースで死体を量産する本作。結局、終わってみれば二桁の人が死んでます。多いな!
    それなのに、今作のジャンル区分に相応しいのは推理小説ではなくハーレクイン小説?官能小説?なんだよなぁ…(笑

    近親相姦よりも同性愛の方に嫌悪感を示すのもよく分からん(笑)。時代だね〜(で済ます笑)。

    今作は終始、主人公であり語り手でもあるヒロイン・音禰の心理描写にツッコミを入れるのが楽しい()内容です。
    自分を××した男に、そんな簡単に惚れるかァ?←
    そんなヒドい男にしか頼れない状況に追い込まれたレディーのめくるめく変貌を描きたかったんでしょうが、うーん、横溝先生、女心の描写がかなり大雑把です!笑。推理小説に感情の機微とか全然求めない、むしろ邪魔!と思ってる私でも突っ込まざるをえません!笑

    死体大量生産の後のヒロイン達のアドベンチャーや驚愕の事実も突っ込みどころ満載です。
    いくら何でもそれ死んでるやろ!
    だったり、
    レディーを××した男が××だなんて、それが一番ホラーだわ!!
    だったり、
    金田一先生活躍しなさすぎィ!
    だったり、
    何かもう男女の情欲渦巻きすぎててKIMOI
    だったり。


    うん、まあ、長く続くシリーズの中ではこういう異色作も必要なんでしょうね←

  • 金田一が全く出てこないので推理パートがなくて物足りない。ただ、音禰の逃避行を描いた話としては面白い。行く先々で人が死に、また私が犯人!?みたいな。
    時代だなぁと思う描写は色々あるけど、最初があれでよくそこまで惚れ込んだな。と思ったら、最初はレイプだったのに好きになっちゃう…みたいな話は現代でもTLコミックやらweb小説やらでごまんとありますね。昔から「そんなことあるわけないだろ」と言われながら人気あったんだな。
    鷺の湯での激昂ぶりから伯父様だろうとは思ったが、このシリーズに出る人はどうしてこう破滅的な愛に嵌るんだろうか。笑

  • 一人称で主人公の宮本音禰の視点で書かれている。金田一耕助ものだが推理小説というより冒険小説。

    行く先々で殺人事件に巻き込まれの逃避行を続ける音禰を応援したくなり読むスピードが加速する。

    金田一耕助は脇役だけど音禰からの嫌われっぷりはなかなかのもの。

    一人称で主人公視点の金田一ものは長編では「八つ墓村」や「夜歩く」。短編では「蝙蝠と蛞蝓」や「七つの仮面」を知っているけど、他にもあるのですかね?

    推理やトリックは雑になるのですが、実は全部面白い作品であることは確かです。

  • 両親を亡くし、伯父宅に引き取られた音禰に思いがけない相続の話が舞い込む。その額なんと百億円!しかし、その条件は見知らぬ男・俊作との結婚だった。戸惑いの中で起きる惨劇の数々。その謎を解く鍵は、記憶の底に浮かんだ三つ首塔だった!

    金田一耕助シリーズながら、音禰の回顧録という形で進んでいく。事件の渦中で秘密を抱えてしまう音禰。金田一はその秘密を暴こうとする敵として描かれる。「もじゃもじゃ頭の金田一耕助が安楽椅子にふんぞりかえっている」とか嫌われてるなあと笑ってしまう。音禰自身も事件後に読み直して苦笑いを浮かべてそう(笑)

    否応なく事件に巻き込まれる音禰。遺産を巡る待ったなしの殺し合い!いくつもの顔と名前を持つ謎の男・高頭五郎に手を引かれ、スリリングな逃避行と恋愛を繰り広げる。きっかけがあれで恋にはならんやろ!とは思うけど、まあ二人の間で終わりよければすべてよしかな。

