スコッチに涙を託して (角川文庫 レ 6-1)

  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042791010

作品紹介・あらすじ

上院議員のもとから失踪した黒人掃除婦。彼女は議員の秘められたスキャンダルを撮影した写真を持ち去っていた。写真の奪回を依頼された探偵パトリックとアンジーは、写真を巡る陰謀に巻き込まれていく。

感想・レビュー・書評

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  • 何度目か分からない再読。作者の意気込みがすごく伝わってくる作品。パトリックとアンジーが生まれ育ち、今尚暮らすボストンという街が抱える様々な光と陰を丁寧に描いている。パトリックの一人称だが、彼は人種や政治、夫婦間や親子間の虐待問題等、どんなことも自分の問題として考える誠実さがある。決して大上段に構えず、解決できない問題でも、自分に出来ることを自分らしくやるのだ。もちろん、プロットも上手くて彼らが依頼された事件が様相を変えていく過程はドキドキする。でもこのシリーズが成功したのは、パトリックとアンジーがいつでも遭遇する事件や問題の痛みを自分自身が感じて苦悩する誠実さにあると思う。読者はそこに一番共感するのだと思う。

  • ネットで見かけて。

    ボストンはニューヨークやサンフランシスコと違って、
    落ち着いた街だ。
    合衆国が生まれる前、入植の時代に誕生した街ということで、
    アメリカの中では古都になるらしい。
    京都出身の知人は若干ひいていたが、
    一応京都と姉妹都市になっている。

    そんなボストンを舞台として、
    しかもパトリックとアンジー、男女のコンビの探偵のお話が、
    いかにも死んでしまいそうなセリフをつぶやいた女性が四ページ後、
    銃で撃ち殺されてしまうほど
    ハードボイルドな作品だとは思っていなかった。

    上院議員に頼まれた女性探しは、いきなりパトリックが襲われ、
    ようやく探し出したかと思ったら殺されてしまう。
    彼女が隠した写真にはどんな意味があり、どこに隠したのか。
    彼女の死をきっかけに元夫と息子の間でギャングの戦争が起きる。

    パトリックの亡き父親との葛藤、
    アンジーには暴力亭主、
    二人の守護天使であり狂犬ともいえるブッバ、
    それほど長くない作品にしては、
    いろいろな要素が盛り込まれて面白かった。

    最後の方、とうとうアンジーが夫をぶちのめした時に、
    刑事二人とパトリックが、
    告訴をあきらめさせ、今後近寄らないように釘を刺した場面が面白かった。

  • 映画「ゴーン・ベイビー・ゴーン」に痺れて、パトリックandケンジーシリーズを一作目から読もうと決意。

    事件の展開の意外性とかは全くないけれど、登場人物が魅力的で台詞回しが素晴らしい。それに緊張感ある痺れるシーンの描写は最高ですね。惚れ込んだゆえにちょっと贔屓目にレビュー書いてる気もしますが、久々に時間をわすれて読みました。

    とこれを書いていたのが四年以上前。このシリーズは偶数作が面白いんですよね。奇数はちょっと落ちる点があるなあと星主観で三つ

  • 読むのに時間がかかったが面白かった。パトリック&アンジーシリーズ。とりあえず、くそったれな亭主とどうなるのかが気になって読み進めるところもあった。

  • ちょうどバーで読む本がなかったため、購入した作品。スコッチって書いてあった、っていうただそれだけで選んだのだが、これがまた面白かった。

    ボストンで探偵事務所を営む、パトリックとアンジーは幼馴染。アンジーは同じく幼馴染のフィルと結婚している。
    ふたりのプラトニックな関係と、パトリックからアンジーに向ける好意、「昔はいいやつだったのに」の典型のフィルに対するパトリックの憎悪、殺人マシンで街中の裏稼業の連中から恐れられているブッバ、など、主人公と彼らをとりまくメインメンバーのそれぞれへの気持ちが、事件と絡み合って展開していく。

    依頼は、ある重要な書類を持って行方をくらました掃除婦を探してほしいという、上院議員からの依頼だった。それが、裏の世界の勢力争いに巻き込まれていくきっかけとなる。

    掃除婦が持ち出した書類とは何か、その書類の真実は何か、というのが、この事件のポイント。
    そこから、黒人差別、性的虐待、親子の断絶といった現代を象徴する問題が浮かび上がってくる。

    チャンドラーの正当な後継者と呼ばれている(らしい)作者。
    フィリップ・マーロウに比べるとパトリックとアンジーはやや暴力的ではあるが、世間に対する確固たる信念を持っているところや、いわゆる「世間の目」にとらわれない自由な意見を持ち、そのせいでアウトサイダーであることを余儀なくされているところ、そして皮肉屋なところは、まさしく。

    また、現代の闇を描き続けているせいなのか、このシリーズ、やたら人が死んでいく。
    暗く、重い物語やテーマを、軽快な行動力で引っ張って行ってくれるパトリックとアンジーが、魅力的だ。

  • 探偵パトリックに上院議員からもたらされた仕事は重要書類を盗んで失踪した掃除婦を探すこと。しかし見つかった掃除婦はパトリックの眼前で殺されてしまい…。

    「穢れしものに祝福を」をより楽しむために、シリーズの最初から読んでみた。
    キャラクター、話しともによく出来ていて、これがデビュー作だとは思えないほど。
    ハードボイルドも洒落た文体も苦手なんだけど、これはまったく気にならなかった。過剰な描写がないからなのかな?
    ギャングの抗争にも、パトリックたちの受難にもあまり不快感を感じず、さらりと読めた。いや、本当はそれじゃダメなんだろうけど。
    強いて言えば、パトリックがワイルドカードを持ちすぎてるようなする。歩く破壊兵器ブッパだけで十分じゃないのかなー。

  • 「運命の日」がすごかったので読んでみる。作者の初探偵小説にしてデビュー作!舞台は93年前後のまだインターネットも携帯電話も普及前のボストン。色男パトリックと家庭内暴力に悩む美貌のわけあり人妻アンジーがコンビを組む探偵シリーズ第1作。90年代のボストンってこんなに荒れ果てているんだっけ?ギャングは撃ちまくる、車は横転する、屍累々のハリウッド映画のような展開だが、テーマは幼児虐待と人種差別が根底に流れており、重い。なんでこの二人が最初からイチャイチャしているのか?なんでアンジーのジョークが鼻につくのか?最初はなかなか乗れなかった・・・波に乗れれば大丈夫。しかし、こんな色っぽい美人の相棒にいちいち絡まれて仕事になるのか???うらやましいけど私はダメです・・・

  • 私立探偵パトリック&アンジーシリーズ一作目。
    人種差別、児童虐待、家庭内暴力、貧富格差。スコッチに涙を託して飲まないとやってられないですね。
    ブッバ・ロゴウスキー、めちゃつよ。続編でも登場するんだろうか。楽しみ。

  • 面白い探偵小説の条件その1、どこか情けないがやる時はやる探偵と、相棒は美貌とユーモアの持ち主♀、という組合せ。

  • ★粗筋★
    私立探偵パトリックのもとに、ある大物議員から依頼が舞い込んできた。「掃除婦が盗んだ法案に関する書類を取り返してほしい」
    パトリックと相棒アンジーが見せる名コンビで、幾多の危機を乗り越えられるか?


    探偵ハードボイルドもののなかでは、割としっかりストーリーを作ってます。軽妙でウィットに富んだ会話は少なめ。プロットのたて方は上手いとは言えんけど、暇潰しにはいいんじゃないでしょうか?

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