残花亭日暦 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041314340

作品紹介・あらすじ

96歳の母、車椅子の夫と暮らす多忙な作家の生活日記。仕事と介護を両立させ、旅やお酒を楽しもうとあれこれ工夫する中で、最愛の夫ががんになった。看病、入院そして別れ。人生の悲喜が溢れ出す感動の書。

感想・レビュー・書評

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  • ぶさいくな田辺聖子がなぜあんなにみんなに愛されていたかが漠然と理解できる一冊。
    彼女は休まない、働く、動く、笑う、飲む、
    そして善きものをみな愛する。
    根っからの物書きだから、だいたいが観察眼で
    ウェットにならない、女々しさがない
    冷静に物事を理解しようとして批判がない、
    そして悲しみすらも笑いで包もうとする。
    田辺聖子をもう一度よく読みたくなった

  • 幾つかの引用。P114 ご亭主入院中の話。<blockquote> 部長先生が病室へ入られるときは、従うナースさんたちも病人にいくばくかの信頼感と安堵、緊張を伝えるべく、 「F先生がいらっしゃいました!」 と告げる。すると彼は病床から平静な声で、間髪を入れず、 「それがどうした」 といったそうである。</blockquote>P144 夫婦の会話。<blockquote> 「なんでワルクチいわないの? あたしなんか同じ穴の狢、という感じで共通の嫌いな人のワルクチ言い合うの、好きやわ」 と私はいったことがある。彼は重々しくいう。 「理由は三つ、あります」 「へー。何やのん?」 「一つ。いうたら気の毒である」 私は笑ってしまう。 「二つめ。ワルクチをいうと、自分も同じレベルになる」 しゃらくさい。 「三つめ。自分は彼を、よう知ってるつもりでワルクチをいいたいが、しかし自分の知らぬ美点も、あるかも知れん。そう思うといえません」 「ヘーン、だ」</blockquote>P197<blockquote> 神サンに「ハイ、そこまで」といわれるのは、「苦役解放」であろう</blockquote>P231 一茶の句<blockquote> 露ちるや みさいこの世に用なしと 生きのこり生きのこりたる寒さかな いささかは 苦労しましたと いいたいが 苦労が聞いたら 怒りよるやろ</blockquote>最後の句の境地には到底なれそうにない。私は苦労が大っきらいだ。死よりも避けて通りたい。生きのこる伴侶に「可哀想に」と言えるような自分でありたいものである。38歳のとき神戸市の医師・川野純夫氏(おっちゃん)と結婚。

  • 積読から。
    カモカのおっちゃんが亡くなるまでの日々の暮らし。
    葬送の本を読んだあとに偶然読了。

  • 田辺聖子さんの日記というので、たいへん興味深く
    読んでいったのだが、パートナーのおっちゃんの
    容体がどんどん悪くなってしまうという、読んでいて
    ツラくなる日記だった。聖子さんはおっちゃんに対して
    ずっと恋愛感情を持っていたんだなと思った。せつない。

  • 結婚について色々いわれているけれど、このエッセイを読むと、憧れます。
    雑誌で結婚とかおひとりさま特集とかするよりも、こういった読み物を世の中に広めていけば、イイ気がする。今は、ただでさえ「絆」とか「家族」がスローガンになっているご時世ですし。
    男性、あと銀婚式を迎えるくらいの夫婦、などにも読んでほしい。

  • 小川洋子さん推薦の「読んだら結婚したくなる」エッセイ。
    これを老老介護の記録ととるか、夫婦の愛情生活の記録ととるか。きっと心に残るは、後者のほうであろうと思う。

    結婚したなら、こんな夫婦になりたい、理想家だとは言われても、結婚の理由がお二人のようなものであれば、と思った。

    「いっそ、結婚しよう。そのほうが、おしゃべりしやすい」

    ええなあ。あこがれるわ。。

  • ちょっと読んだだけで、著者の賢さが伝わってくる。
    思うこと、感じることをこんなふうに表現できたらどんなにいいだろう。
    語彙の豊かさにも驚かされる。

  • 執筆に講演に取材にと多忙な日々を送りながら、アシスタントや家政婦さん介護人の派遣をフル活用して、年老いた母親と病を負った良人とともに暮らす日々を日記として綴ったもの。近しい人を病で亡くした体験のある人は、必読です。思い出して涙が出そうになりながら、田辺さんの言葉に救われたり、こういう風に思うのは自分だけではないんだと思ったり。とてもいい本でした。

  • TVで何年一緒に暮らしていても、毎日しゃべることに尽きなかったとおっしゃっていたのを思い出した。話すために夜更かしすることもあると。江藤淳さんの「妻と私」を読んだときも思ったけれど、仲のいい夫婦というのは、笑いやささいなこと、二人だけの決まりごとや思い出を大切にするものだなあと思った。そして、作者の多忙ぶりにも驚かされた。講演に執筆、対談、お見舞いなど大忙しだ。私は作者の半分ぐらいの年齢だがとてもつとまりそうにない。やりたいことを思い切りやって、笑って、飲む。大切なものは大切にする。そういう姿勢を見習いたい。

  • 田辺さんってすごく強い女性・・・「凛」っていうのはこの方のためにあるような言葉だと思った。

  • 2008年2月17日購入。
    2009年5月6日読了。

  • 借りた本。
    朝ドラを時々見たので読んでみた。
    意外におもしろかった。

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著者プロフィール

1928年3月27日生まれ、大阪府大阪市出身。樟蔭女子専門学校(現・大阪樟蔭女子大)卒業。1957年、雑誌の懸賞に佳作入選した『花狩』で、デビュー。64年『感傷旅行』で「芥川賞」を受賞。以後、『花衣ぬぐやまつわる……わが愛の杉田久女』『ひねくれ一茶』『道頓堀の雨に別れて以来なり 川柳作家・岸本水府とその時代』『新源氏物語』等が受賞作となる。95年「紫綬褒章」、2000年「文化功労者」、08年「文化勲章」を受章する。19年、総胆管結石による胆管炎のため死去。91歳没。

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