- Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041540060
感想・レビュー・書評
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田尾安志と長崎啓二のリーディングヒッター争い、スクイズを嫌う東海大四高校の監督など。こちらも20年前に読んだ記憶が蘇る。
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ボディビルダーについて書かれた「果て無き渇望」という名ドキュメント本があるけどこの「筋肉栽培法」というノンフィクションドキュメントは山際淳司という人が書いた「逃げろ、ボクサー」という本の中の一編。
書かれているのは「鍛える理由」等の著者で元全日本ボディビル王者にして東大教授石井直方先生の現役時代の話。
短編集からなる1冊
表題の作品、「逃げろ、ボクサー」はボクシング世界王者になった大橋秀行氏のの兄である大橋克行氏
について描かれた作品。
世界チャンピョンにはなれなかったが、克行氏のボクシングスタイルに脱帽
いかに打たれずにその試合を終えることができるか。
すべてをなげうっての泥臭さより、スマートな試合とでも言おうか、
絶対にできるという計算のもと試合をしている、極限状態での冷静さに驚く。 -
古本屋で懐かしい山際さんの名前を見つけてゲットしました。どちらかといえばマイナーなスポーツや主人公を多く取り上げた作品です。
山際さん。やはり読みやすいですね。肩肘張ってないというか、変に力が入っていなくて、淡々と(そして多分)本質を上手くつきます。
どの位の綿密な取材をされたのか、作品中の言葉は、本当に主人公自身の物なのか、それとも山際さんの思いなのか、なんとなく判別しづらい感がします。ルポのようでもあり、小説めいた所もあるのですが、そこが山際さんの持ち味ですね。
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普段あまり日向に出てこない、日陰のスポーツ選手にフューチャーした小説。
スターでないといえども、一人ひとりのスポーツ選手の持つ美学がかっこいいです。 -
筋肉栽培法が目的で購入。
チャンピオンが異常なメニューを淡々とこなしていく様が予想以上に良かった。 -
1974年生まれの自分にとっては、懐かしい内容が多いです。そうでなくても、幼すぎた自分の知らないところで、名前だけは聞いた選手たちが、こんなことをしていたのか、と感慨深く読む話もあります。
水野雄仁とか、田尾安志とか。高校野球の監督の話も、人材育成という点からして、面白い。 -
絶対にスクイズさせないと決め、甲子園でも勝ち上がった実績があるのに、ある年の地区予選で負けそうになりついスクイズさせ、次の試合でやぶれさった監督の、信念と苦さ、「スクイズ、フォーエバー」。まず人生設計ありき、スタミナは温存、ぶったおすんじゃなくて、ポイントをとって、ギリギリで逃げようと思っているボクサー、「逃げろ、ボクサー」。弟の登場する、あとがきとあわせて読むと、より味わい深い。その時点での首位打者長崎の意志と、ベンチの意志、消化試合での首位打者をとらせないためにすべて敬遠されることに抗議するかのようにわざと空振りした田尾の思いの交錯する「リーディング・ヒッター」。戦争によりアメリカと日本のあいだで苦悩した阪神のカイザー田中監督を軸に描かれる、「異邦人たちの天覧試合」。天皇陛下が、サヨナラの試合を目の当たりにし、まだアウトが三つとられていないが、といったエピソードはよくできた話しだなあと思いつつ。のちに巨人の先発ローテを支えた水野が、エースとして活躍した時代の池田高校、ひきいるのは名監督、嶌監督。水野のふてぶてしいまでのエースの自覚と冷静さが印象に残る「監督とエースの甲子園」。筋肉を専攻する大学院の研究者とボディービルダーというふたつの顔を持つ石井直方を描く「筋肉栽培法」。いつまで筋肉を鍛える事を繰り返すのか、むなしくならないのか?という問いには”そういうことは、考えないほうがいい”。「筋肉と対話するのに思想はいらない。それは薔薇を育てるのに思想がいらないのと同様だ。薔薇に一滴の水を。そして、筋肉にひとしずくの汗を---。」/たまたまな行きがかりでソフトボール全国大会を目の当たりにした「回れ、風車」。野球への愛憎なかばする思いをいだきつつ。「風車は回った。風もないのに、回りつづけた。どうやら、風というものは、自分の力で吹き起こすものらしい。ふとそんなふうに思ってみるのも悪くはない。そうすれば、自分も風になれるかもしれないから」。
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これ、本当におもしろい。
表題になってるボクサーも。
初めてスクイズや監督の出すサインについても理解ができた。 -
スポーツノンフィクションというジャンルは山際淳司で知った。有名な選手はモチロンのこと、高校野球の無名な選手に対しての丹念な取材。そのとき何を思っていたのか、実際にどうプレイされたのかが精密に再現されていく。スポーツでは全て一瞬で終わってしまうプレイの中にも様々な思いが錯綜する。山際淳司が亡くなってしまい新刊が出されないのがすごく残念だ。
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決してスポットライトを浴びるスポーツマンだけが、人に感動や思いを伝えるのではないと、以前から思っている。
観客もほとんど訪れないような小さな大会、いや、試合があることさえ知られていない、そこに出場している選手しか知らない試合であっても、そこに秘められたもの、そこでの情熱は存在する。
そんないくつかのスポーツのシーンを切り取った山際淳司らしい一冊。
『 勝ちたい。
負けたくない。
それは、あらゆるスポーツにおける特有の心理だ。ある一日のなかの、区切られた時間のなかでたたかわれる。それがゲームというものだ。そこで負けたくないと、誰しもが思う。それがゲームというものだ。人生の、ほかの時間では敗者であったとしても、あるいはそれゆえにこそ、このゲームには勝ちたいと願う。勝つことによって自信をつけることができるのだ、という。栄光をつかむことができるのだ、という。』