動物農場 (角川文庫)

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制作 : 高畠 文夫 
  • 角川書店 (1995年5月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042334019

動物農場 (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  •  とある荘園農場で起きた動物達の革命とその顛末を通じ、スターリニズムや全体主義体制に蔓延する欺瞞と恐怖を描き出したジョージ・オーウェルの傑作。擬人化された動物の類型は寓話的でありながら、当時のソビエト連邦における権力者達(レーニン、スターリン、トロツキー)や秘密警察による支配構造をモチーフとしている。作中で語られる出来事の多くは二月革命からテヘラン会議までのソ連、さらにスペイン市民戦争における著者自身の体験に着想を得ているが、出版から半世紀以上経った現在でも『動物農場』の恐ろしさは色褪せることがない。本作は『一九八四年』のように管理統制社会の構造批判を物語展開の主軸に置くのではなく、むしろ管理統制社会が形成される過程を革命前夜から段階的に描き出すことで、ソ連共産党の実態を知らずWWIIの同盟国と認識していた当時の大衆に「全体主義は他人事ではない!」と警鐘を鳴らそうとしているように見える。その背景には、民主社会主義者だったオーウェルがカタロニア地方で体験したPOUMに対する共産党の激しい弾圧行為やデマゴーグがあり、産業革命以降の英国帝国主義・国家社会主義を掲げたナチスのファシズム・そして二月革命以降の共産主義などに対する深い失望があった。左右問わず権力を握った者は「社会的平等の追求」という理念を腐敗させ、情報統制や政敵排除や民衆奴隷化によって全体主義的傾向を帯び始める。『動物農場』では当時のソ連を個別具体的事例としてモデルにしながら、オーウェルの危惧する支配-被支配構造が浮き彫りにされる。社会に対する民衆の不満を回避すべく存在しないスノーボールが「見えざる敵」として槍玉に挙げられる様は『一九八四年』のゴールドスタインにも当てはまるし、被支配階級の動物達(民衆)は七戒を書き換えられたことに気付かず明らかに道理が合わない虚偽さえ「ナポレオンは常に正しい」と歪曲して思考停止に陥っていく。利権を貪る豚達は革命によって自らが排除した人間と同化するように二本脚で歩き始め、やがて確定的かつ客観的事実を「事実である」と公言することさえ不可能になる……こうした悲劇はこの世に権力が存在する限りーー人間が滅びない限り何度でも繰り返されることになる。オーウェルは作中でたびたび「いつの日にか権力主義的独裁体制はプロレタリアートによって打破されるだろう」といった趣旨のことを述べているが、口調は読者を鼓舞するものでなく、むしろ消極的な希望的観測のようだ。例え民衆が権力者を打ち倒したところで、民衆の中から再び第二第三の「ナポレオン」が現れないとも限らない。いつの世も動物達は権力を欲する豚に扇動され、愚かな革命に身を投じることになる。そして再び『一九八四年』が始まるのだ。
     同時収録されている短編ルポルタージュ『象を射つ』『絞首刑』では警察官だった著者がビルマで経験した英国帝国主義への失望と困惑が語られる。また『貧しいものの最期』では浮浪者に身をやつしてパリを放浪していた頃の経験から当時の医療に対する不信感が顕わにされる。いずれも「人間を人間と見なさない支配者」への非難であり、後に『動物農場』『一九八四年』の源流となる。訳者によるオーウェルの伝記的解説も興味深く、作品の寓意を紐解く鍵として大いに役立ってくれた。

  • 人間の果てしない権力闘争を動物世界に置き換えた寓話。

    最後が作者の意図もあるんだろうけど、中途半端な感で終わっていたので、もやっとしていたけど、解説やオーウェルの24金を読んで納得。

    本の後半は著者のエッセイとオーウェルの人生について書かれているが、特に像を撃つは、心に残った。

    現代のGDPを加水して公表する中国。
    原発事故があったらひたすら反原発のシュプレヒコールを繰り返す日本の一部の活動家。
    主義が事なってもかぶる事があるのは、人間の集団生活は突き詰めてみれば動物農場の形におさまるってことなのか、、

    年を重ねるごとに読み直してみたい一冊

  • 風刺もきいているし、物語としての面白さもある。時代を超えて価値を有していく本。

    中学生だった時に読んで、ボクサーに感情移入してしまってとても辛かった。

  • 笑えて、考えさせられて、絶望的に楽しい。
    血のにじむような、パンクで愉快でダークで知的なドタバタ物語。

    「動物農場」ジョージ・オーウェルさん。



    アメリカ大統領に就任したトランプさんへの不安?の御蔭で、ジョージ・オーウェルさんの「1984年」が全世界的に売れているそうです。
    その「1984年」と並ぶ、オーウェルさん不滅の代表作が「動物農場」だそうで。

    なんだけど、ここまで「いつか読もう」で未読でした。



    オモシロイ。

    「1984年」よりも、風刺物語な分だけ、楽しく読めます。
    (「1984年」は、終盤はもう、胃が重くつぶされるような悲しい感じが...)

