楽しい古事記 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 77
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041576236

作品紹介・あらすじ

イザナギ・イザナミの国造り、アマテラスの岩戸隠れ、八俣の大蛇。伝説の主役たちが、嫉妬に狂い、わがままを言い、ご機嫌をとる-。神々と歴代の天皇が織りなす武勇伝や色恋の数々は、壮大にして奇抜、そして破天荒。古代、日本の神さまはとっても人間的だった!「殺して」「歌って」「まぐわって」。物語と歴史が渾然一体となっていた時代、その痕跡をたどり旅した小説家・阿刀田高が目にしたものは!?古事記の伝承の表と裏をやさしく読み解いた一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 何度か触れたことのある古事記
    そして毎回「海幸山幸」までは楽しめるが、そのあとがおぼろげにしか記憶がない
    その辺りを復習したいと思い、そうだ!阿刀田氏がいらっしゃるではないか
    彼の親切心とユーモアできっと楽しめるはずと期待し読むことに
    氏のお人柄なのか、相変わらず目線と腰が低く、読者に寄り添ってくださるスタイル(優しいなぁ…)
    相変わらず少しでも難しい話しに流れそうになると
    これは「『楽しい古事記』だから、難しい話しはさておき」と相変わらずでニヤリとしてしまう

    が、結論
    どれだけ阿刀田氏の力量があっても私には面白くない…
    本当は海幸山幸より後ろを中心にレビューするつもりだったが、無理なものは無理!

    せっかくなので復習がてらあらすじを書いちゃうことに(海幸山幸までね)

    やっぱり最初の面白話はイザナギ、イザナミ
    阿刀田氏も「古典はおもしろい部分から入門するのがモットー」とおっしゃる(笑)
    「吾が身の成り余れる処を、汝が身の成り合はぬ処に刺し塞ぎて…」(この表現!凄すぎる…)
    お二人の格調高いセックスにより国づくりが始まる
    そして国づくりの後、さまざまな神を産み始めるのだが、火の神を産んだ時イザナミは下腹の大切な部分(要は陰部)に大火傷を負い、死ぬ
    最愛の妻を失ったイザナギは「火の神、お前のせいだ!」と首を斬り落とす
    (一応自分の子なのに、なかなかの残虐っぷり)
    そして黄泉の国のイザナミに再会するものの
    イザナミが「見ないでちょっと待っててね」…
    待てないイザナギ(あーあ)
    ウジだらけのイザナミの姿を見てしまった
    「よくも醜い姿を見たわね!」キレるイザナミ
    その後はドタバタ劇(悲劇だけどどうも喜劇に感じてしまう)
    黄泉の国を塞ぎ夫婦の契りはお終い
    「1000人ずつ殺すという」イザナミ
    「1500人誕生させるという」イザナギ

    その後、アマテラスが誕生し、弟スサノオが暴れたせいで天の岩戸へ隠れる
    (アマテラスしっかりして!)
    個人的に大好きなウズメちゃんが卑猥さと滑稽さを丸出しに踊りまくりアマテラス引きずり出しに成功
    そして出雲へ追放されたスサノオはクシナダ姫を救うため大蛇ヤマタノオロチを退治(その先に草薙の剣をゲット)

    さてさて、お次はオオクニヌシ
    兄弟に殺されかけ(お母様が何度も助ける)、そして有名な因幡のウサギを助けたオオクニヌシ
    彼はスサノオの娘スセリ姫と出会い、結婚したい!と父であるスサノオに申し出るが…
    スサノオは数々のが試練を与えるものの、オオクニヌシは見事に合格
    その後オオクニヌシはあちこちに愛人をつくり、子供は180人とも…(まぁ大げさな例えでしょうけど)
    (古代の考え方は絶倫ではなく、繁栄ですね ゼウスも然り)
    出雲大社も建て、国が繁栄
    そしてここで協力する助っ人、とても小さい(これまた個人的に好きな)スクナビコ
    可愛いけど優秀
    彼を登場させる意味は…
    小さい神が小粒の種(優良品種)を持ち込み穀物が増産した
    渡来人から最新の妙薬を手に入れた?
    医療に関わる象徴か?
    疫病の流行を鎮めたか?
    (そんな意味があるとは初めて知りました!)

