青の炎 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.87
  • (1764)
  • (2000)
  • (2043)
  • (183)
  • (39)
本棚登録 : 15813
感想 : 1686
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041979068

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 家族を守るための犯罪だったけれど、それを隠すために身勝手な行動になっていくところや、若さ故の視野が狭すぎる主人公に、もっと違う形でやれることがあったのではとやるせない気持ちになりました。

  • 貴志祐介である。
    著者の作品を知る読者なら予想できたことと思う。今回も嫌悪感や悲壮感があふれるのは当然の展開。キツイ。だけども、読むことを止められない。
    このまま静かに終わってほしいと考えていた私は、ページ数がまだ半分ほど残っていることに辟易し、救いを求めて更にページをめくることになった。

    以下ネタバレあり。(備忘録)

    母親が奮起しなかったことには失望する。

    主人公が犯人であり、その計画から犯行に至り、更なる闇へと転落していく様子が描かれる。
    家族の為だった。完全犯罪のはずだった。
    秀一は母と妹を守りたい一心に恐怖に打ち勝ち、一歩前へ進んだ。

    作中に『山月記』『こころ』など、古典文学の引用があり、秀一の心境を引用文に重ねている。正義の為であるが、罪の意識に苛まれ、後悔に苦しみ、一生消えない記憶に打ちのめされる様は、この二作を読んでいるかどうかで、印象が変わるだろう。

    石岡 拓也は秀一の犯罪行為を知り、秀一を強請る。金を工面するために二人は秀一のバイト先であるコンビニで強盗を演出するが、店員である秀一の罠で殺される。
    後に、拓也のポケットから、秀一の犯罪の証拠品が出てくる。彼は本気で秀一を強請るつもりだったのだろうか。もしかすると、証拠品を秀一に返すつもりだったのではないかと、個人的には考えている。

    完全犯罪は失敗に終わった。
    家族、恋人、友人は最後まで彼の味方だった。犯行前は少年法を盾に粋がっていた秀一も、大切な人を不幸にしてしまうであろう自分こそ消えるべきであると考え、被疑者死亡による、事件の迷宮入りを目論む。自分が死ぬことで守るものがあると信じてトラックに突っ込む。

    救いのない物語だ。

    読了。

  • 昔、お母さんが再婚してすぐ別れた人が突然家に転がり込んで傍若無人に振る舞い、お母さんと妹を護る為に櫛森くんがそれを排除するお話。

    櫛森くん、ちと中二っぽいとこもあるけど頭が良く計画を進めていく。
    僅かなことで計画が思い通りにならず...こんな展開になるとは⁉︎

    面白かったです。

  • 本作のようなミステリーを「倒叙推理小説」というのだそうな。まず犯行が行われ、捜査機関が徐々に犯人に迫り、犯行が暴かれていくという、刑事コロンボスタイル。

    それにしても、主人公が追い詰められていく系の小説、苦手だなあ。本作でも、せっかく湘南の海沿いをロードレーサーで疾走するシーンが繰り返し出てきのに、気持ち良さをちっとも味わえなかったし、途中から読むのが苦しかった。最後まで救いがなかったことも不満(まあ、家族や友人達、特に紀子の愛情には癒されたんだけど)。

    ゴールデンウィーク最後に読む小説じゃなかったな。


  • ただ、ただ読んでいて辛かった。
    それでも、読む手を止められなかった。

    殺人は悪だ。しかし、曽根に対する殺人計画を模索する過程は主人公を応援してしまった。

    しかし、2番目の殺人。かつての親友を殺害するに至る過程は犯罪者心理というものなのか、呆気なかった。その呆気なさも、曽根の時はただ、家族を守りたいという思いだったのに、2度目は自己防衛にもうつり、もう辞めてくれ!と、心の中で叫んだ。