    つまりは、人間社会を動物たちで戯画化した、「鳥獣戯画」の世界。

    そして、あまりにも有名なことですが、ロシア革命(1917)からスターリン独裁粛清の時代(1930年代)を経て、第二次世界大戦開戦(1941)に至る、ソヴィエト連邦がモデル。

    もっと言うと、スターリン批判のようなことになっています。

    それは、「ああ、この豚がスターリンなんだな」という具合に、なんとなくそのあたりの歴史の流れを知っている人はすぐに分かります。

    特段に知らない人でも、ウィキペディアレベルの知識で読めば分かります。

    なんですけれど。


    この本がすごいなあ、と思うのは。



    そういうソヴィエト史を全く知らなくても、楽しめる、っていうことですね。
    (僕はそう思います)



    とある農場。

    動物たちは、日々、人間に搾取されてばかり。
    人望のある指導者、勇敢な戦闘者などが集まる。
    (それは豚だったり、ロバだったりする)

    そして、革命。

    動物たちが経営する「動物農場」が発足する。

    まず当然、外部から「そんなことを許してはいけない」という人間たちの攻撃がある。
    戦い。一致団結。祖国防衛戦争。勝利。

    勝利のあとに、政治がはじまります。
    リーダーが必要になる。リーダーは競合相手を批判し、破滅させる。
    そして、「メディアの操作」が始まる。

    「まだまだ、外敵が怖い。強い力、一致団結が必要だ」
    「我々は危機にある。リーダーのもとに結集しよう。非常時だ」

    徐々にリーダーの権力が強くなる。
    反対派は弾圧される。

    「それでも、祖国を守るためだから、仕方ないだろう?」

    そしていつの間にか、歴史が書きかえられる。

    「そもそもリーダーは昔からこうだった」
    「あいつは昔からいやな奴だった」
    「我々は残酷な事はしていない。あいつらがデマを言っている」

    そしていつの間にか。

    搾取しているのが人間ではなくて、豚のリーダーに変わっていた...。



    というお話が、実に生き生きと、様々な動物たちの個性豊かに、面白おかしく語られています。

    これは、現実のパロディだったり、風刺だったりするのだけれど、パロディとか風刺を超えた力を持つ寓話、という高みに達した素敵な小説でした。

    笑えて、考えさせられて、絶望的に楽しい。

    そして、長編というより中編クラスの長さ。読みやすい。



    ジョージ・オーウェルさんというのはとっても興味深い作家さんです。

    1903年に、イギリス植民地インドで生まれたそうです。お父さんは公務員だったそう。
    イギリス人さんです。資産持ち、ではなかったようですね。現代風にいえばサラリーマン的な階級の育ち。

    恐らく、ずっと物書き志望だったんだろうなあ、と思いますが、それなりの名門校を出た後に、「就職」として、植民地ビルマのやっぱり役人になります。警察官。

    なんだけど、20代のうちに退職して物書きを目指してパリ、ロンドンの底辺社会に身を投じます。

    最底辺の暮らしのルポルタージュを書く、という色気がはっきりあったようです。

    貧乏、乞食、ホームレス...みたいな日々の一方で、

    「ビルマで、俺は帝国主義の現場兵として、こんな不条理な体験しちゃったよ」

    みたいな文章や、狙い通りの、

    「パリ、ロンドンの最底辺どん底生活でこんなことを考えた」

    的な文章で、物書きとして売れてきます。
    一方で、普通の小説?も書きます。

    そして、1930年代、スペイン内戦。

    ナチ的な独裁政権、フランコ政府に対して、ソ連の支援などを受けた「人民戦線」などボランティア的な人も含むゲリラ的な反対勢力が戦いました。

    ヘミングウェイ、キャパ、なども参加した訳ですが、ここにオーウェルさんも一兵卒として現場に入ります。

    ここでどうやらオーウェルさんは

    「フランコもひどいんだけど、一方でソヴィエトも酷い...スターリン独裁政権、酷い...」

    という状況を嘗めたようです。

    ※確かに、後年分かるところでは、スターリンさんは、レーニン亡きあとに、政敵のトロツキーさんらを追放して、社会主義労働者の政権どころか、自分の独裁を強化。1930年代に、政敵やインテリや反対者やなんでもない人も含めて、未曾有の数十万人とかそういうレベルの粛清をしていたそうなんですね。当然、言論の自由なんてなかった。