    繁栄した出雲を征服したい高天原
    アマテラスが国譲りのため、使者を使わす
    最後はほぼ力づく(笑)
    オオクニヌシは壮大な社を作らせることを条件に引き渡しに応じ隠居
    これが「出雲大社」のいわれとされる

    そして天孫降臨
    優秀な孫のニニギを地上へ行かせる
    その際ウズメちゃんと道案内役サルタビコが出会う
    (ウズメちゃんのナイスなキャラをアマテラスがかっていることがよくわかるシーン)
    さてニニギ君
    美しいコノハナノサクヤ姫と出会う
    名前からして美しいことが想像されます
    彼女の父に結婚の許しを得るが、セットで姉イワナガ姫もつけられた
    イワナガ姫はコノハナノサクヤ姫と正反対で醜い
    ニニギ君は「姉さんは要らない」と突き返す(おいおい)
    がイワナガ姫をそばに置けば神の御子の寿命は石のように堅く、長く続くという
    コノハナノサクヤ姫は木の花が咲くように栄えるが命は短い
    天皇によっては寿命が短い理由をこのストーリーで神話づけしているようだ
    (おまけに出会ってすぐ子供が出来たからって疑いを持つニニギ君 ないかと人間くさいのだ)
    コノハナノサクヤ姫との間に生まれたのが兄の海幸彦と弟の山幸彦
    弟の提案で道具を替えっこし、兄は山へ、弟は海へ行く
    山幸彦が兄の大切な鉤を海でなくす
    怒る兄山幸彦
    海の神に出会い運気が弟へ傾く
    地上へ戻ると何をしても弟に敵わなくなり、兄は弟の配下になる
    古事記は弟が力を持つ
    天武天皇は兄天智天皇と対立し、兄の血筋を抹殺した経緯があるせいかも?
    (そういえばオオクニヌシも弟だなぁ…)

    海の世界で出会ったトヨタマ姫
    出産の際、決してのぞいてはいけません…
    (出ました出ました!「見ちゃいけない」第二弾 が、覗かない男がいないはずがない)
    トヨタマ姫は鰐の姿で出産
    「見―たーなー」(笑)
    本来の姿を見られたトヨタマ姫は子供を残し海中へ帰る
    とはいえ地中が恋しいトヨタマ姫は妹のタマヨリ姫を送り込む
    トヨタマ姫の子とタマヨリ姫が結婚し、生まれた四男が神武天皇だ
    こんな感じまでが上巻


    そして、神武天皇から始まる天皇のもっぱら系譜が多く頭に入らないワタクシ…

    これ以降で有名どころではもうあの人しかいませんね!
    そう十二代目景行天皇の皇子ヤマトタケル君
    力強く愛情深くエピソードに富み、悲劇的な最期を遂げる
    阿刀田氏曰く、ヤマトタケルは実在の人物ではない可能性が高いという
    長期に渡りいろいろな人がおこなった遠征をヤマトタケルに集約し、フィクションも交え英雄譚が成立したのだろうと…
    そしてエピソードは諸国から集められ、白鳥となって、諸国は飛び帰った
    (確かに私の近くにも「白鳥(しらとり)」という地名があり、ヤマトタケルが降り立ったことになっている)

    最後に目立つのがライバルをなぎ倒して君臨した二十一代雄略天皇(オオハツセの命)
    雄…雄々しく勇壮
    略…治める、かすめ取る、はかりごと
    名前から納得いくわがままで激しい気性、かつ個性的で女性関係も積極的だ
    (アバンチュールなエピソードがたくさん)
    殺して、まぐわって、歌を詠んで、また殺して、またまぐわって、歌を詠んで…
    が実際はなかなかの大王だったようで、
    崩れかかった大和朝廷の威信を回復し、国家財政の充実を図り、渡来人を重用して先進文化を取り入れたそうな

