病院坂の首縊りの家(下) 金田一耕助ファイル20 (角川文庫)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041304624

作品紹介・あらすじ

〈病院坂〉と呼ぶほど隆盛を極めた大病院は、昔薄幸の女が縊死した屋敷跡にあった。天井にぶら下がる男の生首……二十年を経て、迷宮入りした事件を、等々力警部と金田一耕助が執念で解明する!

感想・レビュー・書評

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  • やっぱりいいね!
    由香利(あえてね)の告白は、想像すると随分エゲツない画が浮かんでくるのだが、文章は下ネタチックに書いてないので、やっぱり上手いんだなぁと思う。
    心情の変化も自然で、救いもある。

    追記すいません…
    孤高の金田一耕助。どんなに慕って慕われて、共に協力して事件を解決し、戦友の様な関係を築いたとしても、やっぱり最後はひとり。
    周りに流される事なく事件と、その事件関係者と、自分と向き合い、自分で考え、人はひとりで歩いて行かなければならないんだ。これが“人間”なんだと毎回気付かされる。
    そして周りの人達もそれを理解し、気に掛けつつ、そっと見守っている。
    私もこうありたい!なんて思ってしまう横溝正史が創り出した金田一耕助とそれを取り巻く世界観が私は大好きだ。

  • ドロドロの愛憎劇。
    焼きもちって、ある一定のレベルを越えちゃうと単なる狂気。
    何気に口に出して伝えるって愛情に限らず、事実や気持ちを誤解なく伝える大切な手段だと思う。って、あたりまえだよ、って思うけど全然うまくできない。
    まぁ、そんなきれいに伝えちゃったら物語の根本を否定してしまうんだけど。ただ、考えるきっかけになった。

  • 切なくて割と金田一シリーズの中で好きかもしれない。犯人の滋がすごくいい人なんだよなあ、そして小雪ちゃんも、ビンちゃんも結局みんな狂わされただけで、根からの極悪人じゃなかったところが辛い。
    女傑の弥生も、実の子や孫には冷たいとは言え、金田一シリーズによく出るような悪女ではなかった。

    謎解きがすごいというわけでもなく、生首風鈴に至る過程ももっと凄惨を想像してたから物足りなかったけれど、それでも事件の背景が哀しくて好きだった。

    最後のシリーズとしての終わり方も好き。アメリカから帰ってきて本陣殺人事件を解決し、病院坂の事件を終えてアメリカに帰っていく。

  • 横溝ワールドらしいと言えばそうなんだが、推理小説としてはどうなのかな。大したトリックがあるわけでもなし、本当に謎がスッキリ解けたかと言えば、そうでもなし。とくに、この物語を成り立たせている前提に、割合早い段階で気付いたが、それが、私にはかなり無理があるように感じられる。

    ただ、複雑な血脈と淫靡な雰囲気がなんとも言えず、時代を感じさせてその力で読ませる。横溝の作品は世評が高いものは、これで大体読んだが、初期のものをもう一度読もうかな。

  • タイトルからして既にたまらないのに、表紙の不気味さが読みたい欲を刺激する。そして、金田一耕助最後の事件。
    感じるはずはないのに、その文章から、匂いを、特有の濃い湿度を感じてしまう横溝ワールド。金田一の世界。たまらないね。

  • 上巻を読み終わった興奮のままに本屋へ駈け込んだもののどこの本屋へ行っても下巻がない。店員さんに聞いたところ、下巻はここ最近ずっと欠品中だとか。金田一耕助最後の事件として知られる病院坂を長らく欠品状態にしてるとか角川大丈夫?やる気ある?

