時の石 (角川文庫 緑 500-3)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 150
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041500033

感想・レビュー・書評

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  • 「時の石」「黴」「BURN」の三部作。
    実は「黴」を読んだ時点でなんだか疲れてしまって、全部読み終わっていないのに返却してしまった。
    また借りてこようと思う。

    SFは何となく苦手だったのだが、この本を読んで「あ、これなら読めるかもしれない」と思ったり、思わなかったり。

    「時の石」
    ある日河原で見つけた不思議な光沢のある石は、人によって感じる重みの違う石だった。
    なかなか共感ができた内容だったと思う。
    後半の展開は、無いわー(笑)って感じだったが、SFってこんなもんなんだな、とも思う。
    どうでもいい話だが、私にはなんだか主人公の友人が「怪しく」見えた。えーと…友情以上のなにかが…。

    なんて言っていたら、友人に、「そういう本ばっかり読んでるからやろ、なんともないって」といわれてしまった(笑)
    皆さんどうだろう、そういうのが好きな人はちょっと読んでみてもいいんじゃないだろうか。邪な感想で最悪。(笑)

    「黴」
    なかなか面白かった。時の石よりちょっと好きだったり。
    にしても気持ち悪いね。普段SF読まないせいか、ちょっと想像して気持ち悪くなった。
    エイリアン、とかそっち系のSF。好きな人は好きだろうなぁ。
    迫りくる黴の恐怖!今思うとちょっとチープな感じもするけど、読んでいた時は、面白くてサクサク進んだ。

  • 20年以上前に読んだきりなのに、嫌なことがあると、時の石を抱いて寝れば、いやそれはダメなんだ!と思う。
    時の石が無くても、同じことはできるが、ダメなんだと思う。
    黴の話しは、世紀末の風景の心象風景と化した。

  • 栗本薫さんの小説はどれも読みやすい。
    この小説もスッと物語に入りそのままスムーズに読む事が出来た。
    才女のイメージがあり、さぞや難解な小説を書くんだろうと思っていたけれど・・・。
    本当に頭のいい人は全てを自分の中で咀嚼して、人に分かりやすく伝える事が出来るんだな~と栗本薫さんの本を読むといつも思う。

    これは、3篇からなるSF短編集。
    「時の石」
    思い悩む友人と河原で話をする僕は小さな石を拾う。
    直径7~8cmの、妙な形をしたその石は地球全体を持っているのかと思うほどに重く冷たかった。
    所が、その石を手にした友人は、軽く熱いと言う。
    友人はその石を持った時、過去の楽しい思い出の中にしばし浸り陶酔する。
    それからしばらくして、友人はその石を握ったまま自殺を図ってしまう。
    友人の自殺に石が関係していると思う僕は石の謎を探っていく。

    その人の過去の一番いい、楽しかった時間を見せてくれる石。
    ずっと・・・永遠に。
    最初これを読んだ時、何て素敵な石・・・と思ったけれど、それはほんの一瞬だけ。
    嫌な事がたくさん待ち構えている未来でも、既に経験した甘美な思い出より、まだ見てないものを見たいという好奇心の方が私には強い。
    今までつらい事があっても生きてきた、その年月が途端にもったいないと思えた。

    「黴」
    それはレモンティーに添えられたレモンにほんのちょっぴり生えた黴から始まった。
    切ったばかりの新しいレモンに何故、黴が?
    その後、黴は猛烈な勢いで街を世界を覆っていく。

    「BURN(紫の炎)」
    突然目が覚めるとそこは異世界だった。
    自分以外の誰もいなくなってしまった異様にカラフルな世界。
    主人公の青年はその世界を彷徨う内、一匹の狼と少女と出会う。
    少女は生き残った仲間たち300人で組織するグループで新世界での体制作りをしていると言う。
    そして主人公にも自分たちの仲間にならないかと誘うが-。

    こういう世界に突然たった一人でいるとなったら・・・。
    そして、そんな世界で他の生存者に会ったら・・・。
    その主人公の心の流れ、行動が全て共感できた。
    ああ、私もこう思うだろう、こうするだろう、と見ていて思った。

    『自分のほかに、誰ひとりいなくなった世界、というものを、一度も夢想せぬ人間は、おそらく、よっぽど幸福なのか、あるいはよっぽど鈍感で、現世的な欲望にだけとらわれているのにちがいない』
    この文章を読んで、とても嬉しくなった。