    とまぁこんな感じで…
    やたらレビューに「(笑)」を入れてしまったが、笑うしかないエピソードが多すぎなのですみません
    ギリシア神話にしてもそうなのだが、とことん人間臭い上、あまり優秀な感じもないし(失礼)、結構理不尽なことが多い
    一応古事記はいうのは「大和朝廷がいかに正統なものか後追いの形で作られた史書」なのだが、
    これでいいのかなぁ…と思ってしまうのは私だけではないはず(何度触れても面白いからいいけどさ)

    余談だが…
    以前里中満智子先生の漫画を読んでしまったので、あらゆる神様たちが里中先生のキャラクターで浮かんできてしまう
    覚えやすいし、好きな絵だからいいのだが、目から得る情報の強烈さと印象深さを改めて実感した

    • 淳水堂さん
      ハイジさんこんにちは。

      「海幸山幸」までしか楽しめない、ってなんかわかります。

      古事記は三巻あり、海幸山幸(コノハナサクヤヒメ周...
      ハイジさんこんにちは。

      「海幸山幸」までしか楽しめない、ってなんかわかります。

      古事記は三巻あり、海幸山幸(コノハナサクヤヒメ周辺)が語られる上巻は国の始ましから神々の時代で面白いんですよね。
      中巻では神々と人間とが融合し、下巻は十六代仁徳天皇から三十三代推古天皇の時代なので「教科書で知ってるよ!」でなんか神性が消えて人間の時代だから、特別感がなくなっちゃうんですよね。

      ハイジさんも書かれている通り、ギリシャ神話も日本の神様も人間臭いのですが、それでも上巻エピソードのほうが神秘的って読んでいる自分も不思議なんですけどね。
      2022/11/30
    • ハイジさん
      淳水堂さん こんにちは!
      コメントありがとうございます

      そうなのですよね
      中巻・下巻になるともはや歴史の教科書みたいで面白みに欠けてしま...
      淳水堂さん こんにちは!
      コメントありがとうございます

      そうなのですよね
      中巻・下巻になるともはや歴史の教科書みたいで面白みに欠けてしまって…
      にしても、上巻部分は面白すぎますよね
      いきなり、離婚、我が子殺害って(笑)
      大和朝廷の威厳を感じさせるような少しスマートな内容にしても良かったのでは…とつい思ってしまいます
      (現代の我々には喜劇的で楽しめるのでいいのですが)
      というわけで日本書紀は面白みが欠けそうなので読む気になれず…でございます

      確かに人間臭いけど、神秘的!
      ってわかります
      矛盾しているようですが、実際にそうですもんねぇ…
      2022/11/30
  • 大好きな阿刀田高の古典解説シリーズ、今回は『古事記』。
    いつもながらの知識ダダ漏れの阿刀田節、というよりは古事記そのままの大らかな雰囲気の中、「まぐわって」「歌って」「殺す」物語を著者と共に味わう感じの作りになっています。
    もっと早く読んどきゃ良かった…過去の旅先で、古事記にまつわる多くの場所を知らずに通り過ぎていたかと思うと悔やまれます。

  • 2年前に読んでいるんです。再読。読書会の課題図書。

    前に読んだ時も面白かったのですが、再読しても面白かったです(笑)。
    そして、改めて、「読んだはずなのに、ほぼ忘れている」ことに衝撃。
    ヒトは、忘れる生き物ですねえ。
    だから素敵なこともいっぱいあるんですが。

    ●とにかく、「ああ、この神社、この旧跡、行ってみたいなあ」という想いが。空腹時に素敵なグルメエッセイを読んだ気分(笑)。
    (もともと、寺社巡りが好きだ、などという趣味があるからなんですけれど)

    ●あらためて、イザナギ・イザナミからスサノオ、オオクニヌシのあたりまでの、なんともワイルドで壮絶な物語性に目が眩みます。
     これが、古事記成立当時は、子孫である(子孫であると自称する)天皇家と権力者たちにとっては、「不名誉」では無かった訳ですから、その頃の道徳の在り方っていうのがオモシロイ。

