- Amazon.co.jp ・本 (672ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041616581
作品紹介・あらすじ
第二次世界大戦後、日本は大菩薩峠を境とする「壁」で東西に遮られ、東京を首都とする共産主義国家の東日本と、大阪を首都とする資本主義国家の西日本に分断されていた。西日本では「ちゃうか」などベタな大阪弁が標準語となり、「昔の標準語」はマイナー方言になっていた-。そんな日本にやってきたアメリカ黒人のCNN特派記者「私」を待ち受けていたものは…!?戦後分断された東西日本の統合をめぐる壮大奇怪な真贋日本史。
感想・レビュー・書評
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文学
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アナザー1973年
ベトナム・ハノイに対し
原子爆弾「サウンドオブサイレンス」を投下したことで
逆に、アメリカの敗戦は決定的なものとなった
核の力でも、ベトコンのガッツを砕くことはできないということが
明らかになってしまったからである
戦争終結の早まったおかげで徴兵をまぬがれた主人公は
生き延びたことへの罪悪感なんぞ
微塵も持っていない
一方、戦後日本で鬱屈を深める平岡公威は
ソ連との闇取引をとりしきるところにまで堕ちながら
ひそかに「日本自殺装置」の発動を計画していた
そうすることによってのみ再生しうる何かがあると
そう信じていたわけである -
構想は実に面白い。矢作さんは、誰かと組んだ方が良いと思う。古い話だが司城志朗や大友克洋と組んだ仕事はどれも素晴らしい。本書は、やや冗長にすぎ、その割に物語の収束のさせ方が不十分と感じた。
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どちらかと言うと東日本が好き。
未読の人には全く不明な話ですが、東西日本があり、各々占領軍が違っていたら、どちらが好きか、という話です。(上巻の感想参照)
いや、そう言う話じゃない。
あえて日本を東西に仕分け、こなたとかなたに割り振ってみたのでしょうが、これがまぁよく出来ている。官僚組織がスターリンに好かれ、戦前からの左翼がシベリア送りになる一方、吉本一族が政治の中枢にいたり、田中角栄(同姓同名の別人です)が米のためにゲリラ化し、厭共連合(「勝」の字の組織とは関係ありません)があったり、旧来の価値観と「真」戦後史の中で変容する価値観を争わせたり、納豆、おみおつけ(御御御つけ)、米に至っては、なんとまぁ。
思想より実践、何よりも人となり(国民性)が大事な気がしてしまったのは、多分、勘違い。勘違いかぁ?。不思議の国、日本は、素敵な国でもありました。いや、これも違う。
多分、一年に一回は読むな、文庫版が出たお陰で、携帯できる。
第8回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞、渋谷のドゥマゴ パリでカフェオレと一緒にどうぞ。勿論、Parisならその方が良いが、他にやることがあるでしょう。
2010年1月〜2月のどこかで再読。