    この物語のテーマは深い。
    こんな突然変異の中でも、その異変が起こらなかった頃のやり方を変えず、人間だけは他の生物とは違うのだ、必ず種を残さねば・・・と特別視する人間たち。
    そのやり方、考え方に違和感を感じた。

    SF短編集ですが、どの話も重く深いいテーマを含んでいて、読み終わった後、色々考えさせられる本です。

    • megmilk999さん
      3個目の話しがどうしても思い出せませんでしたが、レビューを読んで思い出せました。
      3個目の話しがどうしても思い出せませんでしたが、レビューを読んで思い出せました。
      2019/07/23
    • katatumuruさん
      コメントありがとうございます(^^)
      ずい分ご無沙汰だったので、お返事が遅くなってしまってすみません。
      私は自分のレビューを見てもぼんや...
      コメントありがとうございます(^^)
      ずい分ご無沙汰だったので、お返事が遅くなってしまってすみません。
      私は自分のレビューを見てもぼんやりしか思いだせません。なのに、こんなコメントをいただいて嬉しいです。
      2019/08/02
  • とても読みやすい。表題作「時の石」が良い。

    ぼくと友人は河原で形容しがたい不思議な石を見つける。
    後日、その石を握り締めたまま、友人が自殺してしまう。
    「時の石」に隠された秘密とは…。
    平明な文章で描く爽やか風味のSFミステリー。

  • ときどきあるSF本薫。
    当時にしては、切り口もネタも斬新だったんだろうな…ってのが分かる…。

  • 栗本薫さんのいつまでも色褪せない、日常のようで世界が変わっていくSFが面白いなぁと思う。

    時の石 人によって重みが違い、一番幸せな時に時間を止める石。石も印象深いけど、自分にとっての、大好きな先生と自分を引っ張ってくれる同級生がいたらいいな

    黴 小松左京のような黴が人類をあっという間に征服する絶望。黴の白が清く、それでいて禍々しい光景なのだと思う

    BURN 紫の太陽、オレンジの苔、緑のビル。いったん崩壊した世界に慣れてしまったら、また秩序と階層の現代社会に戻るのは難しそう

  • 時の石、黴、BURNの3編。以前読んだことがあり再読。時の石、黴が印象深い。特に黴、最終場面で引用される「太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ」の詩がぴったりあう。時の石もラストのシーンとそれまでの流れが印象的。それに比べるとBURNは少し印象が薄い。語り手の楽天的な語りにはなんかイメージが悪いという感じかな。

  • 初読は30年以上前、高校生になった頃。
    すごくおもしろい本を見つけたのに、まだそういう話の出来る友人が学校にいなくて寂しく感じたのを覚えてる。

  • 河原で拾った不思議な石ころ。それを持ち帰った飯沼はその夜自殺を図る。ー時の石
    黴は以前アンソロジーで飲んだので飛ばし。
    ある朝目覚めたら、世界が変わっていた。人々はいなくなり空には紫の炎が燃えるー紫の炎

    読み終わった時、この本を読んでいるのは私だけ、という感じがした。すごい。
    ちょっと違う次元の話としては五分後の世界を読んでいたが、面白く読めた。
    最後に出てくるその世界独自の生き物が安易すぎるかなという気がして読後感はあまりよくなかった。

  • 「時の石」
    「黴」
    「BURN(紫の炎)」

    「時の石」
    最初の高校生の会話でちょっと好きになれないかと感じたが、読み終わってから栗本さんの短編のなかで最も心に残る一編になった。
    「一生の中で、いちばん美しい時、楽しい時はもう行ってしまった」と思ってしまうことが自分にもよくある。そうした過去にしか向かわない気持ちを、もっと楽しい時、幸せな時をこれから先で作ろう、そう考えることで上塗りする。これを繰り返している。
    頭のなかでは理想的ではないと思っても、強力なノスタルジーの引力に従うのはある意味幸せ。
    本編の幕引きも、青春ものとして良い終わり。

    「黴」
    静かで、美しい終末。
    しかし、栗本さんの短編って最後に「語る」人間がたびたび登場するなあ。

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著者プロフィール

東京都生まれ。早大卒。江戸川乱歩賞、吉川英治文学新人賞受賞。中島梓の筆名で群像新人賞受賞。『魔界水滸伝』『グイン・サーガ』等著書多数。ミュージカルの脚本・演出等、各方面でも活躍。

「2019年 『キャバレー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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