カイルの森 (角川文庫 き 9-131)
- 角川書店(角川グループパブリッシング) (2010年3月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (152ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041673768
感想・レビュー・書評
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詩以外の銀色夏生の作品は初めてでした。
森の園芸師少年カイルと、妖精達とのふわふわとした会話を中心
に物語が進んでいきます。やはり随所にちりばめられた詩と、物語
が織りなす世界は詩人銀色夏生のものでした。
人はだれでもが、自分でしかありえない。
どんなに近づいても、他の人にはなれない。
だから、のぞきこむ瞳の奥に、
わかりあえると思える何かを見つけた時、
あんなにもうれしいんだね。
人の悪意を取り払って、善良なる部分のみが残れるわけではない。
悪意もまた自分自身なのだから。
森の深くに捨てられた悪意はいつのまにか集まり、森を壊し人々を
襲った。
集められた悪意は真ん中に悲しみがあり、その悲しみを癒すことが
できた時、悪意は元へ戻り、森は再び生き返る。
白い表紙に銀色の文字の装丁も綺麗なファンタジー。折込の森の
地図もちょっとうれしい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
カイルと妖精とのやりとりがほほえましいです。
随所に出てくる詩がきれいだったり、切なかったりでとてもよかったです。
ファンタジーの世界なのにカイルの考えが現実的でおもしろかったです。 -
悪意や憎しみに勝つのは愛と信頼。そんなこと、誰だって聞いたことがあるし、耳新しくも目新しくもないじゃない。でも、園芸家カイルの住む森の物語と詩は、もう一度そのシンプルで大切なメッセージを深く胸に投げかけてくれる。
挿絵はないけれど、読んでいると美しい第七星の森とか妖精たちが、見えてくるようだし、彼らの歌う歌声や笑い声が聞こえてきそう。私はカイルを美少年の姿で想像してたのでとても楽しく読めた。カイルが好きなスフレは婚約者がいて、不倫ではないけどちょっと微妙な間柄だったり、第八星のミッシェル王子がオカマチックでカイルを気に入ってたり…と、さりげなくタブーな愛を包容しているところが、形だけの綺麗事でない大人向けの童話だな、という感じがした。物語の中の詩がとてもよかった。カイルと妖精たちの会話などは哲学問答のようで、短いけれどもとても深いことを語っている物語だとも思う。
今の世の中、たくさんの理不尽があって、ネットとかSNSの普及でたくさんの言葉が飛び交っているけれど、憎しみや悪意で発せられた言葉たちは、いつか大きな魔物となってしまうのではないか?できるだけ、思いやりのある言葉遣いをしたいものだ。
言葉は口から出たらどこかへ消えてしまうのではなくエネルギーとして残っているというイメージが強く残った。 -
以前詩集やエッセイも読んだことのある、写真や詩・エッセイなど
多方面の著書を出されている銀色夏生先生の中では数少ない
「物語」。
結構銀色先生の詩などは好きだったので読んでみました。
うん、さすが詩人というか、言葉選びがとても綺麗で良い!
お話もとても良いです。
ちょっとしゃべり方の似ている登場人物がいて台詞で混乱をやや
したのと、クライマックスがあっさりすぎたので★-1ですが、
お話や文章は物凄く好みで大好き!