    犯人も終盤までわからず、ハラハラして読めた。いわゆる推理小説ではなく冒険小説として読むとちょうどいい味わい。でも、締めくくりはイイハナシナノカナー?ってなる。金田一の言葉を借りれば「世の中には理外の理というものがあるもんですね」という言葉に尽きる物語。

  • 音禰の回顧録という形になっているので、終始音禰の視点で物語が進み金田一はちらっとしか出てきません。
    推理がまとまって「皆さんお集まり下さい」みたいなシーンもなく、金田一の活躍シーンがないのは少し寂しい気もしました。

    しかし、逃避行、次々起こる殺人、意外な犯人。
    最後まで犯人がわからないまま、出来事が積み重なっていく展開がとても面白かったです。

    横溝正史シリーズのドラマも見ましたが最後まで原作に忠実でした。黒沢年男さんが「音禰!音禰!」と力強く呼ぶたびに笑ってしまいましたが、そんなところも忠実でした。

  • 『ひとり横溝正史フェア』で今回選んだ作品は「三つ首塔」。
    こちらは読んだこともなく映像化されたものもあるようだけれど観たことがない。
    タイトルに惹かれたので読んでみた。

    両親を亡くし伯父宅に引き取られた音禰。
    その音禰の遠縁である玄蔵老人の莫大な遺産を相続する話が持ち上がる。ただ、遺産を相続するためには玄蔵の決めた相手との結婚が条件だった。
    見知らぬ結婚相手とはじめて会おうというホテルで開かれた伯父の還暦祝いで、その相手である男は何者かに殺されてしまう。

    こういう設定は「犬神家の一族」にもあった。
    当然結婚するべき相手は殺されて、そうなると宙ぶらりんとなる遺産を巡って血で血を洗う惨劇が起こるに決まっている。
    ただ本作が少し違うのは、いつもの横溝正史ならひとり、またひとりと殺されていくところを、物語はじまってすぐに三人が殺されてしまう。ちょっと乱暴な幕開け。
    いきなり三人殺されて、その後も勢いついたままドンドン殺される。
    結局十人位殺されてしまう。
    殺されすぎ。
    こんな大量殺人事件が起きているのにたいして進展しない捜査。日本警察大丈夫なのか。

    最初の事件が起きたとき、催し物としてアクロバット・ダンサーの描写などがあるが、江戸川乱歩が好んで用いそうな感じがした。
    作品全体から淫靡な雰囲気が漂っている。

    音禰はホテルで出会った男に強姦される。
    その男はその後も音禰の近くにあり、繰り返し音禰を抱き、音禰を護るナイトのような役割をする。音禰も男にのめり込んでいく。
    この設定がおかしすぎる。
    はじめて会った時点で音禰はその男に一目惚れしてはいるのだが、そうであっても自分を強姦するような男に脅迫されるわけでもなく繰り返し抱かれ、愛するようになどなるだろうか。
    考えられない。あり得ない。
    そもそも大量に殺人事件が起きていて犯人が捕まらない時点で無理があるところに、こんな男性の夢物語のような、売れないアダルトビデオまがいの陳腐な設定があると読む気を無くす。

    また、この男は音禰を強姦して強い男臭い男みたいに装っていたが、実は音禰がはじめての女性で、ひたすら音禰を愛していたという突然の純情設定も強引だと感じる。
    はじめての性行為が強姦って人格に問題があるとしか思えない。
    そこに男の純情みたいなことを絡められると、ただ気持ち悪い。

    更にこの作品のツッコミどころとしては、高いビルから飛び降りても、深い穴の底で落ちてくる音禰を抱き止めてもたいした怪我をしない男というところ。
    不死身すぎる。
    どんだけ丈夫な足腰だ。
    普通なら死んでもおかしくないし、そうでなくても後遺症のある怪我をする状態。
    もう少しきちんと現実的な設定や展開をして欲しい。

