青い城 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042179092

作品紹介・あらすじ

貧しい家庭でさびしい日々を送る内気な独身女、ヴァランシーに、以前受診していた医者から手紙が届く。そこには彼女の心臓が危機的状況にあり、余命1年と書かれていた…。悔いのない人生を送ろうと決意した彼女がとった、とんでもない行動とは!?ピリッと辛口のユーモアで彩られた、周到な伏線とどんでん返し。すべての夢見る女性に贈る、心温まる究極のハッピー・エンディング・ストーリー。

感想・レビュー・書評

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  • 赤毛のアンシリーズはかつて夢中になって読んだ。モンゴメリの小説は人物や風景の描写が細部まで綺麗な言葉で描かれていて、どれも心地よく感情移入できて大好きな作品が沢山あった。この「青い城」は最近になって存在を知り読むに至った。登場する人物の描写、風景の美しい言葉の表現、ユーモア、物語の伏線の鮮やかな回収、ラストの大団円、存分に楽しみました。ストーリーは、中高生で読むより大人になって読む方が面白さが余計に理解できる内容だと思います。出会えて良かったと思えた一冊です。

  • モンゴメリ後期の単発作品。
    大人の女性向けのロマンスもので、「赤毛のアン」シリーズではありません。
    楽しみにとっておいたんですが~ついに読みました。
    面白かったです☆

    29歳の独身女性に巻き起こる事件。
    内気でぱっとしない外見のヴァランシー・スターリングは、愛称でドス(本人は大嫌いな呼び名)と呼ばれています。
    父を早く亡くしたつつましい家庭で、高圧的な母親にきつく束縛されながら育ちました。
    口うるさい親戚に囲まれ、一つ年下の従妹オリーブが美人で明るい人気者だったために、割を食ってもいました。
    これから結婚が出来る望みを捨ててはいないけれど、これまで恋人が出来たこともないのは、苦にしています。

    いつも怯えていて、逆らうことも出来ず、言いなりになっているヴァランシー。
    ヴァランシーの楽しみは二つだけ。
    自分で夢に描いた空想の世界に入り込むこと。
    図書館で借りてくる本を読むこと。
    小さい頃から目をつぶれば、青い城を思い浮かべることが出来たのです。
    ありとあらゆる美しいものがあるお城で、夢のような恋人と暮らすお姫様という自分を思い描いていました。

    最初のほうは嫌なことばかりが書き連ねられ、「モンゴメリ、本気?」と思わずその嫌な文章を読み返してしまったほど。
    それほど、ばしっと書かれていて猶予がないのですが、それもどこか透徹したユーモアが。
    切れる寸前の心境だったことをうかがわせ、「あと1年の命」と医師に宣告されたヴァランシーが思い切った行動に出る前哨となります。
    親戚の集まる祝いの席で、これまで言えなかったことを言い放つヴァランシー。驚愕する一同に苦笑。読者は内心、快哉を叫ぶ?

    子供の頃の級友シシイが、看病する人手も足りない状況で重い病の床に伏していると知り、家政婦として働くことを決意、シシイに寄り添うのです。
    スターリング家の社会的地位としては明らかに格下の仕事で、家族は勘当同然の態度に。
    しだいに自分らしく生きるようになるヴァランシー。
    シシイのことを気にかけてくれていたバーニイ・スネイスと親しくなり、あるとき「結婚してくれない?」と自分から申し込みます。自分はあと1年足らずの命だからと。
    バーニイは森に一人で住み、身元もはっきりしないので、街での評判は悪い男でしたが、ヴァランシーは惹かれていたのです。
    街から離れた森はとても美しく、これこそ青い城だと思うのでした。
    ところが‥?

    面白おかしく、はらはらさせる展開で、大逆転のハッピーエンド。
    良く出来た喜劇なので、ミュージカルにしたら面白そうだなと思ったら、やはり舞台化されたそうです。
    モンゴメリ自身が祖父母に厳しく育てられたのもありますが~牧師夫人として世間を見ていて、おとなしい女性が不当な目に遭うのを見てきたからじゃないのかな。
    苦労の甲斐あってお似合いの恋人に出会い、個性を花開かせるヒロインに嬉しくなります☆

    原著は1926年の発行。
    ルーシー・モード・モンゴメリは、1874年プリンス・エドワード島生まれ。36歳で結婚後、牧師の夫の赴任先で暮らす。
    この作品の美しい森のモデルは、トロントの北バラにあるマコウスカ湖周辺だそう。

