さかさま世界史 英雄伝 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041315316

作品紹介・あらすじ

コロンブス、ベートーベン、シェークスピア、毛沢東、聖徳太子……強烈な風刺と卓抜なユーモアで偉人たちの本質を喝破し、たちまちのうちに滑稽なピエロにしてしまう痛快英雄伝。

感想・レビュー・書評

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  • 期待以上に面白い。
    コロンブスのところで、そんなの知ってるよーと思ったけれど、そのあとどんどん面白くなる。情報が多い。

    親はいつかは子供に捨てられるのだから、親が子供を捨ててはいけないことはない、のところが好き。
    劇的な人生を送った偉人を扱いながらも、読者も著者も負けずおとらず劇的な現実を生きていた時代。自立や家出というのは現代ではわからない切実さだったんだろう。
    衣食住に困ったことがあっても(想像ですが)、それより大切なことがあったっていいじゃないか、と言えるところも良い。

    書を捨てよ、は途中で読むのをやめてしまったけれど、好きな箇所があります。
    現実を知るという大義名分のもとに、残虐なものを見たいと言う人間の好奇心が気持ち悪い。
    すごくわかるし、こんなこと言ってもいいんだ!と驚きでした。
    だから、子供の時は言えなかったけど、今なら気持ち悪いから見たくない、と言える。

    この本でもなるほど!と思ったところがたくさんあったけれど、紫式部のところで、人と人との葛藤にばかり興味をもちすぎて、人と事物、歴史、運命との葛藤にまるで無頓着だ、のところもその一つ。
    だから私も源氏物語を面白いと思えないのか。
    平安時代ってもっと政治的陰謀だの事件だのあったのに、取り扱われないし。なんか在原業平について読んだ時にこんな時代だったの?古文で習うのと全然違うって思ったことがあったな。

    当時のサブカルと今のサブカルには大きな隔たりがあると思う。人を殺すのは物理的な脅威か、はたまた退屈さか。

    関係ないけれど、最近水木しげるの偉大さに気づいた。鬼太郎誕生の映画や鬼太郎1話目、悪魔くんを観て。子供騙しじゃなくてちゃんと怖い。

  • 寺山修司の根底は、去勢された社会に対する反抗ですね。

  • 昭和四九年発行。寺山修司が語る、世界の偉人たち。内容は哲学的でやや難解。本人の複雑な生い立ちの影響もあってか、家庭的・保守的な考え方、型に嵌めて管理されること、慎ましく清貧な生活等を痛烈に批判した、辛口のエッセーになっている。

  • イソップの寓話は奴隷のユーモアであり、「長いものには巻かれよ、他人の愚かさを利用せよ」といった卑屈なものと喝破。/シャイロックがユダヤ人の守銭奴と言うだけでなじられる、非合理の世界を当たり前のように描くシェイクスピア。貸した金の代償に一塊の人肉を抵当にしたことは、「心もまた、肉の一部である」と言う寓意をはらんでいるように見える、という指摘。また、イスラエルの知人がシェイクスピアを嫌悪しているというエピソードも。/旧約聖書が書かれたから数千年、ダンテが神曲を書いてから600年がたっているのに、地獄の尺度が一度も修正されないのは片手落ち、と。/トロツキーが、独裁者たちの血なまぐさい抑圧に「おまえはただの現在にすぎない」と言ったというエピソード。/繰り返し記される、マヤコフスキーの詩、「もしも心がすべてなら いとしいお金は 何になる?」。毛皮のマリーズなどでも頻繁に引用され、よほど気に入っているのだな、と/また、漫画サンデー増刊「劇画・毛沢東伝」は読んでみたく思った。

  • あたらしい世界の歴史。強気にユーモア、流石。

  • 世界史なんて、
    偉人なんて、
    そんなもの。
    いくらでもさかさまになってころがっていく。

  • この作者の本を最初に読んだのは
    書を捨てよ、町へ出よう でした。
    とりあえず圧巻されました。
    自分はあまりエッセイ読まないのですが最後までするする~と大変興味深く読みました。
    寺山修司、なる人を自分はあまり(と言うより全然)知らなかったのですが折り返しの人物紹介を見ると大変な方だったのだなあ、と。

    この本を読んで思ったのはとりあえず読んでいる本の読書量が半端ではないことと書物に書かれていることを具体的に自分のレベルまで持ってくるのが非常に上手だなあ、と言う2点でした。
    断定されているセンテンスはキツイ表現が多いのですがなぜかどこか物悲しく感じるのは彼の生い立ちがそれとなく語られているからなのか。

    47歳で逝去とは。早すぎですね。

  • カフカ、トロツキー、孟子が好き。小中陽太郎さんの解説も、よい。

  • タイトルにさかさまを付けたがるこの人。偉人を認めているからこそ、あえて皮肉りたくなる、かわいい人間心理のあらわれ。月光仮面が太陽仮面でないところに注意せよとか言ってるけど、そういうことが悩みのうちは、人生楽しいのだろう。

  • 09109

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著者プロフィール

詩人、歌人、劇作家、シナリオライター、映画監督。昭和10年12月10日青森県に生まれる。早稲田大学教育学部国文科中退。青森高校時代に俳句雑誌『牧羊神』を創刊、中村草田男らの知遇を得て1953年(昭和28)に全国学生俳句会議を組織。翌1954年早大に入学、『チェホフ祭』50首で『短歌研究』第2回新人賞を受賞、その若々しい叙情性と大胆な表現により大きな反響をよんだ。この年(1954)ネフローゼを発病。1959年谷川俊太郎の勧めでラジオドラマを書き始め、1960年には篠田正浩監督『乾いた湖』のシナリオを担当、同年戯曲『血は立ったまま眠っている』が劇団四季で上演され、脱領域的な前衛芸術家として注目を浴びた。1967年から演劇実験室「天井桟敷」を組織して旺盛な前衛劇活動を展開し続けたが、昭和58年5月4日47歳で死去。多くの分野に前衛的秀作を残し、既成の価値にとらわれない生き方を貫いた。

「2024年 『混声合唱とピアノのための どんな鳥も…』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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