    ●神武天皇からヤマトタケルのあたり、つまりは「東方の未開民族たちを征服する権力の物語」。
     このあたりは、誰もうかがえない実相という謎に向けて、被疑者の言い分を聞きとる刑事になった気分ですね。ミステリー謎解き感満載。
     どうして、こういう物語になったのか。
     そして、どうしてやや後年成立した「日本書紀」と齟齬があるのか。オモシロイ。

    ●そして雄略天皇のあたり。章題「殺して歌って交わって」。もうこのタイトルが秀逸の爆笑ですね。
     リチャード三世も真っ青な、超ドロドロな大河ドラマ。
     これ、その後継者たちが、正当化するために描いても、こうなってるわけだから。ホントのところはどれほどだったのか…。
     まだメディアも人権も選挙も無い、権力という装置が、剥き出しの赤身のような生々しい時代。
     特段、日本がどうこうという、名誉であるとか恥であるとかではなく、そういうものなんだよなあ、と思いました。

    ※リチャード三世も、阿刀田高さんのシェークスピア本で学んだことなんですけどね。

    阿刀田さんの、この古典解説エッセイシリーズは、この先、再読再再読の愉しみもわくわくだなあ、と思わせてくれました。

    歴史という物語を愉しめるならば、実に外れのない名著ですね。

  • 『古事記』の現代語訳を読もうとして挫折し、
    それならと薦められたのがこの本で、
    古事記の世界やストーリーが親しみやすく書かれていて
    確かに入門書としては最適。

    『古事記』で頻出する人名は主要人物を除いて端折られているし
    (神様の名前をいちいち掲げるのはややこしいので省略、といった具合である)
    一人ひとりの神様が人間臭くイキイキと描かれているので
    字面を追うだけになりがちな『古事記』とは違って
    頭のなかで場面を想像しやすくなっている。

    また、作者自身の古事記の舞台訪問記といった紀行文も
    章ごとに挟み込まれていて、古代と現代との時間的空白を
    つなぐ役目を果たしてる。
    しかも、これがけっこう面白い。

    自分はガイドブックとして、たまたまコンビニで見かけた
    『一個人別冊 古事記入門』に掲載されている
    神話ゆかりの地の写真を見ながら読んでいたので、
    紀行文と合わせてイメージが掴みやすかった。

  • 古事記は物語と歴史が渾然と入り混じった時代の産物であり歴史そのものではない、と著者が結ぶようにかなりぶっ飛んだ内容になっているようです。
    果たして古事記に書かれている天皇の何代目から実在の人物なのかという事も興味があって、大体のところはわかっているらしい。
    古事記、その成立は和銅5年(712)43代元明天皇の時代に太安万侶が筆録。
    そもそもは天武天皇の発案を受け稗田阿礼がイザナギ・イザナミからの伝承を暗唱し、その暗唱を太安万侶が筆写して編集したというのだからすごいな記憶力!
    その意味するところ日本が天皇家を基にしてなっているという事を真理とするための根回しのような歴史書なのか。
    阿刀田さんの解説付きで読んでも無理矢理な理屈や飛びすぎた表現が一杯。
    歴史書は勝者の記録と言われるが、力づくで歴史を作り出している部分が多いのも似た様な事と考えれば良いのかもしれない。

  • 20190713
    とっつきにくい古事記を楽しく解説。阿刀田氏の文章らしくコミカルで、トゲやエロを含んだ興味深い文章となっている。普通に読めば人の名前で辟易してしまう古事記だが、こうも面白い文章と面白い視点で読めば、古事記も興味を持てる。昔のエロ本と言っているのだからなんとも大胆である。
    前半の神々のエピソードら有名かつ印象深い。
    ・みとのまぐわい
    ・三種の神器
    日本各地を回る楽しみが、古事記から増やせそうである。古来から読まれている話を読まずに日本を深掘りすることはできない。

    //MEMO//
    阿刀田氏の優しく解説シリーズ、古事記編。
    日本の神道を学ぶ基礎となる八百万の神を知るためにも必須の知識である。楽しく学び、日本を見て回る楽しみを増やしていきたい。

