鏡の国のアリス (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042118046

作品紹介・あらすじ

ある日、アリスが部屋の鏡を通り抜けると、そこはおしゃべりする花々やたまごのハンプティ・ダンプティたちが集う不思議な国。そこでアリスは女王を目指すのだが……永遠の名作童話決定版!

感想・レビュー・書評

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  • 「不思議の国のアリス」から半年後のお話。
    子ネコのキティとおしゃべりをするアリスは、暖炉の上の鏡をくぐり抜けて、鏡の国の部屋にかろやかに跳び降りてしまいます。
    鏡の国では文字がさかさま。
    赤と白のキングやクイーン、しゃべるお花たちや、卵のハンプティ・ダンプティに出会います。
    小さな丘から見た田園は、大きなチェス盤みたいに仕切られていました。
    次々と起こる不思議な出来事に想像力をかき立てられ、訳者のあとがきによって、この物語がより鮮やかものになりました。

    「不思議の国」は、子どもの頃何度も繰り返し読んでいたのですが、「鏡の国」は初めて読みました。
    もし子どもの頃にこの本に出会っていても、きっと今のようにに楽しめていなかったかもしれません。
    韻を踏んだ詩の訳が、とても素晴らしく、挿絵も素敵です。

  • 10冊目『鏡の国のアリス』(ルイス・キャロル 著、河合祥一郎 訳、2010年2月、角川書店)
    1865年に刊行された児童文学『不思議の国のアリス』の続編。初刊行は1871年。前作以上にナンセンスな内容だが、物語全体を通して一つのチェスのゲームになっているという構成は驚異的かつ狂気的。訳者の解説が真実であるならば、ルイス・キャロルのロリコンっぷりにはちょっと引く。優れた芸術家というのは多かれ少なかれ特殊な性癖というものを有しているのかも知れないが…。
    「あなたは、どっちの夢だったと思いますか?」

  • 『鏡の国のアリス』は、イギリスの数学者チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン(1832~1898年)が、ルイス・キャロルのペンネームで発表した『不思議の国のアリス』の続篇ともいえる作品である。
    『不思議の国』は、キャロルが、オックスフォード大学在学中に所属していた学寮の学寮長の娘であるアリス・リドルのために即興でつくって聞かせた物語(1862年、アリスが10歳のとき)をもとに、1865年に書籍化されたが、本作品はその後に書かれ、1871年に出版された(アリスは19歳)。
    アリスが、見る見るうちにあどけない少女から、大人の女性に成長していく中で、本作品はもはや実在のアリスのためにというより、自分の心の中にいる小さなアリスのために書かれた、思い出の世界、夢の世界の出来事であったといえ、それは、『不思議の国』ではどんなにサイズが変わってもアリスが少女であることは変わらなかったのに対して、『鏡の国』ではアリスが少女(ポーン)から大人(白のクイーン)へと変貌し、いつの間にかキャロル(アリスをエスコートする白のナイト)に別れを告げてアリス自身の人生を歩み出すというストーリーに、象徴的に表現されている。
    本シリーズは、聖書やシェイクスピアに次ぐ数の言語に翻訳された、世界で最も読まれた児童小説とも言われており、『不思議の国』の白ウサギやチェシャー・ネコ、『鏡の国』の赤のクイーン(「ここではね、同じ場所にとどまるためには、思いっきり走らなければならないの」という赤のクイーンの言葉は、「生物の種は絶えず進化していなければ絶滅する」という進化に関する仮説の比喩に使われ、それは「赤の女王仮説」、「赤の女王効果」などと呼ばれている)や、「トゥイードルダムとトゥイードルディー」、「ハンプティ・ダンプティ」などのマザー・グースからの引用は、あまりにも有名である。
    また、この角川文庫の挿絵は、出版当初の、当時風刺漫画で有名だったジョン・テニエル(1820~1914年)によるものであるが、1907年に英国で作品の著作権が切れて以降、アーサー・ラッカムなど、世界中の挿絵画家によるものが出ている。
    本シリーズは、松岡正剛氏が有名書評「千夜千冊」(1598夜/2016年1月)で取り上げているのだが、この作品自体の評価はなかなか難しい。松岡氏は、「ルイス・キャロルには、むろん何か格別に天才じみたところがあったにちがいありませんが、この人は全体としてはもともと変な子であり、長じても変な大人だったと思います。まずは、そう思ったほうがいいでしょう。・・・案の定、へんてこ世界のアリスを誕生させた。」と書いているのだが、このシリーズは、大人の理屈を持ち込んで読むのではなく、子どもが子どもの感性で楽しむ世界なのだろう。
    また、『鏡の国』については、上述のような、キャロルが、どんどん成長して自分から遠ざかっていく実在のアリスを思いながら執筆したという背景を知ると、大人にとっては、少し異なった印象を与える作品になるのかもしれない。
    (2021年2月了)

