ブルーもしくはブルー (角川文庫 や 28-2)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041970027

感想・レビュー・書評

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  • 「あの時、ああしていれば……」と
    過去の選択を後悔したり、
    別の人生を思い描くことが誰にでもあると思う。

    もう一方の選択をしたドッペルゲンガーに会って
    選ばなかった人生を体験できるとしたら……
    創作ならではのありえない設定だからこそ
    人間の本性が浮き彫りになるような、
    とても考えさせられる作品だった。

    とんでもない企てを計画して
    非日常に飛び込む前のワクワク感からの
    どんでん返し、狂気、絶望、怒り、
    そして驚きの結末……
    ジェットコースターのようなストーリー展開に
    思わず一気読みしてしまいたくなる。

    “余るほどの自由があれば
    心の拠り所が欲しくなり、
    強く愛されればそれは束縛に感じる。”

    どっちを選んだ蒼子も
    もう一方の蒼子を羨んでしまう所や、
    どっちの蒼子の人生も
    最後までままならない所なんかは
    「そんなもんだよなぁ」と心地よい諦念を抱かせ、
    ドッペルゲンガーのいない
    現実世界を生きる読者にとっては
    救いのようにも感じられた。

  • 広告代理店勤務のスマートな男性と結婚し、東京で暮らす佐々木蒼子。六回目の結婚記念日は年下の不倫相手と旅行中…そんな蒼子が自分そっくりの〈蒼子B〉と出くわした。
    〈蒼子B〉は蒼子と過去の記憶をすっかり共有し、蒼子の昔の恋人である河見と結婚して、真面目な主婦生活を送っていた。
    〈蒼子B〉は別人なのかドッペルゲンガーなのかそれとも別の何かなのか。
    そんな中ある日2人は、1ヶ月だけ入れ替わって生活してみることを決意した。

    10年くらい前にこれのドラマ化したのがちょっと流行ってたなぁ、と思い出しつつ読んでみた。
    ある意味ホラー、ある意味ミステリ、そしてある意味教訓のあるラブストーリー。色んな要素があって、そして何より先が気になって一気に読んだ。

    人間誰しも、あの時の選択が違っていたらどんな人生になっていたのだろう?と考えることがあるはずで、この物語の蒼子は、結婚するときに相手に迷い、そして結婚後、選ばなかった方の相手を選べば良かったと後悔していて、そんな時目の前に現れた自分そっくりな〈蒼子B〉が、自分が選ばなかった方の相手と結婚して生活していることを知る。
    そして蒼子は〈蒼子B〉に生活を交換してみることを提案するのだけど、その生活が2人の立場をだんだんと変えていく。
    選ばなかった人生に対する憧憬を抱える人も多いだろうけれど、それは選ばなかったから輝いて見えるのかもしれない。結果を知り得ないからこそ。
    隣の芝生は青い、ってよく言うけれど、その芝生を自分のものにしてみたら、そんなに青くもないことに気づくのかもしれない。

    読み方や感性によって感じることも変わりそうな気がするけど、私は怖かった。欲望というのは際限がなく、自分の望みを叶えるためなら誰かが犠牲になっても構わないと思ってしまうこともあるということが。そういう恐ろしさが、自分の中にも眠っていることを否定出来ない。

    万事うまく進んで、何もかもが自分の思う通りになる人生なんて存在しない、ということかな。どんな道を選択したとしても。

  • 10代の頃に読み、今回再読

    10代の頃に読んだ時は、自分の人生に大きな分岐点もあまり思いつかず、隣の芝生は青いのかな程度の感想でした
    自分が蒼子の年齢に追いついた今、改めて読むと、もう一つの人生や結婚生活に対する価値観など、自分の中で考えられるところが増えました

    以前読んだ時は蒼子自身の問題に目がいきがちでしたが、今回は蒼子の環境に思うところが多かったです

    自分の置かれた環境に納得できず、もう1人の自分と入れ替わる計画を立てる蒼子
    現実には多分ありえないことだけど、現状を打破しようと行動する蒼子が頼もしく見えました

