迷路荘の惨劇 金田一耕助ファイル 8 (角川文庫)

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  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041304341

作品紹介・あらすじ

複雑怪奇な設計のために迷路荘と呼ばれる豪邸を建てた明治の元勲古館伯爵の孫が何者かに殺された。事件解明に乗り出した金田一耕助。二十年前に起きた因縁の血の惨劇とは?

感想・レビュー・書評

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  • 昭和25年秋に起こった『ホテル名琅荘(迷路荘)』での連続殺人事件を、名探偵・金田一耕助が解き明かすミステリー。敷地内は迷路のような造りで、抜け穴などもあり、舞台設定が面白い。特に、古くて脆くなった地下道と、"ネズミ"で溢れた(?)落とし穴は、不気味に感じられた。1981年発行22版の文庫で読んだため、カバー絵は杉本一文氏。おどろおどろしい雰囲気が、新しいカバーではなかなか表現されていないようで、少々不満が残った。

  • 富士山の裾野に建つ『名琅荘』(迷路荘)を舞台に
    巻き起こる惨劇ーーー。
    折しもそこの主人に招かれた金田一耕助を中心に、登場人物もわんさと描かれる。
    が、どの人物をとっても表面的な人物像に留まらない怪しさがあって、次々に起こる事件をより複雑に、おどろおどろしく際立たせている。

  • 富士の裾野に建てられた名琅荘。屋敷内に抜け穴などが仕掛けてあることから、迷路荘と呼ばれていた。屋敷の主・篠崎に呼ばれた金田一耕助は殺人事件に巻き込まれる。20年前の惨劇に繋がる事件を解き明かせるか。

    華族!過去の惨劇!密室!謎の洞窟!渦巻く情欲!いわくつき物件で巻き起こるいわくつきな血族の物語を書かせたら安定の面白さがある横溝正史。同じく洞窟を冒険する八つ墓村や、他の一族のドロドロに比べたらマイルドでオーソドックスなミステリでなんだか安心する。事件を追っていた老刑事・井川とのやり取りも小気味いい。

    迷路じみた館と洞窟に、迷路のように入り組んだ人間模様。誰もが何かを隠し、己の正義、誇り、欲望の中を進んでいる。人間関係を解くというのは本当に一筋縄ではいかないものだなと思い知らされる。金田一が嫌悪する犯人の因果応報な末路も皮肉だった。

    「人間の人格を形成するについて大事なことは、他からあたえられる恩恵だけではなく、他からうける信頼だ」
    前半にある言葉なんだけど、読み終わってみると考えさせられる一言だと感じる。最後に見せた金田一の粋な取り計らいも好き。

    あと、屋敷に抜け穴とか聞くと、今では綾辻行人先生の館シリーズを思い出すよね。迷路荘とかダリヤの間とか、館シリーズにも少し通じるキーワードもちらほらあって楽しかった。

  • 確かに、洞窟探検にズルズルの和装は不向きだと思った。
    推理というより、冒険譚のような印象を受けました。

  • 金田一耕介の長編の中でも、特に怪奇色が 強かったと感じる作品だった。
    いつもは犯人に同情的な探偵が、今回はあからさまに嫌悪と侮蔑を放つ珍しい一面を見せている。

    相変わらず何人も死ぬし、殺人のトリックも単純なもの。
    謎解き重視で読むと疑問符がつくが、昭和5年の事件から始まった怨念、執念の行き着く先を見届ける物語として十二分に楽しめた。

    惜しいのは館のイメージを想像しにくい点。
    一部の部屋の見取図だけでなく、館とその敷地全体の地図を最終章あたりに入れて欲しかった。

  • 金田一耕助シリーズ。過去に横恋慕の末、妻を殺害、間男の左腕を切り落とし、自ら命を絶った古館伯爵。その建物を手に入れた男が、建物に縁のあった人たちを集めて、ホテルとしてのオープンを祝うはずだった。縁やいわくのある、一癖も二癖もある連中が集まったことで、当然のごとく起こる殺人事件…。

    うわ、5月半ばだというのにまだ1冊目か。休みが長かったとはいえ、結構読むのに時間がかかったものだ。

    紹介するなら「いつもの金田一」である。登場人物の全て、怪しく活躍する老刑事を含め、すべての人間が怪しい。で、金田一が目を離したすきに、一人また一人と殺人が起こってしまう。また、迷路荘というタイトルは、地下道に鍾乳洞が縦横無尽と走っている建物であり、最初に紹介された「どんでん返しなどのある」というのは、結構あっさりと否定されてしまう。

    横溝正史は、洞窟や鍾乳洞が非常にお好みのようで、建物内の描写は相当投げやりなくせに、洞窟となると嬉々として筆が進む(読みやすい)のであるが、一方でディテイルは適当なもんで、まったく風景が想像できない。

