THE WRONG GOODBYE ロング・グッドバイ (角川文庫 や 31-5)
- 角川書店 (2007年11月22日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041616093
作品紹介・あらすじ
神奈川県警の刑事・二村永爾は、殺人事件の重要参考人ビリー・ルウの失踪と関わった嫌疑で捜査一課から外されてしまう。事件直後、ビリーが操縦していたジェット機が台湾の玉山の上空で姿を消したことを知らされる。一方、横須賀署の先輩刑事から国際的な女流ヴァイオリニストの養母である平岡玲子の捜索を私的に頼まれる。玲子のマンションで二村は壁に拳銃弾を発見、彼女が事件に巻き込まれたことを知るが…。三島賞受賞第一作となる傑作ハードボイルド。
感想・レビュー・書評
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再購入2012/05/21JPN450
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本家「The Long Goodbye」を好きな読者にはニヤリとするところの多い作品。
しかしながら安心召されい、私のように本家の粗筋を1%も覚えていないタイプでも、ハードボイルド作品としての愉しさは伝わる。伏線回収が巧みなミステリー作品が好みの人には、悪くない週末読書を提供してくれると思う。
タイトルが既に本家のモジりであり、100%成功したとしても所詮"名作の亜流"だという評価を得ることが上限なのでしょうが、そんな態度ゆえか、良い具合に脱力系ハードボイルドに仕上がっており、嫌いではない。 -
全然進まず疲れた上に、いまひとつ何も入ってこなかった。
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このミスベスト10、2005年版4位。ハードボイルドっぽい警察小説だけど、せりふも臭すぎることなく、適度。話がテンポ良く進んで、サクサク読み進めるし、いい感じの娯楽小説。ただ、展開が速すぎるのと、設定がやや複雑すぎるのとで、途中から筋が解らんようになってくる。最後に次々と真実が判明してくるんだけど、フーンって感じで良くわかんない。途中、脱落せずについて行ける人はラストまで楽しめるんじゃないかと想像されます。
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話が複雑でたいへんでした。
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やっちまった!既読本だった。
大友克洋との合作『気分はもう戦争』のような、関川夏央と谷口ジローの『事件屋稼業』のようなノリが延々と続くハードボイルド。 -
とりあえず、ハードボイルが向かない事は分かりました。
作品が長いせいなのか、それとも内容が趣味じゃなかったのか
読み終える事はできたのですが…それほども。
読んでいて、誰が何をしているのかは憶えているのですが
どうしてそこに繋がるのか。
言われて(?)やっとそうだった、と思い出す程度。
向いてない、と自覚いたしました。 -
初めて読んだハードボイルド作品です。ニューハードボイルドといった方が正しいか。私もレイモンド・チャンドラーの『長いお別れ』とカン違いして読み始めたのですが、本作はその本歌取りであることに途中から気付きました。間抜けですね。
私はこの本を借りて読みました。本の貸し主によれば、これは小説だけど、時代批評色が濃いのだそうで。
舞台は横須賀、在日米軍基地、めくるめくダイキリやマティニ、ヴェトナム戦争にまつわる謎。物語は腹をすかせた主人公がさびれたハンバーガーショップに立ち寄り、一人の酔っぱらいと出会うところから始まる。主人公は一匹オオカミを好む刑事で、酔っぱらいのビリーはヴェトナム戦争のアメリカのエースパイロット、のはずだった。主人公にとって、ビリーと飲む酒は一番楽しい…。それだけのはずだった。ところが、ある夜事件に巻き込まれたらしいビリーは主人公にタクシー代わりに車を走らせた挙句、横田からジェット機で飛び立ち、失踪してしまう。99時間後に戻る、と百ドルを半分にちぎり、星条旗に誓って。
うーん。とりあえず、軍隊用語とヴェトナム戦争の時代背景を知らないと読むのに苦労しました。最後まで読んで、何となくわかるけど…、って感じで的確なレビュー書けません。すいません。主人公の刑事もどこにかっこよさを感じたらいいのか?ハードボイルドってそこに大きな魅力あるんじゃないの?みたいなことを思ってしまう私はまだまだ大人の魅力がわからないのでしょうか。またもうちょい時代背景や軍事あたりの知識がついてきて、読みたくなったら再読します。もう少しトシとった私は主人公の生き方をかっこよく思うのでしょうかね。 -
”ハードボイルド小説”
ときくと
どうしても
”ハードコア”
を連想してしまっていけない
どちらにせよ
どちらのコトバも似合わない小説だったなあと -
レイモンド・チャンドラーの『The Long Goodbye(長いお別れ)』へのオマージュ作品といってよいだろうか。本書は『The Wrong Goodbye』。チャンドラーの『長いお別れ』を再々読しておいてから、この作品に挑んだ。以前テレビ・ドラマで観た、永瀬正敏主演の「私立探偵濱マイク」を連想した。パロディともコメディともつかない、ビジュアルに力を入れた妙に楽しいドラマだったが、本書を読んでいて同じような映像が瞼に映った。著者は、チャンドラーの世界と小説手法を、日本の横浜に舞台を置きかえて忠実に再現しようと試みたかのよう。国も時代も異なるため、リアリティの点ではかなり厳しかっただろうが、あえて制約を設けることで創作を楽しんだのではないだろうか。それともやはり苦しかったのだろうか。いずれにせよ、一読者としてはそんな文章スタイルを堪能させてもらえ、嬉しかったが。ストーリーは『長いお別れ』を思わせるところが随所にあるが、当然まったく異なる話。もっと大きく、複雑な犯罪が扱われてる。探偵は刑事、ギムレットはパパ・ドーブレに置き換えられている。『長いお別れ』をなぞったところは、冒頭酔っ払った男と出会うところ。そして、魅力的な女性と出会うところだ。鏤められた『長いお別れ』の欠片に、ニヤリとさせられた。主人公の刑事・二村永爾が誰何され、「伊達邦彦」と答えたときには笑った。大藪春彦の生んだ最も人気のあるダーティー・ヒーローの名前だったから。以上のように本書は面白かったのだが、レイモンド・チャンドラー、ミッキー・スピレイン、大藪春彦らのハードボイルド小説を知らない、あるいは好きではない人には理解されないかもしれない。