花はらはら人ちりぢり: 私の古典摘み草 (角川文庫 た 5-17)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041314296

作品紹介・あらすじ

「もうどうでもいやになりました」と初恋のお関につぶやく車夫、録之助-樋口一葉「十三夜」。「水島さん」にひたすら憧れながら打ち明けられない少女豊子-吉屋信子「花物語」。破滅をいましめつつも恋のぬかるみに足をふみ込む赤良の狂歌。極北の絶望にむしろ力を得たり、少女の可憐にエールを送り、愛とエロスに酔いしれる。今も昔も変わらない恋する心の花びらを摘んで束ねた、お聖さんの古典案内。長谷川青澄画伯の美しい挿画入り。

感想・レビュー・書評

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  • 2022年4月16日購入。

  • 田辺聖子さんと言えば、『文車日記』。
    古典文学に興味を持つきっかけになった。
    それから四十年近く経って出た古典案内の本が本書。
    とはいえ、吉屋信子など、明治以降のものも取り上げられている。
    『源氏』や『枕草子』など、王朝文学も取り上げられているけれど、近世文学の比率が高くなっている。
    また古典文学の間口を少し広げてもらえたような気がする。

  • 清少納言、紫式部、更級日記に興味がわきました。

  • 田辺聖子さんによる、古典文学の案内を日本画家の長谷川青澄さんの美しい挿画で楽しめる本です。田辺さんといえばオトナの恋愛ものやぎらぎらしない人情もので素晴らしい作品を上梓されていますが、こちらではそのバックグラウンドとなった日本の古典文学を紹介されています。平安時代の女房文学から江戸狂歌、明治〜昭和初期の文学がおさめられています。語り口と視点が田辺さんならではです。オープニングは樋口一葉ですが、「たけくらべ」ではなくて「十三夜」。主人公と幼なじみ(今は車屋さん)の再会のときに垣間見える暗い淵に、こちらもはっとさせられます。「十三夜」を読んでも気が付かなかった私って、やっぱり凡人!平家物語からは、ちょっと印象が薄いけれど美しい小宰相の君の段を。黄表紙や狂歌で江戸の笑いに触れ、蕗谷虹児の「花嫁人形」や西條八十の美しい詩に酔いしれる。吉川英治「宮本武蔵」の活劇も楽しむ…とバラエティに富んでいます。もっとも、宮本武蔵は活劇の場面ではなく、吉野太夫が琵琶を砕いて武蔵を諭す、太夫の女っぷりのみごとな場面が取り上げられています。この本を読んでみてぜひ読みたい!と思ったのが堤千代「伊勢のいえ」です。病気のために学校にも行けず、文学的才能を独学で磨いた彼女は、当時の直木賞の台風の目となったといいます。「貸家」をめぐる男性と、女性の家主のやりとりが粋で切なく美しく、見事な作品であることが田辺さんの解説からびしびし伝わってきます。日本の文学を手っ取り早くいくつか読んでみたいかた(美しいラブストーリー寄りですが:笑)にはもちろんおすすめの1冊です。また、田辺さんを作ったものを理解したいファンのかたでも、そうでないかたにもおすすめの1冊です。

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著者プロフィール

1928年3月27日生まれ、大阪府大阪市出身。樟蔭女子専門学校(現・大阪樟蔭女子大)卒業。1957年、雑誌の懸賞に佳作入選した『花狩』で、デビュー。64年『感傷旅行』で「芥川賞」を受賞。以後、『花衣ぬぐやまつわる……わが愛の杉田久女』『ひねくれ一茶』『道頓堀の雨に別れて以来なり 川柳作家・岸本水府とその時代』『新源氏物語』等が受賞作となる。95年「紫綬褒章」、2000年「文化功労者」、08年「文化勲章」を受章する。19年、総胆管結石による胆管炎のため死去。91歳没。

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