ロッキン・ホース・バレリーナ (角川文庫 お 18-15)

著者 :
  • 角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041847169

作品紹介・あらすじ

十八歳で夏でバカだった!バイト暮らしの耕助は、仲間のザジ、バンとパンクバンド「野原」を組み、生まれて初めてのライブツアーへ出かけた。行く先々でグルーピーを引っかける予定が、謎のゴスロリ娘のヒッチハイクで旅は思わぬ方向へ。彼女、七曲町子の正体は?ツアーファイナルは成功するのか?耕助と町子の恋の行方は?爆笑と感動、大槻ケンヂの青春ロック長編小説。忘れることなんて絶対にできない最高に熱かったあの季節。

感想・レビュー・書評

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  • 大槻ケンヂさんにこういう小説を書かせると天下一品ですね。18才で夏でバカ。そんな彼らが織り成すロードムービー的な小説です。

    この小説と、これから後で紹介する雨宮処凛の『バンギャル ア ゴーゴー』。この二つの作品を読んでいて本当に思う。
    『なぜ、僕はミュージシャンにならなかったのだろうか?』
    と。いまさら後悔しても遅いんだけれども…。物語は18歳で夏でバカ。の耕助がバンドを組んで途中で拾った七曲町子というゴスロリ系の一見不思議ちゃん的な女の子と演奏機材を軽バンにつんで町から町へ流れていく、という話です。

    でも、僕が一番恐ろしいなと思ったのは、作中に出てくるプロデューサーの彼らに対するこの発言です。いわく、
    『バンドの才能が続くのは2年だ。100万枚売るやつだけが商品でそれ以外はばっさり切り捨てる。仮に売れなくても会社には利益だけが残る。でも、音楽を仕事にするやつは一生だ。わかるか、2年と一生。これが音楽を奏でるものとそれを商売にする人間との差なんだよ』
    ということをいっていたのが、本当に衝撃的でした。

    読んでいてぞっとしましたね。でも、このプロデューサーも、こういう風になるまではいろいろありまして、それは自分で確認してほしいんですけど、いい物語だと思いますよ。

  • 「十八歳で夏でバカだった」というキャッチフレーズそのものな作品。浅田弘幸氏のイラストもイイネ♪

    コミカルで勢いのある展開で、面白くってドンドン読み進めてしまった。単なるバンド小説で終わってしまいそうな内容だけど、後半から夢か金かの葛藤も描かれている。そこが今までの青春小説ろは違って奥が深い。

    読んでて何となく懐かしい気分になる一冊。

  • 町子が愛しくてたまんない。
    登場人物みんな大人になれないロックバカ。大好き!!!

    挿し絵が三原ミツカズさんなとこも憎いです!!

  • 作者はあとがきに、
    ①憧れのロックバンドのツアー車に乗り込んで一緒に旅してみたいと考えている女の子。
    ②今現在バンドをやっている、あるいはやってみたいな~と考えている男の子。
    ③かつてのバンド少年、ところが気付いてみたら「えー? ○○さんて昔バンドやってたんスか?し~んじられない!」と若いもんにキッパリ言われてしまったロック・オヤジの皆さん。
    (略)~に集中的に読んでもらったと思って書いた物語です。

    と書いているが、作者自体この物語の多面的なすばらしさに気付いていないんじゃないかと思った。私だっておとなしくて自傷的でUKロックしか聴いていなくて、バンドなんかやってる同世代の子を宇宙人でも見るような感じで見ていたけれど、この物語はとても身に沁みるのだ。主人公や、そうではない人々と一緒に何回読んでも笑ったり泣いたりする。

    もう夢なんて持っていない人。
    愛は本当にあるはずがないと思っている人。
    なんていうか、日本には本当のものなんてないと思っている人。

    (性的)虐待されている子。
    リストカットしている子。
    自分の体なんて他人のためのセックスのためにあると思ってる子。

    いろんな人にこの小説は優しく、諭してくれると思う・・・だけじゃなくて、笑わせてくれる。

    書いたそれらのいろんな要素に本人が気付いていないからこそ、この小説は本当にいい。

  • 一気に読んでしまいました。
    やっぱりRockはいいなぁと思わせてくれる一冊です。

  • とってもダサい感想だけどまちことの関係は私たちに似ている。女の闇をみすぎて純粋に恋愛をできなくなった男と自分を肯定するために性交し手に入らないものを追い求める女。サブカル小説だけでは表せない素晴らしい作品だった。

