悪魔の百唇譜 金田一耕助ファイル16 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041304280

作品紹介・あらすじ

若い女と少年の死体が相次いで車のトランクから発見された。この連続殺人が未解決の男性歌手殺害事件の秘密に関連があるのを知った時、名探偵金田一耕助は激しい興奮に取りつかれた……。

感想・レビュー・書評

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  • 深夜の高級住宅街に停まっていた車。そのトランクの中には胸を抉られ、血溜まりにトランプの“ハートのクイーン”を浮かべた女の死体が詰め込まれていた!捜査が進むにつれ、関係した女たちの性癖を記した“百唇譜”が発見された未解決殺人事件へと繋がっていく。金田一耕助は悪魔のような犯人を捕まえることができるのか?!

    旅行の前に等々力警部へ顔を見せようと立ち寄った義理堅い金田一。それを渡りに船とこの事件の謎へと誘う等々力警部よ。鬼かよ?!と思いきや、事件解決後の金田一の孤独感を知るがゆえの行動なんだよね。人の罪を暴くことを生業にする仕事に罪悪感を覚える金田一を慮る等々力警部のやさしさがいいよね。まあ、事件解決を手伝わせることに間違いはないのだけど(笑)

    トランクから発見される死体と意味ありげなトランプ!百唇譜という悪趣味極まりない記録!盗難された車にエンストした車の意味とは。露悪的でシンプルな事件かと思いきや、想像以上に複雑に絡み合った事件と人間関係の描き方はさすが。

    金田一は活躍するもそこまで目立たない印象。ホームズ大好き女中の古川ナツ子や、他のキャラの方が爪痕を残していて意外だった。あと、いい感じの時間帯に塀へシャーシャーする目撃者が出てきたり、後出し情報が多かったり、結末がピリッとしないのは残念。李泰順のその後の話とかがあると嬉しかったなあと。練られた事件だっただけに惜しい一作。

  • 金田一耕助もの。金田一耕助の小説は大好きだけれど、この「悪魔の百唇譜」は金田一耕助ものっぽくない。哀愁漂う雰囲気がない、というか。

    昔、この「悪魔の百唇譜」のドラマをちらりと見たことがある。確か、吉川十和子と火野正平が出演していたように思う。古谷一行が金田一耕助のドラマだ。
    その吉川十和子が大変健気な感じで、小説もそういう感じなのかと思っていたら、全くそんなことがなかった。
    「仮面舞踏会」もそうだったけれど、ドラマより小説のほうが酷薄で読者の一人としては小説の酷薄さが現実に近い感じがして、本格推理小説という現実離れした設定に一つの落ち着きを与えているように思っている。

    朱美の遺書を読んで、李がどう思ったのか、というところは聞きたいところであった。写真をネタに強請っていた人物が変遷していくが、強請りを行う人間は本当にどこまでいっても強請りで食べていこうとするのだな、とある種感心してしまった。もちろん、小説の中の話だけれど、現実の世界でもこれについては同じじゃないかと思ってしまう。

  • うーーーん。

    イマイチ。なーんかイマイチ。個人的には、金田一耕助の活躍が輝く時代設定は、戦後すぐの昭和20年代中盤ぐらいじゃないかと思う。この作品のように昭和30年代になって、それなりに便利なものが普及し始めてる頃になると、戦後すぐの時代背景の金田一作品が持っている猥雑さ、仄暗さというものが感じられなくなる。

    やっぱり金田一が関わる人たちには、戦争から帰ってきた退役軍人、没落した士族や華族や大地主、そしてむやみやたらにそこらじゅうにいる後家さんが出てこないと、らしさが出ないなー。

    横溝作品を制覇したい、というのではなく、とにかく金田一耕助の活躍を読みたい、というのであれば、他の作品から読み始めることを勧めます。トリック自体は、それなりに複雑で面白いんだけどね。