    この作品は、今まで読んだ横溝正史の作品の中では最も残念な作品。
    頭で空想するだけでなく、きちんと現実を見据えて物語を作らないといくら小説といってもなんでもありではないはず。
    犯人もかなり序盤でわかったし、理由の見当もついた。
    正直に言って、横溝正史が真剣に書いたかどうかさえ疑わしく思える。
    この残念作品のためにせっかく盛り上がっていた『ひとり横溝正史フェア』が盛り下がってしまう。

  • なんというか、安っぽい官能小説テイストにあふれた珍品という印象。
    調べてみたら1972年の作品だそうで。
    70歳の時の作品になるのかあ。
    あんまり良い出来とは思わないねえ。
    ★2つ。

  • 私の好きな横溝正史・金田一シリーズなのですが。
    読んでいてこれはもしや江戸川乱歩か? と思うエロさ。
    読んで気持ち悪くなるほどでもないけれど、必然性がないと思うんだよなー。
    主人公(音彌)の魅力もあまりないし、
    犯人の動機もちょっと弱い。
    というわけで★二つです。

  • 本格推理と言うよりはアクションものというか、どぎつい要素が次から次へと提示される、サスペンス番組みたいな雰囲気。しょっちゅうヒロインが悲鳴を上げてはそのたびにコマーシャルが入るような……そんな感じ。

  • 女子大を出たばかりの若く美しい女性、音禰が語り手。
    ある日、アメリカにいる、曽祖父の弟・玄蔵の使者が音禰の元にやってくる。百億になるという彼の財産を音禰にゆずるというのだ。しかしそれには「高頭俊作」という見知らぬ人物と結婚するという条件があった。ところが、彼女の伯父の還暦パーティーの場で3人が殺される。そのなかの一人がなんと「高頭俊作」であった。
    「三つ首塔」というなんだかおそろしげな名前の塔が出てくるが、ホラー要素はあまりない。それよりも、音禰がいろいろな事件にまきこまれていくうちにだんだん変わっていくのが怖いような。結果良ければすべて良し、でしょうか。相変わらず金田一さんはいいとこどりのような気が。
    目次が優秀すぎて、それだけでなんとなく話がわかっちゃう。

  • どんだけ首がごろごろする話なんだろうと思ってたら、ひたすらヒロインが許嫁とイチャイチャする話だった。

  • エログロ色の強いミステリー。ヒロイン音禰の、男の征服欲を刺激するキャラクターは今となっては時代錯誤な感じだけど70年近く前の作品だから無理もない。八つ墓村同様金田一の出番が少ないのが残念。

  • ほとんど金田一耕助が出てこないけれど、金田一耕助への評価が語り部の音禰についつい引きずられてしまう。あのシーンでは思わずこちらまでホッとしてしまった。
    両親を亡くして伯父のもとで暮らす音禰のもとに、見知らぬ男と結婚を条件に百億もの遺産が転がり込むことに。遺産をめぐり、今まで顔も合わせたこともない一族が集結するのだけれど、その一人一人も、彼らに付属する人々も個性が強い。音禰は令嬢として大切に育てられていたけれど、転がり落ち始めるとあっという間。彼女の行く末はいかにー!?と心配していたけれど、ハッピーエンドで終わってよかったよかった。

  • 誰が犯人か全く分からないまま、主人公の気持ちになってハラハラしていた。面白く読めたし、最後は主人公と良人が結ばれるハッピーエンド?だったので良かった。ただ、なぜ伯父が主人公を女性として愛していたのかがイマイチ分からなかった。美しいの一言だけなのか、長年一緒に暮らしていて、他人だったからか…。もしくは、主人公の母親の姉と結婚していたが、亡くなって、主人公と自分の亡くなった妻を重ねて見ていたのか…。罪に罪を重ねて死んでいき、こんなことをしなければ幸せに暮らしていたのではないかと思わずにはいられない。ただ、人生というのは、そういった自分でも予期しないことから、些細なこと?から大きなことへと良いも、悪いも繋がっていくのかもしれない。今回は主人公と良人が結ばれたから良いものの、少し気持ちはスッキリしないというか、怖さを感じる。