    金田一シリーズはどうしても紙で読みたいので古本で買うならば、と初版を買いました。1978年にこの世にでた紙面は茶色く変色していましたが、やはりふるえるほど面白い。おぞましさやおどろおどろしさは40年の歳月を感じさせないほど瑞々しい。いや、瑞々しいって表現もアレだけど。でも血の滴りや嵐の夜の風雨が湿度を持って想像できるところに、横溝作品の楽しさがある。この色褪せない恐怖と生々しさ、そして一片の切なさが、長きにわたって読む者を誘い、惹きつけているのだと改めて思った。

    とにかく角川書店は早く重版してください。ほんと一刻も早く!

  •  世の中にはたくさんのシリーズものがある。

     面白くて長く長く続くもの。
     惜しまれながらも終わってしまうもの。
     終わったはずなのに、再び始るもの。
     
     期待通りか、期待はずれか。
     見る側の想い。作る側の考え。
     交錯して、うまく昇華したり、すれ違ったり。

     気に入った主人公のシリーズは、ずっと続いて欲しいけれど、
     惰性で続いていく姿を見たくないのも事実。
     その終わり方、最後の姿をどう決着をつけるか。


     金田一耕助最後の事件。
     馴染みの登場人物。
     垣間見られる積み重なったエピソード。
     散りばめられたそれぞれに、うれしくもあり、
     冗漫さも感じてしまう。

     ベテランアクションスターが久しぶりの復活。
     喜びの思いと、痛々しさ。
     そんな思いがよぎる。

     ネタが割れてしまう謎もあるが、
     年月を重ねた家族にまつわりついた呪いは
     さすが横溝。

  • 最後の結末はこの人が犯人かという納得感ある理由のものだった。20年経った後の殺人事件が2件だけというのは少し面白味が無かった。2件だけは立て続けに起こったのだが、その後のストーリーはなぜ犯罪が起きたのかを説明するもので少し退屈だった。

  • 金田一耕助最後の事件!

    上巻で解決した事件の20年後に、再び事件の関係者が殺されていく。金田一耕助が20年もの間心に秘めていた真相とは…

    上巻、下巻とあって、かなり長いのですが、この壮大な物語に私はすっかり魅了されました。
    金田一耕助の事が色々とわかる一冊なので、金田一ファンとしてはとても感慨深い作品です。

  • 映画とは全然違うので驚いた。正直全く存在を忘れてた人が中心になってくる。弥生奥様が巨悪のようなイメージだったけど、意外と何もしてない。あと風鈴が飾りに過ぎなかった。
    なんというか…コミュニケーションが足りない家庭に起きた悲劇。全ての元凶は、やはり妾の面倒を十分に見られなかった琢也では?こいつさえしっかりしていれば何も起こらなかった。最後に絡まっていた糸が解けるように、ようやくみんなが意思を伝え合えてよかった。特に貞子さん。
    大団円の中で、1人消えてしまう金田一先生が悲しい。心残りはもうないから、いよいよ疲れていなくなってしまったんだろうか。こんなに失踪を悲しむ人がいるのに、やっぱり孤独だったんだと思うと寂しい。そしてそれが金田一先生の魅力でもある。誰にも理解できない、捕まえられない人。

    金田一耕助ファイルは読了。話によって程度の差はあれど、全部面白かった。唯一の欠点は新刊が二度と出ないことだけど、角川文庫が復刊祭りをやっているのでもう少し楽しめそう。

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著者プロフィール

1902 年5 月25 日、兵庫県生まれ。本名・正史(まさし)。
1921 年に「恐ろしき四月馬鹿」でデビュー。大阪薬学専門学
校卒業後は実家で薬剤師として働いていたが、江戸川乱歩の
呼びかけに応じて上京、博文館へ入社して編集者となる。32
年より専業作家となり、一時的な休筆期間はあるものの、晩
年まで旺盛な執筆活動を展開した。48 年、金田一耕助探偵譚
の第一作「本陣殺人事件」(46)で第1 回探偵作家クラブ賞長
編賞を受賞。1981 年12 月28 日、結腸ガンのため国立病院医
療センターで死去。

「2022年 『赤屋敷殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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