    それで銃創を受けて帰国したオーウェルさんは、「動物農場」を1944年に書き上げます。

    ところが。

    1944年にはまだ、ヒットラー相手の戦争が続行中で。
    ソ連=スターリンは、アメリカイギリスの同盟国だったんですね。

    どう見ても「スターリン批判」であるこの本は、出版して貰えなかった。


    ところが。


    1945年4月30日、ヒトラー死す。

    原爆が8月6日、9日。日本の無条件降伏が8月15日。

    「動物農場」は8月17日に刊行されたそうです。

    今後は「冷戦」の時代になり、米英的にはスターリンは悪者に。

    繰り返しますが、「動物農場」は、単なるスターリン批判に留まらない素敵な小説です。
    スターリンだけではなく、あらゆる時代の強大な権力への疑問、知的な批判精神に充ち溢れた、何より愉快な小説です。

    なんですが、とりあえずは「ソ連は悪者だ」という風潮に乗って、ベストセラーになったそうです。

    その後、オーウェルさんは衣食住と名声の心配は無くなって。
    1948~49年に「1984年」を執筆。翌50年に46歳の若さで亡くなってしまいます。



    オーウェルさんの文章は、「1984年」「動物農場」に留まらず、ルポやエッセイ的な文章にも文明批評や社会の仕組みへの洞察が溢れていて、読ませるものが多いです。

    この角川文庫版の「動物農場」には、表題作以外に

    「象を撃つ」=植民地ビルマでの警察官時代。脱走した象を住民に囲まれて見物されながら撃ち殺した話。

    「絞首刑」=やはりビルマ時代に、政治犯?の絞首刑に立ち会った話。

    「貧しきものの最期」=マルセイユだったか?どこかの最底辺の病院で最底辺の治療を受けた時の話。

    の三篇が収録されています。なんだかんだで、やはり有名な「象を撃つ」は白眉。一読の価値。



    読んで思ったのは、

    「広い窓口を持って、愉快でオモシロク、そして読み継がれるべき価値が毛穴から噴き出すような、反体制、権力批判の漲る作品」

    という意味では、恐らくオーウェルさんの作品の中で、異次元の完成度を誇る小説だなあ、という感想でした。

    血の涙が滲むような、パンクな面白さ。
    時代を超えています。

    安部政権、日本の僕らにとっては、ひとごとであってほしいのですけれど。

    共謀罪とかって...

    こわいこわい。

  • 初オーウェル読了。
    こういった社会・体制批判的小説は、普段読まないのですが、ひょんな理由から本書を知り読み始めました。

    多くの理不尽と欺瞞に満ち溢れた物語でした。無知な動物たちが雄弁な豚に言いくるめられ働かされる状況に、憤りを感じるとともに、こうして民衆は洗脳・統制されていってしまうのかと戦慄させられました。
    私の心に残ったシーンは、働き者のボクサーが過労で死にかけ、豚たちによって密かに屠殺屋へ引き渡されていく場面です。強欲な支配者たちは、一番称賛されるべき者に報いるどころか、最も残酷で無残な最期を与えたのです。動物主義の本来の理念は、すべての動物が平等で幸福に生きることであったはずなのに…。そして、動物たちはこの事実に気付くことも、反論することもできないのでした。

    この一つの寓話に、人間が繰り返してきた、そしてまた繰り返し続けるであろう歴史の過ちと人間の愚かさが詰まっていました。

  • 政治とか権力とか、その縮図とか。
    まあ、いつでもどこでも大差ないよね…っていう。
    だからこそ、海外文学を読んでみようかなという若い方には是非読んでいただきたい1冊でもあります。まあなにより面白いので。

    (ちなみに。わたくしのベースヒーローはTAKESHIさんです。)

