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みんなの感想・レビュー・書評
宮脇俊三さんは自著の宣伝めいた発言をほとんどしないのですが、本書は例外に属するやうです。特に若い人に読んでもらひたい、と宮脇さんとしては特別に思ひ入れのある作品ださうです。初版の「あとがき」には、かう書かれてゐます。 「駅々に貼られた旅客誘致のポスター、ホームに上れば各種の駅弁が装いをこらして積んである。冷房のきいた社内、切符を持たずに乗っても愛想よく車内補充券を発行してくれる車掌。 ... 続きを読む »
俊三少年は東京育ちだが、政治家であった父親の実家は四国香川県東部の引田町にあった。それは長距離旅行の大義名分になる。ある時母親と一緒に帰省する話が持ち上がる。さて、どの経路にしようか、東海道・山陽筋には幾多の名門列車が運転されている。一番目当ての列車では途中駅降車が深夜になる。接続の便の良い列車では面白みがない。旅行直前まで時刻表を検討しつつ眠れぬ夜を過ごす少年。
時は経て昭和20年8月15日正午。俊三青年は東北地方の田舎町の駅に居た。全国で多くの人がこの瞬間を回顧しているが、ここでも青年の目は戦時下にあって一部能力を欠きつつも正確に運行されていた列車を見逃さなかった。
昭和元年生まれの著者が、第二次大戦中の日々の出来事を多感な少年の目で捉え、さまざまな鉄道を巡る体験と織り交ぜてつづっています。歴史小説としても鉄道紀行文としても秀逸。玉音放送が流れた昼下がりにも鉄道だけは時刻表通りに走っていた、という静かな描写が心にとてもしみました。







