本格ミステリー館 (角川文庫 し 9-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041682036

感想・レビュー・書評

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  • 綾辻行人氏がデビューして以来、新本格というムーヴメントが勃発し、講談社を中心に現代に黄金時代の本格推理小説を蘇らせた作家たちが数多く生まれた。本作はいわばそのムーヴメントに精力的に携わった島田氏とムーヴメントの起爆剤となった綾辻が当時新本格が第2世代へ移行しつつある時に「本格とは何か?」について語り合った対談集である。
    内容に関しては後日折に触れ、本格について語られる際に引用されるエピソードがふんだんに盛り込まれている。そういう意味からもかなり本格ミステリシーンにおいて以後羅針盤的役割を担うものといえるのではないだろうか。
    本格に対し、渇望感を抱いていた島田氏と平成の本格作家である綾辻氏との温度差は結構あり、両者の中で対立する部分もあり、面白い。特に島田氏はかつて書評子たちにさんざん叩かれてきたことに起因しているのか、かなり極論を多用する。この辺が特に危うく、日本人を簡単にカテゴライズしようと懸命である。
    それに対し綾辻氏はまだ明確に定義は出来ないものの、漠とした何かを持っており、島田氏の極論に対し、かなりニュートラルに対応する。
    島田氏の説には特に日本人論など絡めて興味深い部分はあるものの、極端すぎて素直に頷けない部分が多々あった。狂人の如く、時々論理が飛躍するのも彼の悪い癖である。
    島田氏の「前半の幻想性、後半の論理性」という本格ミステリの括りは綾辻氏が危惧して「前半の大風呂敷から後半のスケールダウン」を招くという意見には大いに賛成である。巨人が巨人であるが故に求めるレベルが高すぎるというのが両者の間には隔たりとして存在する。ジャンル化が無意味であるとの意見から考えれば「~とは何か?」と定義付けするのははっきりいって終わりのない戦いである。
    面白くはあったが、これを鵜呑みするのが読者の仕事ではない。これを読み、何を考えるのか、それが大事なのだ。

  • 挫折。途中でどうしても読めなくなった。こんなの初めて。読んでも読んでも、文章が頭に入ってこない。おもしろくない。もっとノーテンキにミステリを楽しんでいたい私には難しすぎた。失礼な感想でごめんなさい。

  • はしがき

    プロムナード
     島田荘司、本格ミステリー論を語る
     論理性と情動性、幻想性とリアリズム
     本格ミステリーと本格推理の違いは何か
     本格ミステリーには、まだ空きがある

    1F──幻想階
    第1の部屋
     「器」のミステリー
     定義の問題
     本格ミステリーのスウィート・スポット
     幻想小説を書く作家的資質
     島田荘司流の模倣は危険?
     創作上のルール
     叙述トリックと意外性
     「本格推理」と「本格ミステリー」
     デジタルな文体とアナログな文体
     高木彬光作品の幻想性
     ミステリーの原点へ

    第2の部屋
     社会派と本格
     「遊び」の文学を生む時代
     初めてのミステリー執筆体験
     子供時代の共通点
     実作者の眼で作品を見る苦しみ
     創作中のスリル

    第3の部屋
     「人間を描く」とは
     優先順位の問題
     多様な価値判断があってもいい
     「奇想」をはぐくむ
     御手洗潔イコール島田荘司?
     作中人物は作家自身?
     名探偵への想い
     価値の曖昧性

    2F──奇想階
    第4の部屋
     無邪気でいたい
     短命の家系だから
     暗い心根
     悟りの境地

    第5の部屋
     トリックのオリジナリティー
     トリックの著作権管理の問題
     演出のセンス
     映像化不可能なトリック
     アニメ文化の影響?

    第6の部屋
     日本人はパズル好き
     『翼ある闇』について
     ファンレターをもらうこと

    3F──伝説階
    第7の部屋
     島田・綾辻、出会いの一瞬
     『はやぶさ』が売れた頃
     京都は縁のある街
     最初は体験でしか書けなかった
     ペンネーム誕生の舞台裏
    第8の部屋
     幻のレコード
     ラジオ番組制作の経験が役に立った
     作家冥利に尽きたこと
     ミステリー作家は音楽好き
     井上夢人の暗い少年時代

    第9の部屋
     京大ミステリ研
     『十角館の殺人』ができるまで
     新本格作家群の先陣を切って
     賞について
     苦難の時代
     たかがミステリー、されど……
     ミステリーと文学
     国産ミステリーの輸出
     新本格の行方
     あとがき

    文庫版後書き 島田荘司
    文庫版あとがき 綾辻行人
    解説 笠井潔
      編集協力・山前譲

  • 島田・綾辻、両氏によるミステリ論が聞けて面白いナリ。
    ただ、"ストーリー物"じゃ無いんで、ミーはすぐ眠くなって、なかなか読み終わらなかったナリ。

  • 春日部 古本市場

  • 綾辻と島田。二人の鬼才は何を語るのか。ミステリーについて語り倒す。

  • 2010年11月9日読了。島田荘司と、彼が見出した(とされる)新本格の旗手・綾辻行人との、本格ミステリーを巡る対談集。巻末の後書きにもある通り独自の論を展開する島田氏に対し、綾辻氏が根源的な違和感を抱きつつ個別部分に反論していく、という展開。新本格がブームを迎えていた当時、本書での議論は「新本格を認めず、ミステリーに幻想を抱く島田氏の攻撃的物言い」がさらに攻撃の的になったのだとか・・・。「幻想」と「論理」の対立だとか、「人間を描くことの重要性」を説くなど興味深いトピックも多いのだが、そもそも「幻想」「論理」「人間描写」とは何なのか?そのような小説が理想といえるのか?というスタート地点についての共通理解がないために、机上の空論が飛び交うだけの空しい議論になってしまっている印象・・・。別の機会に仕切りなおしはされたのだろうか?

  • 「本格ミステリー館にて」のほうを持っているけど、イメージがないのでこちらで。
    しかしなんなんでしょうね、この対談本は。島田先生も綾辻も自分たちで
    言っているけど、お互い自分の自慢と気持ち悪い褒め合いで終始している…
    これはねーひとえにやっぱり島田先生のミスリードだよね…。自分の歴史を
    語りたいのはよくわかるけど、綾辻完全に引いてるもんな…。
    なんつーかお笑い芸人が、人気は今しかないから!! とあわてて自分たちの
    エッセイ集出してしまう感覚に似ている、と感じました。作家は作品出して
    読者に判断してもらうだけでいい…よな。
    おもしろかったらなんでもいいんだけどさ。

  •  読んだ限りでは、これが後に物議をかもし出すようなものかなぁ、と思った。
     面白いけどね。

  • それなりにおもしろい。

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著者プロフィール

1948年広島県福山市生まれ。武蔵野美術大学卒。1981年『占星術殺人事件』で衝撃のデビューを果たして以来、『斜め屋敷の犯罪』『異邦の騎士』など50作以上に登場する探偵・御手洗潔シリーズや、『奇想、天を動かす』などの刑事・吉敷竹史シリーズで圧倒的な人気を博す。2008年、日本ミステリー文学大賞を受賞。また「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」や「本格ミステリー『ベテラン新人』発掘プロジェクト」、台湾にて中国語による「金車・島田荘司推理小説賞」の選考委員を務めるなど、国境を越えた新しい才能の発掘と育成に尽力。日本の本格ミステリーの海外への翻訳や紹介にも積極的に取り組んでいる。

「2023年 『ローズマリーのあまき香り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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