    イザナギ、イザナミ
    十握剣

    イザナギの涙から生まれた3人の神
    ・アマテラス=太陽
    ・ツクヨミ=夜
    ・スサノオ=嵐

    天の岩戸
    ・アマテラスが高千穂峡で岩の扉を閉めて閉じこもった。
    開けた岩戸が長野まで吹っ飛び、戸隠神社になっているという。

    三種の神器
    ・草薙剣
    =スサノオの命が八岐大蛇の尻尾から見つけ出した剣
    ・八咫鏡
    ・八尺瓊勾玉

    カムヤマトイワレビコの命=神武天皇

    神武天皇の東征
    ・八咫烏に案内させる

    日本武尊(ヤマトタケル)

  • (2013.05.15読了)(2007.09.10購入)
    【5月のテーマ・[日本の古典を読む]その②】
    2013年2月に抜粋版で、『古事記』を読みました。手元に古事記に関する本がもう一冊あったので、この機会に読んでしまうことにしました。
    阿刀田さんは、『コーラン』『旧約聖書』『新約聖書』『ギリシャ神話』『アラビアンナイト』『ホメロス』など、沢山の解説書を書いているようです。とりあえずコーランについてはすでにお世話になっていますので、これで2冊目というところです。
    『古事記』の中にはどのようなお話が収録されているのか、を読みやすく解説してくれています。また、その神話・伝説は日本のどこが舞台とされているのかがわかっている場合は、そこに足を運んで、紀行文が挟み込んであります。
    歴代天皇の話については、どのあたりからが実在した天皇で、それ以前は、架空か、ということも述べられています。古事記の概要がわかればいい方は、この本がお勧めです。

    【目次】
    国の始まり ―イザナギ・イザナミによる建国
    岩戸の舞 ―アマテラス大御神、岩戸に隠れる
    神々の恋 ―八俣の大蛇退治と因幡の白兎
    領土問題 ―オオクニヌシの治世
    海幸彦山幸彦 ―兄弟の争い
    まぼろしの船出 ―神武天皇の東征
    辛酉にご用心 ―崇神・垂仁天皇の治世
    悲劇の人 ―ヤマトタケル伝説
    皇后は戦う ―仲哀・応神天皇の治世
    煙立つ見ゆ ―仁徳天皇の権勢
    殺して歌って交わって ―雄略天皇の君臨
    女帝で終わる旅 ―返り咲いた顕宗・仁賢天皇
    「まぐはひ」せむ  出久根達郎

    ●古事記の編纂(146頁)
    古事記は大和朝廷の基盤が強固になったときみずからの血筋がいかに正統なものか、後追いの形で作成されたものである。政治的な意図を多分に含んでいた。そうであるならば、不都合なものは捨てられ、故意に捏造された部分も多いと考えるのが常識である。
    ●神武天皇(146頁)
    現在の学説では神武天皇の東征はなかった、とする論も強いし、神武天皇その人さえ存在しなかった、という声も高い。古事記上巻の神代の部が伝説であったのと同様に、神武天皇のエピソードもまた伝説であり史実でなかったと、学問的にはほぼ確定している。
    ●神武天皇の即位の年(152頁)
    推古九年(601年)が、辛酉の年に当たっていた。
    六十年周期の二十一回目ごとの辛酉の年は大事の年という考え方があった。
    そこで
     60×21=1260
    聖徳太子の辛酉から逆算して千二百六十年前を神武天皇の即位の年としたわけである。これが皇紀元年。西暦前六五九年となる。
    (1940年、昭和15年、が皇紀2600年ということで盛大な式典が行われたようです。2013年は、皇紀2673年です。)
    ●阿刀田さんの取材道具(172頁)
    持ち物は資料となる本一冊、ガイドブック、地図、取材ノート、カメラ、そして私の場合はテープ・レコーダが欠かせない。現地を踏んで感じたことを吹き込む。取材ノートの方が補助的である。カメラも、それほど繁くは使わない。
    大切なのは言葉だ。
    ●国のまほろば(191頁)
    倭は 国のまほろば
    たたなづく 青垣
    山隠れる 倭し 美し
    大和の国はすばらしい。青垣のように重なりあう山々、その山に包まれた大和は本当に美しい、
    ●古事記の成立(193頁)
    七世紀の後半、第四十代天武天皇の頃に発案され、当時の英知を集めて第四十三代元明天皇の和銅五年(七一二)に成立したものである。

