青の炎 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 1687
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041979068

感想・レビュー・書評

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  • あっという間に読み終わった。
    途中でやめることができなくなる、面白さ。

    母と妹を守るため、殺人を犯す主人公。
    完璧な計画であったはずが、次々と綻びがでてきて追いつめられていく。
    第一の殺人は主人公の計画がうまくいってほしいと願っていたが、第二の殺人を決意した辺りから、やっぱり一度罪を犯すと次の犯罪へのハードルはものすごく下がってしまうのだと怖くなった。

    一線を越えた者は転がるように堕ちていく、てことを伝えたかったのかな

  • 貴志祐介第二弾

    ・倒叙推理小説ということで、主人公櫛森秀一の心情描写が細かくはっきり描かれている。秀一の心の機微一つ一つに読んでいるこちらも動かされていく感じで、その緊張感がたまらなかった。

    ・小説のラブシーンは得てして「なんでこんな展開なんねん!」となることが多いが、この作品ではそうはならない。それも主人公の気持ちを痛いほど理解できるからこそ。

    ・ダイナミックな展開はないかもしれないが、それが良いところ。これがダイナミックに展開してたら、「青春さ」が勝って幻滅していた気がする。この青春や若さを描きつつも、くどくならないラインがとても良い。

    悪の教典を読むのが楽しみなってきたぁ

  • 平成29年4月

    なんとなく手に取り、読んでみる。

    超、面白かった。映画になってたんだね。
    一気読みです。

    主人公と母と妹の楽しい生活に母の元夫が住み付き働きもせず、酒ばかり煽って、主人公たちの生活を一変させた。
    いろいろとあって、その元夫を主人公が殺すことを計画する。罪と罰で、殺す側、殺さない側の人がいて、殺す側の人間になる。そして、殺した後は、殺したことを生きている間葛藤する。それを分かっている中で、罪を犯す。
    そして、その後二度目の罪を…。
    そして、その後、それしかないよねって感じで完。

    しかし、二度目の罪は、ちょっと手抜きだね。
    でも、二度目ってそんなもんなのかな。一線を越えた後ってね。

    無敵の大門さんの言葉
    一度火をつけてしまうと、怒りの炎は際限なく燃え広がり、やがては、自分自身をも焼き尽くすることになる。怒りだけはどんなことがあっても抱いちゃいけない。
    悪い人にいいように扱われても、自分の怒りで自滅するよりは、ずっとましな人生だと。

    日本人は、罪と罰のような強迫観念とは無縁だから、完全犯罪の殺人を行うには適しているのではないか。そんなことを考えていたが、殺人者の心を抉るのは、神へのおそれでも、良心でもない、心を締め付けるのは、単なる事実だ。自分が人を殺したという記憶。その記憶からは、一生逃れる事ができない。

    だから人を殺してはいけないとは言えないけど、人を殺すってことは、それだけ自分に返ってくるんだよね。人を殺す事によって、自分をも殺してしまうってこと。

  • 初めての作家さんでした。
    読後感ハンパない....
    家族を守る為に完全犯罪を企てる主人公、うまく行くわけないのはわかっていたけど、後半どんどん辛くなる。彼が悪いわけじゃないんだ。
    主人公に寄り添ってくれた紀子が救い、でも最後の選択が重い....。


  • ただ、ただ読んでいて辛かった。
    それでも、読む手を止められなかった。

    殺人は悪だ。しかし、曽根に対する殺人計画を模索する過程は主人公を応援してしまった。

    しかし、2番目の殺人。かつての親友を殺害するに至る過程は犯罪者心理というものなのか、呆気なかった。その呆気なさも、曽根の時はただ、家族を守りたいという思いだったのに、2度目は自己防衛にもうつり、もう辞めてくれ!と、心の中で叫んだ。