  • 『赤毛のアン』と同様、読んでいると、こんな恋がしたい!と叫ばざるをえないくらい素敵な恋愛小説。世界一愛する人と、こんなふうに人里離れた森でふたりぼっちになれたら、短い一生でも悔いはないのかもしれない、そう思ってしまう。野いちごのような甘酸っぱい初々しさに満ちている。モンゴメリは、決して美しくはないが魅力ある個性的な女性を描くのがお得意だ。日常の片隅に、くだらない家の掟に、埋もれてしまったフェアリーであるヴァランシー。物語の主人公に、思わず、末永くしあわせであらんことを、と願ってしまった。

  • この物語はおそらく最も痛快な喜劇であり最もロマンティックな恋愛小説だと思います。
    あまりに硬直した超保守的なスターリング一族に対する皮肉めいたユーモアには思わず笑ってしまうし、ミスタウィスの自然についての描写は、文章それ自体が極めて美しく、青い城の幻想的な魅力に読者を没入させる。
    そして本書のあらすじにも書かれているように、究極のハッピーエンディングが待ち受けています。さながらディズニー映画のような、きれいで爽やかなハッピーエンドで、今の世の中に必要なのはこれだ!と私なんかは思ってしまいます。
    何か今のSNS社会って、他人の迷惑とか己の品性とかを顧みずに、自己顕示欲の塊みたいな生き方をしている人が利を得ちゃうので、そんなこと歯牙にもかけないヴァランシーやバーニィのような生き様が私にはとても素晴らしく映るんですよね…。
    読んでよかったです。

  • 喜怒哀楽という人の心の感情すべてをこんなにめいっぱい引き出してくれた
    物語がかつてあったでしょうか...

    苛々と怒りにムカついて、ソワソワしてドキドキして、嬉しくなって微笑んで
    可笑しくなって大笑いして。哀しみに泣き、喜びには感極まって涙して
    そして予想外の展開には目を丸くして驚いて。

    それがどんなことかと語ればきっときりなく永遠と、それこそ
    アン・シャーリーのようなおしゃべりが止めどなく続いてしまいそうです。(笑)
    なのでここではほんの一部を...

    これまでずっと自分の殻の中に閉じこもって、誰に対しても
    口答えなど一切したことがなかった主人公・ヴァランシー。
    ほぼ初めて母親に立ち向かう姿勢を見せた時、母親は驚いてこういいます──

    "おとうさんがそれを聞いたらお墓の中でひっくり返るでしょうよ"

    それに対しするヴァランシーの切り返しの一言がもう! ツボにはまって
    大爆笑しちゃいました。しばらく笑いが止まらなかったくらい...^^

    29歳にして独身のまま、家族親戚身内の柵に縛られ、"自分らしい"ことなど
    もってのほかのヴァランシーでも、図書館で借りた本を読むことは大好きで
    お気に入りの作家・ジョン・フォスターが語る言葉を引用しては
    自分の正直に思う気持ちのうちを当てはめて、心の拠り所にしている
    ヴァランシーですが、ジョン・フォスターの引用された言葉のそのほとんどが
    ヴァランシーだけでなく、私自身の心にまで深く響いて、それが
    あまりにも身に染みるので、ジョン・フォスターって....どんな人??と
    実は検索をかけて調べてみたりしました。マジでです。(笑)

    それがいくら調べても出てこない。小説の中では古典文学などが
    引用されることはよくありますから、てっきり~とは思いつつ
    注釈がついていないことも気になってはいましたが...

    それがあぁ...なんと!!

    最後まで読み終えて、改めて私はモンゴメリという作家さんに
    惚れこんじゃっているのだなぁとつくづく思いました。
    はい♪私も好きですジョン・フォスターさん。(笑)

    ヴァランシーが暮らす森の、移ろう季節の木々や花々の、風景描写の美しさは
    さることながら惨めで哀れで横暴で、憎くて醜い、情けない、それでいて
    どこかに優しさが隠れていて、揺れていて傷ついて哀しんで、なのに
    倖せを感じている...前向きな....人の心の内に潜む感情を、巧みな筆致で
    最大限に引き出して感じさせてくれるモンゴメリさん。大好きです。