  • 読み始めてすぐに「あれ、女王蜂と大体の構図一緒じゃね?」と思うけど読み進めてるうちにそれが大体一緒だ!の確信に変わります!
    でも女王蜂よりも横溝先生の書きたかったこと全開!という感じで清々しくて好きです♡面白人間博覧会かな?っていうくらい濃い登場人物に翻弄されながらも全身タイツで頑張る音禰ちゃんが好きです♡
    でもよくわからないけど何で音禰パパは音禰ちゃんを陥れようとしたの?他のやつ皆殺しにすればよくない?指紋はどうやって残したの?と様々な疑問が湧いてきますが横溝先生の圧倒的な「俺はこういうのが書きたかったんじゃい!」の前ではそのような瑣末なことを考えるだけ無駄ですね♡
    本格的なミステリを所望してる人には向かないけどともかく横溝正史が好き!という人はこれを読まなければいけないと思います!

  • 人物描写が類型的、表層的に過ぎる。
    もし、「男性作家には女性の人物描写は不可能」との立場で弁論大会を戦う
    ことになれば、この作品を真っ先にその証左として挙げるだろう。というか、
    男性の人物描写も同程度に酷いので、本作は上記主張の役にさえ立たないだろう。

  • 冷静に考えれば困惑展開なのに全て豪速でやりきるから最後まで面白かった。ファイトが湧いてきたときの音禰さんがよいです。

  • 本書では、金田一耕助はほとんど登場しない。
    冒頭と最後に出てきて、最後は全てお見通しであったことは語られるが、どのように推理したのかは語られないので、シリーズの中では推理要素は少なめに感じた。

    ヒロインの音禰は、今の時代にも通じるモテ要素を持っていると思った(真似したいくらい)。女としてのプライドはあるが、好きになったら情に熱く、便りなげに見えるのに、しっかり自分を持っていていざとなれば大胆な行動もする。でも、好きな男性の前ではか弱い女である。
    音禰の彼も最初はチャラついた男だけど重要人物なんだろうな程度に思っていたが、最初のギャップが激しい!彼もまた情に熱く、ちょっとした折り目にキスを求めるところや後半音禰を励ますところは感動的でさえあった。惚れてまうやろー!と思うくらい。
    最後まで生きているかとっても不安になるくらい尊い愛情を見せてもらった。

    金田一耕助というより、音禰の冒険譚として、世界に入り込んで一気に読むのがおすすめ。

  • 昔読んだ本

  • おもしろかった

  • 音禰の話。男前な旦那さんの話

  •  本作は、その昔、古谷一行が金田一耕助を演じたTVドラマ「横溝正史シリーズ」で見ており、犯人が誰かと、音禰と高頭五郎との濃厚ラブシーンだけは鮮明に覚えていた。
     が、それ以外は完全に忘却。
     ここまで音禰が色々な殺人現場に出くわしていたことは素直に驚かされた。

     元より戦後直後、大学まで進学した令嬢がストリップ劇場やSMクラブに出入りし、また闇ブローカーや女(男)ジゴロに危うい目に遭う(一線は超えないが)件は、官能小説ばりだなぁという感慨はないではない。

     ただ、それにも増して高頭五郎とイタしたため官能に狂い、彼とのSEXなしに耐えられない女になった音禰のあり方。意外にも、極端にも見える展開は、一旦は、ストックホルム症候群によるのか?と思わないではなかった。
     しかし、良家の子女が、頼りがいはあるが乱暴な振る舞いをする男、30~40年代には男らしいと規定された男に零落させられ、「女」と化してしまったことは、現実にも物語的にもないではない。
     それは些か型通りのきらいはないではないが…。