    また、その洞窟も、毎度ながら使い捨てという風合いが強く、すぐに補強したレンガは崩れてしまうし、よくもまあ、その上に立っている家が大丈夫なもんだと感心する。何度も繰り返されるレンガの崩落は、今回一番気が散るシーンである。

    事件の真相については、あんまり本気で犯人を探そうとすると、完全に肩透かしを食うので、軽く流して読むのが正しいのであろう。

    ボリュームもあり、事件と事件の間の時間の割に、ああでもないこうでもないと時間稼ぎが多い印象で、内容の割に読むのに時間がかかり、印象もうすいという作品である。

    まあ、金田一シリーズの代表的な立地、トリック、残忍性などを含む作品としては、人気があるのも解らなくもないが。

  • 金田一シリーズって、人間の業炸裂しすぎな有象無象がこれでもかってくらい跋扈するよな〜という思いを読むたび新たにします(褒めてる)。

    旧家で権勢を欲しいままにする刀自。
    地元有力者である夫と美しすぎる妻。
    その周囲に群がり恩恵に預かろうとする人々。
    清涼剤ポジションの、若いアベック(古)。
    そんな人々を脅かす、肉体的・精神的に「何かが欠損している」人間。

    本作の登場人物も、そんなシリーズ読了本のテンプレをしっかり踏襲しています。何とかの一つ覚えかっていうくらい、他作品と代わり映えなさすぎィ(褒めてる。

    強いて違いを挙げるなら、いつもより刑事勢がいい味出してるってことでしょうか。その中の1人のベテラン刑事なんて、キャラ立ちすぎてて一瞬疑っちゃったくらいですよ。

    かつて悲劇の起こった山奥の山荘・迷路荘に集結した関係者達。ホテルになる前の屋敷の最後の姿を偲び、かつて惨禍に散った命を弔おう…。そんな意図で集まった筈の男女は、しかしかつて結婚相手を奪い奪われ・振り振られという痴情のもつれを経てきた人ばかり。
    曰くありげな人々が集い、金田一探偵が現地に到着したその日、果たして第一の惨劇が幕を開けた!!

    って感じですかね。
    うーん、何てテンプr(略

    それにしても、いつもは真犯人に同情の余地を残す金田一シリーズにあって、今作は少ーし異色ですね。いつも少なからぬ憐憫の情を示す金田一探偵が、今回は一顧だに値しないと言わんばかりの素っ気なさで犯人の犯行を推理します。

    なーんか今回はイマイチだな〜と終章まで読み進めると、どっこいその後に語られる真相がヤバかった。もうその犯行シーンの絵面の恐ろしさときたら…想像するだに背筋が凍ります。
    積年の恨み・妄執の果てを描かせたら、横溝御大の右に出る推理作家はいませんね!(褒めてる

  • いやー、面白かった。こういうのが自分の大好物なんだなと改めて思った。前回読んだ『三つ首塔』よりエログロ色が控えめなのも良い。地下が惨劇の舞台となるのは『八つ墓村』に似てる。

  • 全然知らないタイトルだったのだが、とても分厚く驚いた。あまり期待していなかった、短編集みたいに思っていたのが、大作で面白い。3代にわたった話だったし、長編だったからどうであったっけと思うところもあったが、迷路荘という設定と興味深く魅力的な舞台、片腕の男、可愛らしい老婆などキャラクター設定、先が気になってとても面白く最後まで読めた。動機に関しても納得するもので、最後も悪人が生き残らないのでスッキリする。昔の建築物で本当に迷路荘みたいなものがあるのか気になる。やはり現代にはない環境が心惹かれ、楽しい。

  • 没落した華族、仕掛けだらけの豪邸、前人未到の洞窟、複雑な人間関係、謎の怪人物などなどなどなど……金田一シリーズを読み始めて8作目?もう、金田一要素てんこ盛り!って印象をこれが一番受けたかもしれない。
    それにしても、今回の犯人に対する金田一耕助のあたりの強いこと。いつもはソフトな感じの金田一さんがあそこまで犯人に対する憎悪をむき出しにするの珍しかった。それもしょうがないよねっていう人の尊厳を踏みにじるような遺体の扱い方してるからね……。読みながらゾッとしてしまった。

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著者プロフィール

1902 年5 月25 日、兵庫県生まれ。本名・正史(まさし)。
1921 年に「恐ろしき四月馬鹿」でデビュー。大阪薬学専門学
校卒業後は実家で薬剤師として働いていたが、江戸川乱歩の
呼びかけに応じて上京、博文館へ入社して編集者となる。32
年より専業作家となり、一時的な休筆期間はあるものの、晩
年まで旺盛な執筆活動を展開した。48 年、金田一耕助探偵譚
の第一作「本陣殺人事件」(46)で第1 回探偵作家クラブ賞長
編賞を受賞。1981 年12 月28 日、結腸ガンのため国立病院医
療センターで死去。

「2022年 『赤屋敷殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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