    柚木麻子さんの解説が、私が感じたことと近く嬉しかったです

  • ドッペルゲンガーの話をリアルに表現していて、あっという間に読んでしまった。

  • こわーい。
    結婚生活ってホラーなのかしら。

    人生には「後悔」が付き物なんだなー。っていうことを、作品を読んで改めて思いました。

    あの時あの人と出会わなければ。とか、あの時あの人と別れなければ。とか、出会いと別れには必ずどこかで「後悔」が付きまとうんですよね。

    私は、「他の人と結婚してたら。」なんてことは今のところ思ったことはないので、とりあえずは自分が選んだ道が間違いではなかったと信じてはいるのですが。

    でも、もし、この物語のように、どこかで私とそっくりな人が生活していたら。そしてその人が、私の何倍も何百倍も幸せそうだったら。なんて考えると、蒼子の気持ちも分かるような気がします。

    でも、だからって、自分のこの「今」を否定するのは、ちょっと悲しいなー。という気がしました。

    今よりいい人生なんて絶対どこにもないはず。って思いたいですよね。

  • ないものねだりなのだろうかと、蒼子は思った。余るほどの自由があれば心の拠り所が欲しくなり、強く愛されればそれは束縛に感じる。

    誰かの役にたつこと。誰かに喜んでもらうこと。それは、自分に喜びとなって返ってくる。親切が親切となって返ってくるように。

    「自由になれたはずだった。だけどね、本当に自由になったとたん、私、死ぬほどつらかったの」

  • あの時に違う選択をしていたら…
    蒼子のように、誰しも一度はこんな想いが脳裏によぎる事があるはず。

    もし次にそう強く思った時には、この本を"戒め"にしようと思った。

    なんだか子どもの頃に読んだ童話や道徳の教科書みたい。
    読んでみてどう思った?
    …って友人たちと机をコの字に並べて熱い議論を交わしたい。笑

    選ばなかった人生に想いを馳せるよりも
    選び取った人生を大切に、自分を幸せにしてあげたい!って思えた物語でした。

  • 2020年4月21日読了。愛のない夫と愛人との関係に疲れた蒼子が博多の街で出会ったのは、あり得たはずのもう一つの人生を生きるもう一人の自分だった…。「人生をやり直せたら」「もう一人の自分と入れ替わったら」というのは古今より様々なフィクションが扱ってきた、悪く言えば手垢のついた素材だと思うが、どうオチを付けるのかが特に男性である私には予測がつきにくく意外なサスペンスフルな展開にもなり、「幸せって結局なんなんだろう」と考えさせられる苦さもあって最後まで一気に読んでしまった。「人生の重要な決断」が結婚相手選びに集約してしまうのはなんだかなーという気もするが、「どの会社を選ぶか」よりは人生を左右する決断だよな。あとこの人男選ぶ目なさすぎじゃないか…?ちゃんとした相手を選んでいればこんなことにならなかったのに。

  • もうひとりの自分がいたら。
    むむ、あたしは会いたくないな。すべてを見透かされているようで居心地悪そうやもん。
    あの時、別の選択をしていたら別の人生があったのかもと思う気持ちはわからなくもないが、たいして変わらないもんじゃないかな。
    いつも自分は正しい選択をしているのだから。

  • 面白かった!あまりあらすじを知らずに買ったが、これは何も知らずに読む方が衝撃が強く、より一層楽しめると思った。久々に、読んでいてワクワクしてページを捲る手が止まらない本に出会った。2人の主人公が入れ替わるというありきたりな話にも見えるが、同性、瓜二つ、異なった地位と収入、正反対な旦那の性格という相反する要素があり飽きなかった。
    ファンタジー要素が入っているが、シリアスな部分の方が強いため、あまり非現実味を感じなかった。河見が、他県の人が考える九州男児すぎて読んでいて面白かった。時代もあるのだろうが、今時こんな男尊女卑まみれの男はいない。だが、結婚するのは佐々木か河見かと聞かれるとかなり悩む。

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著者プロフィール

1987年に『プレミアム・プールの日々』で少女小説家としてデビュー。1992年「パイナップルの彼方」を皮切りに一般の小説へと方向性をシフト。1999年『恋愛中毒』で第20回吉川英治文学新人賞受賞。2001年『プラナリア』で第24回直木賞を受賞。

「2023年 『私たちの金曜日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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