- Amazon.co.jp ・本 (436ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041372074
作品紹介・あらすじ
悪霊は魂の中に棲む-呪われてしまった権力者はいかなる生き方をするのか?古代貴族社会の熾烈な権力闘争を勝ち抜くことができず、恨みを呑んで死んでいく者。それらの者が死後、"祟り"を及ぼす悪霊になるといわれる。崇道天皇、伴大納言、菅原道真、平将門、楠木正成…。悪霊に苦悩する者、悪霊を利用する者。平安の公家社会に横行した悪霊の系譜をたどりながら日本人の裏精神史に迫る、連作歴史人物評伝の大傑作。
感想・レビュー・書評
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現在伝わる歴史は勝者側に都合の良いもの。敗者は貶められつつも勝者の心に負い目を持たせ、勝者の不幸を敗者の祟りと感じさせる。
敗者となった人々と勝者との関係や経緯等が冷徹な文章で詳しく書かれており、悪霊が作り上げられるまでが分かりやすかったです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
長距離列車の暇つぶしを買おうとブックオフに入り、永井路子だからハズレはないだろうと105円で買ったこの本、びっくりするほどの良著であった。たしかに永井路子の本はどれもおもしろいけど、これは頭一つ抜けている。
その筆は、冷酷である。むしろ私は彼女にこそ、南條範夫の冠言葉の「残酷」を捧げたい。左大臣顕光などの書き方はもう残酷としかいいようがなくて、なんというかその、たまらなく気持いい。虫に刺されたあとを皮膚が破れるまで爪先でかきむしるような、そういう気持ちよさがある。 -
「悪霊列伝」とありますが、怪奇小説ではありません。ただ、むしろこちらのほうがどろどろしていますれど。。。
歴史とは、勝利者の記録である。ということがよくわかりました。政争に負けてしまった人々は悪者にされ、死してなお「祟り」として勝利者である権力者の周りから離れない。
悪霊とは、人の心が創るものである。後ろめたい気持ちがある人に悪霊はまとわりつく。 -
厳密には古代のみではなく古来からの怨霊となった人物を取り上げていますが古代が目当てだったので。
其々の人物が怨霊となった(された)背景や経緯が様々で面白い。生きている人間の心が怨霊を作り上げる、または必要に応じて作り出されるものという解釈が大変に腑に落ちる。早良が本命でしたが道真や崇徳の項も非常に面白かったです。