  • すごくしっくりきた。全体を通して、良かった。たぶん1984よりも好き。

    動物たちが、自分たちをこき使う領主に対して反乱を起こす。人間たちを追い出し、動物たちが自ら農場を運営しだす、というお話。
    最初はとってもうまく行く。物資豊富。みんな仲良し。民主的。すごく幸せ。
    けれども徐々に、動物間に“階級”が形成されていく。官僚化・特権化していくブタたち。ブタに言いくるめられ、指導され、徐々に主体性を失っていく他の動物たち。そう、最初はみんな"主体的"に、能動的に、運営に参加していたのに、(能弁な)ブタたちの生産するイデオロギーにやり込められ、ただいいように働かされるだけの存在になってしまった。

    プロットは、絶大なる既視感。
    マルクスの預言→レーニンによる解放→スターリンの専制
    をそのまま辿っているかのようだった。

    ただ、「どうすればいいの?」という感じ。なんともやり場のない悲しみ。

    角川版には、ほかにも短編がついている。
    それらは、「1984」や「動物農場」とは雰囲気がやや異なっている。植民地や病院などが舞台。かなり描写が生々しい。物悲しい感じが漂う作品群。
    通底しているのは、
    硬直した制度、権力、排除、無感情にたいする、
    静かな、激しい告発。

  • 表題作だけだと思ったら短編集でした。
    『動物農場』はとても上等な寓話で、本当に面白かった。
    長年自分たちを酷使し、自分たちからあらゆるものを搾取してきた人間を農場から追い出した動物たち。自分たちだけで理想の農場を作ろう、とみんなが夢を持って再出発します。
    でもやがて誰かが権力を握り、それにおもねる派閥ができ、権力を持つ者が恣意的に理念をねじ曲げていく。そして権力者の取り巻きの中の口の上手い者が民衆をうまく言いくるめてそれが民意のように見せかけ、民衆はおかしいなと思いつつも、何となく大勢に流され…どんな優れた思想や崇高な理念をかかげた社会でも、結局はこうなる気がします。
    雄馬のボクサーのように、世がどうなっても「自分が働けばいいのだ」と誠実に体を動かせる者の存在が一番尊いな、と感じました。
    ナポレオンによる裏切り者たちの処刑のあと、雌馬のクローバーと他の動物たちが丘の上から景色を眺める場面が私の中ではこの作品のハイライト。それぞれの動物たちが胸に抱える悲しみや不安や疑問といった暗さと、景色の描写の美しさのコントラストがとても印象的でした。

    『象を射つ』の主人公はビルマで警察官をしているイギリス人。脱走して暴れる象を、銃を持って追わなければならなくなった彼は、民衆の期待を一身に受けているのを感じ、殺したくもないのに象を撃ち殺す羽目になります。主人公の銃の腕前が最悪で、象が苦しみ抜いて時間をかけて死んでいく描写が辛い。
    支配者は被支配者の前で毅然としていなければならないという意味で、支配者は被支配者にあやつられることになる。なるほど〜。

    『絞首刑』はとても短いお話。死刑執行に初めて臨場した主人公は、執行されるまでは死を目前にした死刑囚を見ていろんな複雑な思いを巡らせます。でもいざその刑が執行されると、そのまま食事をし、死刑執行あるある話で盛り上がって役人たちと談笑するのです。大仕事を終えた安堵感からか、みんなやたらと陽気になるのだと。複雑。

    『貧しい者の最期』はとても陰鬱とした雰囲気の作品。面白くもない。
    でも、病院で死を迎えることについて、「何かしら残酷でみじめなもの」「毎日人々が他人の中で死んでいく場所につきものの、あわただしさと、混雑と、非情さ」がある、と書いているところが印象的でした。オーウェルは現代みたいに病院で死ぬことが当たり前になった社会を想像できたかなぁ。

    解説がいくつかあったけど、開高健さんのものだけ読みました。

  • 購入。

    角川文庫の60版を買った。表紙が違う。

    ジョージ・オーウェルの経歴やあとがきが面白い。1984年も読まないといけない気にさせられた。
    権力って怖い。支配って怖い。

  • 偉大なリーダーが去った後、権威が堕落していく姿を寓話の形で書いている。農場で豚が独裁的になっていく、不満分子は排除していく。ルールはこっそりと変えられる。そして、理想社会の建設が道を踏み外してしまう様を風刺する。その有り様はロシア革命だけでなく、権力全てにあてはまる。

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