    意外などんでん返しが待ち受けているシンデレラ・ストーリー。
    読んでよかった♪心洗われました。

  • たぶん高校生のころ、単行本で読んで、赤毛のアンよりおもしろい!!と思い、かなり感動した記憶がある。再読して、だいたいの展開は覚えていたので驚きはなかったんだけど、やっぱりおもしろかった。ジェイン・オースチンみたいな感じ。上品なハーレクインって感じもあるけれど。なにもかもを恐れてびくびくと不幸に生きていた主人公が、うってかわって自分の生きたいように、どころか、型破りな生き方をはじめるのはやっぱりわくわくしたし。
    モンゴメリはすごく風景描写がきれいで好き。風景にわくわくするってところもあって。こんな風景が見られたらそれだけでも幸せだろうなあという。

  • 赤毛のアンシリーズとエミリーシリーズしか知らなかったわたし
    村岡花子さんの訳のほかにはもう作品はないものと思っていた

    ところが、モンゴメリーにはそのほかにもたくさん
    10冊以上の作品があったことを知る

    偶然、本屋で『青い城』の文庫本を見つけて「えっ?」とびっくりした
    まさか「モンゴメリーもどき作品」ではなかろうね
    と、あとがきを見るとまさしくお作品
    本好きのとしてはうかつである

    『青い城』『もつれた蜘蛛の糸』『ストーリーガール』『黄金の道』『銀の森のパット』

    そんなわけで読む読む

    *****

    モンゴメリの作品で『青い城』が一番好きかもしれなくなった
    『赤毛のアン』の1巻も素晴らしいが
    いまではどっちとも言えないほど気に入った

    乙女は(昔の 笑)『美しい城』に呼ばれたいと夢見る
    それを思うさま味わわせてくれるものがたり

    とくに打ちひしがれたような孤独を感じているときに...

    ヒロインは内気なぱっとしない独身女性ヴァランシー・スターリング
    あろうことかお医者様から余命を宣告された
    (と、ありがちな展開から始まる 笑)
    では悔いのない人生を送ろうと...
    (これもありがち)

    もちろんハッピーエンド、シンデレラストーリ、むむむ

    ありがちなのだけれどもそんなことは吹っ飛ぶ筆力
    秘密めいた、ゴシックロマンの物語だ
    よくできている、なぜこれがもっと早く世に出なかった
    (わたしが知らなかった 笑)のだろうね

    モンゴメリの小説は何気ない日常が題材となっている
    つまり少女の成長や恋愛を夢多く語りながら、人生の機微を垣間見せる

  • モンゴメリの赤毛のアン以外の作品があるなんて、それもこんな面白いなんて!
    ヴァランシーが身内のくだらない因習を蹴散らして、本当に自分が気持ち良い生き方を見つけたのが我が事のように嬉しかった。そして意地悪なだけかと思っていたお母さんにも、娘を思う母親らしい心があるのが垣間見えてほっとしました。
    自分の青い城は何かな、と考えさせられました。

  • 自由に生きるようになったヴァランシーの魅力的なこと!
    開き直って一歩踏み出しさえすれば、どんな冒険だってできるんだなと勇気が湧いた。

  • 傑作。主人公が29歳の「みっともない」オールドミスで、心臓病といったら、ハッピーエンドになりようがないと思うが、読後感は非常に爽快である。主人公ヴァランシーに襲いかかってくる精神的圧殺は、19世紀英国上流階級社会(舞台はカナダだけど)の恐ろしさを思い知る。こういった社会的圧力は東洋も西洋もないんだなと思う。だが、死を覚悟した主人公がほんとうに生きるために、行動を起こしてからは、これらの精神的圧殺をはねのけ、ついに理想の夫を見つけていく所は痛快にして美しい。ヴァランシーとバーニーの間の関係は、一種の夫婦の理想なんじゃないだろうか。人間の「再生」というテーマでは、ゲーテの『ファウスト』とか、黒澤明の『生きる』などと言った作品が思い出されるが、注目すべきは、モンゴメリーが哲学や政治の文脈ではなく、「生活」の中で、この人間の再生を描いていることだ。表面的にはロマンス小説のように読めないこともないが、文学的テーマも深いものがある。何かにしがらみを感じている人は読めば、得るところがあるであろう。読み出したら止まらない、ストーリーテリングや自然描写は魅力的、美しい自然の中で紡がれる静かな愛情の描写にも心を打たれる。惹句には「すべての夢見る女性に」と書いてあるが、男性が読んでも十分楽しめた。

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著者プロフィール

1874年カナダ、プリンス・エドワード島生まれ。1908年に最初の長篇小説『赤毛のアン』を出版。世界的ベストセラーとなる。オンタリオ州に移り住み、その地で数々の作品を執筆した。42年トロントにて逝去。

「2012年 『パットの夢』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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