    そして、ラストはやはり、家族への愛。
    「君は悪くないよ」そうも言いきれない。
    殺人事件は悪だから。

    警察、弁護士。社会の仕組みを呪った。
    助けてあげることは出来なかったのだろうか。




  • 倒叙推理小説が嫌いだとは思わないけれど、この作品のその
    部分が私の好みより細かくて長くて、読むのが苦痛に感じる
    事がありました。
    単に私には合わなかったという事です。
    秀一に対しては色んな感情を抱きますが、完全犯罪を求めて
    実行した結末がこれではやるせない。
    この小説自体を否定してしまうようですが、殺人以外の方法
    があったのではないかと親としては思ってしまいます。
    子供が不幸になるのは小説とはいえ嫌なんです。

  • 初めて倒叙推理小説を読んだ。

    手に取った時はただの青春小説だと思ったが、ただの高校生が緻密に殺人計画を立てそれを実行していくストーリーが読みやすかった。

    淡々と進んでいくストーリーに初めは退屈さを感じていたが、殺人をきっかけに主人公の中で変わる心情の変化を追っていくのが面白かった。

  • 友人に勧められ、初めて手に取った作者の一冊。
    主人公が起こす殺人事件ミステリーなんやけども、なんとも悲しい結末。まぁこれをミステリーというのかは置いといて。

    高校生である主人公櫛森秀一は、学校では優等生で、家では母妹と幸せに暮らしていた。そんな時突如現れた母の元旦那。酒とギャンブルに溺れ、母の金と妹の貯金を使い、家族をめちゃくちゃにしようとする。そんな男に秀一は手を加えてしまう…。

    なんとも秀一は天才肌。殺人における計画を授業や本から自分で考え、練習し完成させる。ほんで誰と喋るのも口が上手いというか、とんでもない知識人。羨ましい。自分は頭フル回転してもあんな口が達者にはなられへんなぁ。殺人に使ったトリックや考え方なんかは難しくてあんまよく分からへんかったけど。

    殺人の動機は、金が欲しいとかカッとなったとかではなく、ただ家族を守りたかった。クズ男のせいで怯えながら生きる母妹、幸せだった生活をめちゃくちゃにする男を葬ってやりたい一心でやってしまった。動機に優しいもないかもしれへんけど、そうするしかなかったんやもんな。
    計画的殺人にあたって、巻き込んだ友人、彼女は、秀一が犯人と分かっても守ろうとしてくれる。嘘をついて彼女にした紀子に、最後は好きなのは嘘だった、って告白するけど、それが嘘やろうな。ほんとは離れたくなかったと思う。

    秀一の最後の覚悟は悲しい。自分が逃げたこともあるけど、秀一は最後まで家族と周りを思う優しい人間やったんやろうな。

    途中のこころや山月記なんかは懐かしい気持ちで呼んでました。あんまり覚えてなかったけど。軽い伏線にはなってたんかな。

  • 骨太の作品、2日間かけて読了
    最近の作品のような衝撃はないけど、楽しんで読めた。

  • 17歳、男子高校生が主人公。
    良き母と明るい妹との平和な3人暮らしを
    邪魔する男を殺害する計画を立てる。
    大切なものを守ることがいつも正しいとは限らないし、不幸な要素を取り除いて残るのが前より不幸でないとも限らない。そんなお話。

    この主人公、大変に頭がキレる。
    ちょっと斜に構える感はあるけれど格好いい。
    そして同じくらいダサい。人間らしさがきちんと出ていて、その辺りの描写がやけにリアルで面白い。

著者プロフィール

1959年大阪生まれ。京都大学卒。96年『十三番目の人格-ISOLA-』でデビュー。翌年『黒い家』で日本ホラー小説大賞を受賞、ベストセラーとなる。05年『硝子のハンマー』で日本推理作家協会賞、08年『新世界より』で日本SF大賞、10年『悪の教典』で山田風太郎賞を受賞。

「2023年 『梅雨物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

貴志祐介の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×