    ☆関連図書(既読)
    「古事記」角川書店編・武田友宏執筆、角川ソフィア文庫、2002.08.25
    「ヤマトタケル」梅原猛著、講談社、1986.01.20
    「コーランを知っていますか」阿刀田高著、新潮文庫、2006.01.01
    (2013年5月22日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    イザナギ・イザナミの国造り、アマテラスの岩戸隠れ、八俣の大蛇。伝説の主役たちが、嫉妬に狂い、わがままを言い、ご機嫌をとる―。神々と歴代の天皇が織りなす武勇伝や色恋の数々は、壮大にして奇抜、そして破天荒。古代、日本の神さまはとっても人間的だった!「殺して」「歌って」「まぐわって」。物語と歴史が渾然一体となっていた時代、その痕跡をたどり旅した小説家・阿刀田高が目にしたものは!?古事記の伝承の表と裏をやさしく読み解いた一冊。

  • 阿刀田高氏著。2003年。古事記を簡単に解説してくれる本。内容は知らないが、ちょっとかいつまんで読んでみたいという人にお勧め。巻末には天皇の一覧が掲載されているので、一応歴史の教科書のような体裁も保っている。というものの、古事記は歴史書ではなく多分にフィクションの要素を含んだ書物である。天皇が多くの女性と関係を持ったり、現在では考えられないほど残虐な殺戮を行っている等、事実としてとらえるのは若干難しい。したがって、小説的な部分を踏まえた上で過去を理解することが必要である。

  • 前半の神話的な部分(本辞というらしい)はやっぱり面白い!  イザナギ・イザナミの国造りも、アマテラスの岩戸隠れもスサノオの命のヤマタノオロチ征伐もオオクニヌシの命の因幡の白ウサギも、国引き物語も海幸彦 & 山幸彦の物語も。  あとはやっぱり神武天皇の東征とヤマトタケル伝説は、ストーリー性もあれば、歴史的事実のたとえ話的な要素もあって楽しめます。  でもね、後半の天皇家の系図的な部分(帝紀というらしい) は正直なところ、「ふ~ん」という感じ ^^;  誰と誰が「まぐわって」何人子どもを残して、「殺して」「歌って」の部分は文字を追って一応読んではいても頭には何も残らない・・・・・そんな感じでした。

    (全文はブログにて)

  • 「日本書紀」とならぶ古い書物である「古事記」を解りやすく書いた本のはずなのですが・・。古事記の話に出てくる所を旅してる?しかも関係の無い所まで説明してる〜ギリシャ神話やトロイヤ戦争の話ドリアンの話などあまり関係ない話が・・俺は、古事記が読みたいのに・・やはりエッセイは、苦手です。
    「古事記」の話は、省略して話さない話もちらほら・・・。
    ま〜「古事記」自体、詰まらない所も多いのですかね?

    あ〜「日本書紀」は、歴史の色合いが濃く「古事記」は、神話の色合いが濃いとされてる書物です。
    日本の八百万の神が出てくるのがこの二つの書物です。
    イザナギ・イザナミの国造り、アマテラスの大神、スサノオウ、八俣の大蛇(今邑彩「大蛇伝説殺人事件」梅原克文「カムナビ」は、八俣の大蛇伝説に係わる本です。これが、なかなか面白いんだよね)ヤマトタケルとか色々な話が出てきます。日本の神々と歴代の天皇が出てくる話でもあります。

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著者プロフィール

作家
1935年、東京生れ。早稲田大学文学部卒。国立国会図書館に勤務しながら執筆活動を続け、78年『冷蔵庫より愛をこめて』でデビュー。79年「来訪者」で日本推理作家協会賞、短編集『ナポレオン狂』で直木賞。95年『新トロイア物語』で吉川英治文学賞。日本ペンクラブ会長や文化庁文化審議会会長、山梨県立図書館長などを歴任。2018年、文化功労者。

「2019年 『私が作家になった理由』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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