     というようにみると、本小説は、ミステリーというよりも、ラブ・アフェアーというべき作品なんだろう。というあたりで個人的には落ち着いたところ。


     ところで、TVドラマ版は、「犯人」の暗く歪な愛惜感情を前面に出して、小説ラストより、犯人最期のシーンを印象づける演出であったと記憶している。
     そういう意味では、本書の読後感とはかなり異質である。
     つまり、仮に展開や筋立てが同じであっても、音禰の一人称で語られる物語と、神の目で語られる作品の印象が違うことになると言えそうだ。
     それはまた、一粒で二度美味しい作であるとも言えそう。


     とはいうものの、高頭五郎とのSEXに狂い、彼がいないと(というよりも、彼とのSEXなしには)生きていけないという描写を混ぜつつ、その五郎に対し「あなた」と呼びかけ、また彼を他者に対し良人であると規定してみせるのは、時代がかっている。
     男女の結びつき・性交渉=結婚の構図をまざまざと見せつける件だ。処女性の強調も同様。このあたりが、本作成立の時代層の反映を色濃く感じさせる。


     ところで、ドラマ版である。金田一=古谷一行は兎も角、記憶している範囲においては、宮本音禰は真野響子、高頭五郎は黒沢年男、上杉教授が佐分利信で、あと殿山泰司とピーターが出ていたような気が…。
     調べると、77年版とされる当該作品だが、その他のキャストは、〇佐竹建彦 - 米倉斉加年、〇法然和尚 - 殿山泰司、〇古坂史郎 - ピーター。古坂史郎をはじめとして、さもありなんのキャストという他はないところ。

  • 良家の令嬢の所へ突如舞い込んだ
    巨額の遺産相続の話。
    条件として見も知らぬ男と
    夫婦になれというものだった。
    この莫大な遺産を巡り、
    血みどろの惨劇が巻き起こる。



    知っている金田一シリーズとは
    全く異なった印象の作品。
    麗しの令嬢が悪漢に惚れ染まり、
    全く関わりの無かった
    裏社会、人間の闇に直面する。
    数々の死体を目の当たりにし、
    挙句、警察に追われるという
    サスペンス色の強い作品で、
    この娘の視点で描かれる事件は
    非常にスリリングで楽しめた。
    メロドラマの様な物語も嫌いでない。
    ただ、このシリーズらしい怪奇的で、
    凄惨な事件に巻き込まれる
    金田一耕助の活躍を楽しみに
    していたので少し不満は残った。

  • (^^)

  • 金田一耕助シリーズ長編の作品でしたが、巨額の遺産相続に関連した、横溝正史お得意の複雑な、お家関係が絡み合い、相続候補者が次々と殺されていき、連続殺人犯は一体誰なのか?その動機は?という事件の核心に向かって、どんどん物語が展開していき、最後は金田一耕助が事件の全貌をスッキリ解明するというオチです。
    この人は真の悪人なのか?悪人のようで悪人ではないのではないか?というのがポイントですかね?

  • 読後の後味がいい

  • 金田一のジッチャンの方の事件。
    『八つ墓村』と同様に語り手が別にいるため、金田一はほとんど出てこない。
    10人以上が死亡する話で、孫が活躍する『異人館村殺人事件』の六星竜一もビックリである。

    ミステリーというよりは、サスペンスな話で、探偵小説的なトリックもほとんど無いが、男女の感情の交錯という点において『八つ墓村』を超えている。

  • 金田一。遺産。愛。

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著者プロフィール

1902 年5 月25 日、兵庫県生まれ。本名・正史(まさし)。
1921 年に「恐ろしき四月馬鹿」でデビュー。大阪薬学専門学
校卒業後は実家で薬剤師として働いていたが、江戸川乱歩の
呼びかけに応じて上京、博文館へ入社して編集者となる。32
年より専業作家となり、一時的な休筆期間はあるものの、晩
年まで旺盛な執筆活動を展開した。48 年、金田一耕助探偵譚
の第一作「本陣殺人事件」(46)で第1 回探偵作家クラブ賞長
編賞を受賞。1981 年12 月28 日、結腸ガンのため国立病院医
療センターで死去。

「2022年 『赤屋敷殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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