マエストロ (角川文庫)

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感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041959046

感想・レビュー・書評

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  • 予想を裏切られる展開もあったけど、最後は思っているような前向きになれる作品でした。

    「天才の隣には、ちゃんとした大人が必要だ」的なことを聞いたことがあり、印象に残っています。

    天才的な才能だけでは華やかな表舞台に出るのは難しく、くすぶっている人がいる傍らで、才能はそれなりにでも表舞台で活躍する人もいるのではないでしょうか(誰とか分かりませんが)

    マエストロの主人公は後者であり、なんなら「女でのし上がった」人物。
    あまり共感を得にくいタイプなのに、彼女の生い立ちや音楽への苦悩・崖っぷちを綱渡りしている様が美しい音楽と共に描かれ、なんとか事態を打開してハッピーエンドにならないかな!と思いながら、するすると読んでいけます。

    後半、バイオリン修復屋のおっさん語りになる場面ではテンポに躓きましたが、最後はテンポよく事態が展開していきます。

    悲しい事態もありますが、最後は気持ちよく読み終えました。

    作中に横領事件があります。
    ちょっとした誤解や話し合いができないばかりに事態が大事になっていく様が描かれており、事件てこうやって大きくなっていくんだろうなぁと何だかやるせない気持ちになりました。
    誰も悪くない、悪い人はいない、けど知らなかったことは罪なんですね。

  • ロイヤルダイヤモンドの広告塔として演奏活動を行う美貌のヴァイオリニスト・神野瑞恵。
    使っている明器グァルネリの調子が悪くなり、楽器商・マイヤー商会の柄沢の勧めで“称号なきマイスター”と呼ばれる保坂を訪ねる。
    そこで素性はわからないが素晴らしい音色を奏でるヴァイオリンに出会うー
    恩師の薦めで始めた国立大学の非常勤講師の場でひとりの学生に出会い無くした情熱を思い出した頃、ある事件が起きー
    演奏は一流半と評されていた瑞恵が陥った罠と彼女の力強い再生を鮮やかに描いた長編サスペンス。


    音楽業界ってそうなのね-
    スポンサーとの関係はさもありなんだけど(今時そんなリスキーな関係は持たなくて、クリーンな気もするけど)演奏家と楽器商とのアレコレとか、個人で取ってる弟子と学校の学生に対する取るべき態度とか、時代で変わってきてると思うけど。


    ちょっとした意趣返しのいたずらのはずが、“その世界のルール”を知らない人間の行動が重なって起きた予想外な事件-


    昔のライバル・孝子が良い人でよかった-
    良い人というか音楽人だから、かな?
    も少しストレートに講師として、を伝えられてたなら…変わったかな-
    変身の為には事件になってよかったのかな-


    柄沢の妹がいちばんのとばっちり受けた被害者じゃないの…と悲しくなりました。
    贈賄事件の被告人と自殺者、世間的に身内にいるとどちらが縁続きになりたく無いのか…
    その後が描かれなかった人々、柄沢の妹や事件にしてしまった学生も強く生きていて欲しいと思いました。

  • 私はヴァイオリンを弾くのでこの本は結構面白く読めましたが一般の方が読むともうひとつなんとちゃうかなあと思いますね。

  • 殺人が起きないミステリーを書きたかったと作者本人が言っていた通り、バイオリンに纏わるミステリ。
    ミステリー要素はかなり薄めですが、これはこれで面白い。
    楽器屋と演奏家ってこんな繋がりがあるのか、と素直にビックリ。
    音楽の世界って不思議。

    主人公が天才的な演奏者ではなかった所が何だか好感が持てる。

  • 2019.2.2(土)¥100(-15%引き)+税。
    2019.4.2(火)。

  • 素性があやふやなヴァイオリンをめぐる、殺人のような事件が起こらないミステリーと言えばいいか?
    ミステリー要素が出てくるまで少し長いと感じたけど、後にちゃんと読んでおいてよかったと思った。
    哀しさ、苦しさ、切なさが各登場人物から感じられる。
    ヴァイオリンについての知識や音楽界の裏側も垣間見れておもしろかった。
    もう少し重厚さがあるとよかったかな。あっさりした感もした。

  • 煮え切らないバイオリニストと、思いつめたバイオリン製作者。そして、悲しい楽器商。活きるということは、何かを捨てることか、それともそれを抜けたところに何かがあるのか・・・。できれば、あそこまで悲しいことがなくても突き抜けた人生を歩めればよいのに、と思った。

  • 作者が「死体の転がらないミステリを書いてみたかった」というように、
    殺人事件も謎解きもない、ヴァイオリンに関わる人たちのミステリーである。
    演奏は一流半と言われる美貌のヴァイオリニスト、パトロン、楽器商、職人、など様々な人たちの様々な感情が絡みながら起きる事件が、この作者独特の空気で綴られていて、やはり引き込まれる。

  • 単行本「変身」と同じ内容。
    加筆、修正してあるとのこと。
    文庫版あとがき
    池上冬樹による解説
    が加わっている。

    バイオリン演奏者の物語。
    大学での講義が引き金に、職人のちょっとしたいたずらが
    急展開する。
    楽器店の担当者が亡くなるのはちょっと辛いかも。

    バイオリンの種類、楽曲がたくさんでてくる。
    ヴィヴァルディ
    ベートーベン
    オンブラマイフ
    コレルリ
    チャイコフスキー
    ラファリア
    トリスタンとイゾルデ
    クロイッツエルソナタ
    ブラームス

    ピエトログアルネリ
    グアルネリデルジェス
    ストラディヴァリ
    エギディウスクロッツ
    アマティ
    チエリーニ
    ルネムイエール
    ランドルフィ

  • 逗子図書館で読む。この作家はうまい。無理なく読めます。登場人物の類型化は、山崎豊子さんを連想します。鼻につく人もいるでしょうが、これぐらいが読みやすいです。

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著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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