  • 『不思議の国のアリス』

    ディズニーが掛けた魔法に頭が少し侵されていたのかもしれない。

  •  子どもの頃に簡略化された絵本を読んだだけだったので、ちゃんと読むのは今回が初めて。実写映画に出てきたジャバウォックなどは、こちらに登場してたのか。
     解説にて、白のナイト=キャロルで大人になっていくアリスを見送るシーンとあり、彼の想いが込められた物語という側面があることを知った。一見とりとめのない物語のようで、全体的にチェスのゲームになっている構成に度肝を抜かれた。
     テニエルのアリスは生き生きとしていて、想像とベストマッチ。

  • 不思議の国からたった半年後のお話だけど、アリスに成長が感じられる。子どもにとっての半年は、濃厚で常に新しい刺激に満ちている。
    ‪大人になった私は捉え方も変化して、子ども時代の自由で純粋な自分に容易にアクセスできなくなった。でも本を開けば、永遠の少女はいつもその中に眠っているということを、思い出すことができる。‬

  • 『不思議の国のアリス』の方が好きかも知れない。
    理由はチェスよりトランプの方が馴染があるからだ。
    アリスがキティを赤の女王だと見立てて遊んでいたのがきっかけとなり、夢に反映されたと言う意味合いがあるのは興味深い。
    猫好きなので、猫で始まって猫で終わっている現実世界はとても和んだ。
    鏡が嫌いな私にとっては複雑な物語だが、神秘的なイメージを持ってはいるので世界観に惹かれる所もある。
    そして解説を読んで作者が”少女の”アリスに幻想を抱いていたと知って少なからず狼狽した。
    正直子供にアリスと名付けるのは可哀想だし気色が悪いと思ってしまった。
    アリスにして見れば20歳差だと小父さんの様な存在にしか思えなかったのではないか。

  • ★3.5
    前作「不思議の国のアリス」以上に言葉遊びが止め処ない!韻を踏む詩に加えて、ちょっとした駄洒落があちらこちらに登場。その楽しさは勿論、見事な翻訳にただただ感心してしまう。そして、アリスが迷い込む“鏡の国”は、“不思議の国”に負けず劣らずの奇想天外っぷり。それなのに、私にチェスの知識がまるでなく、実際の盤上の動きを上手く想像できないのが残念。それでも、テニエルのイラストが相変わらず素敵でうっとり。ただ、訳者あとがきでキャロルの喪失感やアリスとの距離感を知ったことで、少し物悲しい夢のお話に思える。

  • 白騎士がアリスに見送りを頼むシーンが素晴らしくて大好き。
    「あの岡を下り、あの小川を越えれば、そなたは女王になるんじゃ。が、ここで拙者をまず見送ってくれるであろうな?」「長くはかかるまい。ここで待っておって、拙者があの曲がり角についたら、ハンカチを振るのじゃ。すれば拙者も元気づくじゃろうからな」


  • 実写化された映画などを見ているせいでファンタスティックな世界観をイメージしやすいですが、本の中にはそこまでの詳しい描写はありません。
    しかしながら、アリスや出てくる登場人物のセリフ、快いテンポ感からそれらを感じされる名著です。
    また、翻訳者の意地と言いますか、日本語の韻に世界観を壊さずに当てはめた凄さも堪能できます。

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著者プロフィール

ルイス・キャロル (Lewis Carroll, 1832-98)
イギリスの作家。本名Charles Lutwidge Dodgson(チャールズ・ラトウィッジ・ドッドソン)。チェシャー州の牧師の家に生まれ、オックスフォード大学クライスト チャーチ学寮に学び、卒業後、同大学の数学講師となる。『不思議の国のアリス』(1865)、『鏡の国のアリス』(1872)の作者として最もよく知られているが、本来の数学者・論理学者としての、また最初期のアマチュア写真家としての功績も高く評価されている。

「2021年 『鏡の国のアリス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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