特に、「たまご王子」凄く気に入りました(笑)。
他にも「物語」も何冊か出ているようなので、気になります。 -
優しい気持ちにさせてくれる一冊でした。
詩とともに綴られる、美しいファンタジーの世界に入り込めば、悲しいときや辛いときにきっと心が癒されるはず。 -
心がきれいになりそうな本。主人公の住む星の自然の描写も美しい。ところどころ哲学的。
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短編だけど、やさしい気持ちになれた気がする。
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銀色夏生さんの詩集は、中学生の時クラスでとても流行ってて、今でも実家に何冊かあります。
歌手デビュー前の森高千里さんがモデルをしている本が一番好きだったなあー
今回この本を偶然見つけて「夏生さんなんて懐かしい~!!!」と思わず手に取りました。
大人の童話でした。
汚れた大人になった私(涙)は、あの頃のように純粋に心打たれたりするほどの感動はできなかったけど、ほっこり温かい気持ちになれました。 -
あの人の目を初めて見た時
深い静けさに包まれた
森の中の瞳
まわりが森になったよう
それからずっと
森の中にいる
***
真っ白な下地に銀色の文字で書かれた表紙が素敵です。
なぜだか分からないけれど、物語の余韻がすごい。最初はとっつきにくく感じていたのに、いつのまにか取り込まれてしまっていました。不思議な話。
散文と詩が交互に入った物語で、美しい星を舞台にしたファンタジーです。優しく綺麗な言葉を使うカイルと、それより少し率直に彼の気持ちを表す詩。上に書いたのは、最初カイルが恋に落ちるシーンです。
願わくばカイルの叶わぬ恋に話の重点をおいてくれたら、もっと良かったなあと個人的には思いました。 -
自然の描写がすごくキレイで、頭の中で想像するとスゴイ美しい世界が広がりました(人´Д`*).+゚.
世界観が美しく、それに出てくるカイルに魅力されます。たまには、こんな優しい物語読むのもいいですね☆ -
ファンタジーはあまり読まないけれど、読みやすかったです。
話がすっきりしています。
すっきりしているのに、文章から溢れる自然の風景は広大でした。
想像してわくわくします。
愛とは!みたいなのが根本にあって、私も、おお、そうか!なるほど!と少し学んだ気持ちになりました。 -
絵本のようにきらきらした素敵な世界観をもった一冊でした。ファンタジーな設定に溺れることのない、優しく響く言葉の数々に圧倒されました。愛するという感情のなんと単純で、難しくて、壮大なことか。
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始め、第七星とか・・第八だとか・・ファンタジーの世界に、ついていけませんでした。
後半になって、主人公カイルと住民たちが、森を守る為、魔物(人の中にある、悪意や憎しみ)との戦いをしていくくだりで・・
こういう展開を、以前も何回か読んでいたことに、気づきました。
この本だったか、他かはわかりませんが・・悪意や憎しみに打ち勝つのは・・愛!・・
やさしさや思いやりや感謝の気持ちなんだと・・私たちに知らせてくれている。
子ども向けのお話にありがちな展開ですが、大人になった私たちは、忘れてしまっていますので・・
何度でも繰り返し、読んでいかなければと、思います!! -
「カイル。憎しみに対して、戦う武器は憎しみじゃない」主人公カイルの父は言う。愛すること。愛の力。愛するというきもち。きらめいた世界の中で、透明な言葉になって届いてくるそれらを、まっさらな心で受け止めたとき、世界が美しく見えてくる。つらい現実にさらされて傷ついたとき読むと涙が出てくるような優しい物語。
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悪意ある言葉に打ち勝つ術は…愛。
優しい言葉が飛び交う物語。
台詞が大部分を占めている。
情景描写はほとんどないが、森の木漏れ日や草木の匂いを漠然と感じられる。 -
どろどろした感情は、愛をもって制す
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評判が良かったので期待しすぎて読んでしまった。
ファンタジーに多少現実が混じったような物語。
でも「もののけ姫」とか村上春樹の
「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」の
世界の終わり側の世界とか
いろいろな話の良いとこを集めましたって感じがして
それほど感動も出来なかった。魔物を倒す手段も創造性が
全くないし。でもあえて簡単な物語、簡単な結末で
たくさんの読者に伝えたいものがあったのかなとも思った。
読んで損はない?かなー。繰り返し読もうとは思わなかった。 -
大好きな本であり、バイブルの1つでもある。
読むだけで優しい気持ちになれる本。
恋をして苦しい気持ちになった時、人間関係で悩みを持った時、
この本をそっと開く。
登場人物の軽快な会話の1つ1つの中に心に響くフレーズが潜んでいる。
また、夏生さんの書く詩が暖かい。
これからも何度も読んでいきたい1冊。 -
物語、
というか、銀色さんの考えているいろんなことを物語の形にしてつめこんだ直球のメッセージですね。