    そして、ラストはやはり、家族への愛。
    「君は悪くないよ」そうも言いきれない。
    殺人事件は悪だから。

    警察、弁護士。社会の仕組みを呪った。
    助けてあげることは出来なかったのだろうか。




  • 倒叙推理小説の青の炎。この本の好きなところは主人公の感情に直接触れられることだ。秀一は殺人という間違った道に進むことになるが、彼を取り巻く環境や、大切な人を守ろうとする姿勢をみると、はっきりとそれが間違った道とは言えなくなってくる。赤い炎が青の炎に変わる瞬間はだれにでもある。秀一たちに幸あれ。

  • なかなかきつい読書体験だった。それだけこの本がよく書けているということだと思う。

    高校生の秀一は、自宅に居座る母の元再婚相手から母と妹を守るためには、この男を殺害するしかないと決心する。自分が犯罪者となって母と妹に辛い思いをさせないためにも完全犯罪を計画する。緻密な計画の元に行われた犯行は一見完全犯罪を成立させたかに思えたが、小さなほころびから第二の犯行を余儀なくされ、悲しい結末へと向かっていく。

    同情できる理由があったとしても犯罪は犯罪であり、何もばれずにめでたしめでたしとなるわけはないのだが、読みながら完全犯罪の成立を祈り、秀一を応援し、警察の捜査に緊張する気持ちは、我ながら倒錯していると思う。
    そのような同情できる犯罪者を作り上げ、犯行後に追い詰められる感情までを描いたところが、この作品の良さなのではないかなと思う。

  • なんとなく見つけて買った本

    殺人を犯す側からの視点で書かれた内容だった。

    殺人を犯す高校生の心理描写が細かく書かれていて、だんだん暗く重い気持ちにもなるが、状況がわかりやすく読みやすかった。

    「一度火をつけてしまうと、いかりの炎は際限なく燃え広がり、やがては、自分自身をも焼き尽くす」
    このセリフが印象に残った小説でした。

  • 貴志祐介さんの作品を読むのは、「新世界より」に次いで本作が2作目です。
    本作を読んでいて途中から、う~ん、ちょっとこれは・・・と思い始めたのは、主人公が2つ目の事件を実行しようとしていたときからです。
    彼をこんなふうに殺しても、最初の事件の証拠物が奪われている問題は何も解決しないのにと思ったら、案の定でした。
    罪を重ねるごとに増える苦しみ。
    もし仮に、2つ目の事件で警察の追及を逃れられたとしても、主人公はいつかは破滅の道に行ってしまったのではないかと思いました。

  •  初めて貴志祐介さんの作品を読みました。イメージ的には「ホラー系作家」と思い込んでいたためか今まで敬遠していた部分があるかもしれませんが、「青の炎」は上質なミステリー作品でした。
     もう20年も前に蜷川幸雄の監督・脚本、主演二宮和也で映画化もされてたのですね。
     もし自分が秀一の立場だったら、実行に移すかどうかは別にして、やはり同じことを考えたかもしれません。この作品に似た家庭環境にいて犠牲を強いられている方々が現実社会にも少なからずいると思うとやりきれませんね。
     ただ、どんなに完璧な殺人計画であっても計画通りに実行するのは難しく、ちょっとした綻びから破綻してしまうのだなということは良くわかりました。また、実行した後も良心の呵責に耐えながら生きるということが想像以上に難しいということも理解できたように思います。どんな理由であれ犯罪に手を染めた側に精神的な負担も生まれるということは、この世に「完全犯罪」というものは存在しないかもしれませんね。
     今の世の中では法律で守れないケースも多々あると思いますが、それが改善されて、より人間らしく生きれる社会になることを望みます。

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。京都大学卒。96年『十三番目の人格-ISOLA-』でデビュー。翌年『黒い家』で日本ホラー小説大賞を受賞、ベストセラーとなる。05年『硝子のハンマー』で日本推理作家協会賞、08年『新世界より』で日本SF大賞、10年『悪の教典』で山田風太郎賞を受賞。

「2023年 『梅雨物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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