  • 初大槻ケンヂ。バンドは聞いたことないなと思ったらさよなら絶望先生のOPのひとだった。そして小説も勢いがあって軽く爽やかでとても良かった。テンポ良く進み、アニメのように、メンバー彼らの若さとロックへの熱情溢れる会話、舞台袖、観客との掛け合い、表情、バンドの活気、怒り、動揺、一コマ一コマが目に浮かぶ。ロックをやってた人ならでは、「ノッてるとき」と「ノッてないとき」ライブの雰囲気がすごくいい。

    p98
    「ないの!?ファックのいろはがわかってないコだねぇ。顔わかんなきゃ怖くて連絡できないよねぇ。どんなブサイクでもプリクラならそれなりに写るのにさ。ツメ甘いよこのコ」
    この言葉だけで町子がどんなろくでもないおっかけライフを送って来たのかわかろうというものだ。

    p108
    もうアイコンタクトはいらなかった。
    耕助の意図を言葉なく察知したバンとザジが合わせた。アカペラが終わり、カウント、野原が一斉に音を重ねた。つきはなすように疾走。引っぱり込むように全力。客たちを音の手のひらに乗せてみせた。

    p118
    お見事っ。よもや名古屋のライブハウス楽屋でマッチョ・ドラゴン藤波辰爾の必殺技が見られるとは。いつの間にか耕助以外全てのバンドマンが立ち上がっていた。町子に対しておしみない拍手を送り始めた。

  • オーケン。映画とエロと音楽が好きな本も書いて歌ってるおじさん。
    今もう56歳なんだってね。

    オーケンの小説ってこっちが赤面するような恥ずかしいノリも挟まるけど、毎回勢いに乗せられて読み切ってしまう。野原の音楽みたいな、ひたすら立て続けていくスタイルで気付くと完走しちゃうんだよな。


    町子の許す場面だけ疑問が浮かんだけど、あとがきその2で本人が同じことを書いてたので、その後の町子がよりよい方向に進んでることを信じてる。

  • 80年代90年代のノリとでもいうか「バンド、といったら女とセックスが付きもの」的な、そんな世界観を根底に、おバカなノリで進む小説。所謂「ライトノベル」とも違う、「ちょっとサブカル感含む軽いノリの小説」とでも言えるようなこのオーケン文章、いいよね。

  • 大槻ケンヂの本は例外なく傑作だ。
    ・・・が、しかし、この本は「傑作」ではなく「大傑作」だと思います!!

    大槻ケンヂってミュージシャンなのに、視覚的にも非常にすぐれていると思う。読んでいて情景が目に浮かぶようです。

    いろいろな読み方ができると思うけど、自分は「許しと再生」というのを読み取りました。心が洗われる一冊です。

    自分が洋楽を聴かないので、随所に出てくるさまざまな曲がイメージできないのだけど(もちろんたぶん聴いたことのある曲なのだろうけれど、タイトルと結びつかない)、それでも、充分に楽しめました。
    でも、もしこの本に出てくる曲ばかりを集めたCDを作ってくれたら、すごくいい「入門CD」になりそうなんだけどなー。やってくれませんかね? もちろん「野原」の曲も入れてほしい・・・!(^o^)/

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著者プロフィール

1966年東京都生まれ。82年ロックバンド「筋肉少女帯」ボーカルとしてデビュー。その後もロックバンド「特撮」でも活動。その特異なキャラクターは音楽だけにとどまらず、映画、テレビ、小説やエッセイなど多岐にわたる分野で人気を集める。著作「くるぐる使い」「のの子の復讐ジグジグ」は2年連続で星雲賞を受賞。また『グミ・チョコレート・パイン』シリーズのほか『ロッキン・ホース・バレリーナ』『縫製人間ヌイグルマー』『いつか春の日のどっかの町へ』など著書多数。

「2022年 『夜の夢こそまこと 人間椅子小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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