  • 「金田一耕助」シリーズの『悪魔の百唇譜』を読みました。

    最近「ホームズ」シリーズを立て続けに読んで、ミステリーを読むことに嵌っちゃってますねぇ。

    半世紀前の東京が舞台なのですが、、、
    それでも一世紀前のロンドンと比べると、舞台の背景が想像しやすいので読みやすかったですね。
    勿論、頭の中で描いている場面の「金田一耕助」役は「古谷一行」です。

    さてさて、物語の方ですが、、、

    蒸し暑い6月、深夜の東京成城の高級住宅街。
    不審駐車の外車、その後部トランクから発見されたのは、胸をひと突きに殺された美女の死体。
    添えられた"ハートのクィーン"のカードは何かの符号か?
    やがて似た手口の男の刺殺死体が発見される。不倫と嫉妬の果ての惨劇、それとも…。

    という相変わらず怖ろしそうな始まりでしたね。

    最後は、容疑者が二転三転して、意外な人が犯人でしたねぇ。

    「金田一耕助」の推理力が、ちょっと情けなくて、、、
    女中の推理に驚いたり、ブツの隠し場所は知り合いの中国人の推理に任せたりと、少し残念でしたが… まっ、「金田一耕助」が人間らしく描かれているといえば、そうなのかなと、無理やり納得。

    被害者宅の女中「古川ナツ子」が「ホームズ」シリーズの愛読者という設定で、「ホームズ」が引き合いに出されるところはご愛嬌か。
    思わずニンマリする場面でした。

  • 物語の展開はリズムよく進んで行き、誰が犯人か分からないままで面白かった。ただ、犯人の動機がお金目当てだったのは何か浅はかでつまらなかった。というか、同性愛とか、性交渉が案外取り扱われることが多く、この時代ってそういう話題が多かったのかなあ。それか新鮮だったのか。

  • 停まっていた外車のトランクに、女性の死体。

    これが一体誰なのか、というのも問題でしたが
    車に関しての謎、人に関しての謎。
    どうつながっていくのか、というのもありましたが
    何が動機なのか、というのも謎でした。
    そして犯人。
    登場人物に当然いるわけですが、予想外、でした。

  • 悪魔の百唇譜
    東京文芸社「悪魔の百唇譜」 1962年10月
    (原型 「百唇譜」 推理ストーリー 1962年1月)

  • どれが誰の車なのか分からなくなってくる。アリバイや死亡時刻が入り組んでいて楽しかったのに、解決編がかなりあっさり。もはや後日談。

  • 意外な犯人…過ぎでは?
    後から出てきた人で衝撃はない。
    トランプもあんまり意味ないし…
    中編にしては横溝らしい不気味さと面白さは足りなかった。
    ちょっと残念。

  • 5日のうちに読んだけど、登場人物が多く、2つの殺人事件が交差しているのと、どっちの車がどう移動して…?と考えながら読むのだが、とても頭を使った。そして人の名前を忘れてしばしば前のページを繰って探した。
    警察署も3つ動いてて、どの警部補がどっちだか分からなくなってくる…。
    金田一耕助の人間味にも触れることができる。かつて難解な殺人事件を前に張り切っている描写があったが、こちらは解決、終結して後の空虚感に襲われる描写が、冒頭と最後に触れてある。
    ミステリーだけではなく文学性を感じることのできる作品。

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著者プロフィール

1902 年5 月25 日、兵庫県生まれ。本名・正史(まさし)。
1921 年に「恐ろしき四月馬鹿」でデビュー。大阪薬学専門学
校卒業後は実家で薬剤師として働いていたが、江戸川乱歩の
呼びかけに応じて上京、博文館へ入社して編集者となる。32
年より専業作家となり、一時的な休筆期間はあるものの、晩
年まで旺盛な執筆活動を展開した。48 年、金田一耕助探偵譚
の第一作「本陣殺人事件」(46)で第1 回探偵作家クラブ賞長
編賞を受賞。1981 年12 月28 日、結腸ガンのため国立病院医
療センターで死去。

「2022年 『赤屋敷殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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