ペギー・スー(1) 魔法の瞳をもつ少女 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042951018

作品紹介・あらすじ

地球上でただひとり、悪いお化けの姿が見えるペギー・スー。幼い頃、世界を守る力をその瞳に授けられたのだ。お化けの嫌がらせで厄介もの扱いされる辛い毎日。そんなある日、越してきた町で奇妙な事件が起こる。青い太陽が現れ、その光を浴びた少女が一夜で天才に!嫌な予感を覚えるペギー。そう、それはお化けが仕組んだ恐ろしい計画の始まりだった-。涙と笑いと震えが止まらない、大人気シリーズ待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  •  ファンタジー小説なかでも五本の指に入るほど大好きな作品です。学生のころに初めて読み、大人になってからの再読記録です。

     「フランスのスティーブン・キング」こと、セルジュ・ブリュソロ作、おばけの見える少女ペギー・スーの大冒険。

     この作品の好きなところ
    1. 少女が主人公のファンタジー
    2. いやなやつだけど憎めないセス・ブランチ
    3. 青い犬がユニーク
     
    <あらすじ>
     どういうわけかお化けが見えるペギー・スー。彼女は「理由を説明できない」お化けたち(作中では<見えざる者>)のせいで問題を起こしっぱなし。そのせいでクラスメイトからは頭のおかしな子だと思われ、何度も転校しています。姉には嫌味を言われ、あまりに学校で問題を引き起こすせいで、母にも良く思われていません。
     事の発端は、ペギーの目には他の人には絶対に見えないお化けが見えることから始まります。6歳のとき、眼鏡屋さんで出会ったアゼナという赤毛の妖精にもらった眼鏡だけがペギーの武器。今作では、ポイント・ブラフに引っ越したペギーが、突如頭上に現れた青い太陽の力でてんやわんやするお話です。

    1. 少女が主人公のファンタジー
     「魔法少女レイチェル」シリーズでも主人公はレイチェルという少女ですが、今作も主人公はペギーという女の子。個人的に、少女が試行錯誤しながら最後にはハッピーエンド、というお話が好きです。王道ファンタジーでは少年が主人公というものが多いのですが、少女が主人公だとまた違った趣があります。

    2. いやなやつだけど憎めないセス・ブランチ
     超有名な「ハリー・ポッター」シリーズに登場する全身真っ黒な魔法使い、セブルス・スネイプをご存じない方は少ないとは思いますが、今作に登場するセス・ブランチはまさにそんな感じのキャラクターです。生徒を見下して嫌味三昧。自分は賢いのだと高をくくっていて、嫌な奴丸出しの彼ですが、クライマックスで活躍します。セス・ブランチ、私はキャラクターとして、人間臭くてとても好きなタイプでした。

    3. 青い犬がユニーク
     最後に、青い犬ですが、この犬は次回作にも登場しそうな予感! テレパシーを使える動物たちは事件後は消滅してしまったかのように見えますが、唯一、この青い犬だけはペギーのことを忘れてはいないようです。これからどんな冒険がペギーを待ち受けているのかと思うと、多くの少年・少女たち同様にわくわくしてきます。



    ****以降はネタバレに抵触する表現があります****









    <大人になった視点から見て>
     大人の視点に立ち返ってこの作品を見てみると、随所に「ジェンダー」が散りばめられていることに気づかされます。「男の子は」「女の子は」とわざわざ書くことによって、性別とは何だろう? と(本作はヤングアダルト[YA]向けと謳っているわけではないですが)思春期の読者に問いかけているようでもあります。
     動物たちと人間が対立構造になる場面では、人間たちの世界が動物たちの犠牲のうえに成り立っているという現実と、太陽問題が解決して動物のテレパシーがなくなったあともその問題の根本は解決していないということ、ペギーと違ってダッドリーが動物たちを気の毒には思っていなそうなことなどから、さらに読者が一歩踏み込んだ思考をしてみてほしい、という訴えかけのように思えます。ペギーは動物たちの頂点にいた青い犬と和解して別れ、その後再会して迎え入れますが、それが今後どのような展開を迎えるのか、気になります。

     さらに、「太陽迎合派 と 慎重派」や、「反逆したい人たち と なすすべなく機会をうかがう人たち」のような対立構造になる場面で、人々が本当はどうしたらいいのだろう? と思い悩む姿が描かれています。作中ではマイクという少年が自分の選択している行動について「みんなの笑い者になるんじゃないか」「なにも発明しない人たちの一員だってことがちょっと恥ずかしい」「もしもほかの人たちのほうが正しかったら? 俺たちが今、一生をふいにしかけているとしたら?」と苦しい心中を吐露しています。
     それはペギーたちのような鮮烈な出来事の中だけではなく、我々の日常でも起こりうる葛藤で、身近なところで例えるとすれば、「SNSで自分の心情を呟くこと」や「自分と違う意見の人間に見下し発現をされて悩む人」とも共通しているといえます。
     これから、絶対の正義のない世界を生きていく少年・少女(そして大人も!)にとって、このお話は架空の突飛な出来事を題材にしながらも、実際に自分だったらどう考え、どう行動するだろう? という想像力を働かせるのに最適な機会を与えてくれる素敵なものだと感じました。

  • 動物と人類の立場が総入れ替えするSF.
    児童文学であるが、侮るなかれ。
    児童書とは思えぬ殺戮の嵐。戦慄すら覚える。
    作者はフランスのスティーブン・キングと称される大御所。

    作者は動物愛護団体の超右翼なのかとすら、勘繰りたくなる。
    しかし、これが児童書ってのが不思議でならない。読了感が爽やかどころか、不快感すら残ったよ。

    展開はスピード感があって良いが。
    まあ、生きとし生けるものは大切にという事か。

  • とても面白かった。話にのめり込んで、しばらく太陽に当たりたくなくなった。でも、途中から、〈見えざるもの〉が出てこなくなっちゃって、ちょっと残念だった。転んだりしたら、「これも〈見えざるもの〉のせいかな?」とか思っちゃう。ちょっと気になったのは、AZENAのこと。「寿命が3年ぐらい縮む」とか、意味深なこと言い残して、出てこなかった。通信障害なのか、それとも……AZENAが気になって、次も読みたい。私は好きだけど、最後の方が残酷。私は、ダレン・シャンも好きなので、こういう本と、相性が良いんだと思います。ダレン・シャンと比べると、おどろおどろしい感じじゃなかったので、軽く読めたけど、人によって感想はバラバラかも。

  • 14歳の女の子が主人公のファンタジー。
    ペギー・スー・フェアウェイは、世界でただ一人、お化けが見えるという。
    お化け<見えざる者>というのは、人間をいいようにオモチャにして遊んでいる存在。
    突然ハンドルを切り損ねて交通事故を起こしたり、いきなり知らない人を刺し殺したりするのは、みんなお化けのせい。
    人間に触れることも出来るし、他の物に変身することも出来るのだ。

    今日も学校でペギー・スーは、お化けに口を押さえられ、先生に指されてもすぐ立つことも出来ない。
    学校の先生にはふざけるなと叱られ、母親が呼び出されて、どうしてこうなのと泣く。
    子どもの頃から、頭がおかしいと思われて、友達も出来ない。

    8年前のある日、宇宙の彼方にいる妖精が現れ、ペギー・スーの使命を教えてくれた。赤毛の女性の姿をした妖精アゼナ。
    「あなたの瞳にはお化けを滅ぼす力がある」と。いずれはお化けが見える人間を増やすこと、それまで耐え抜くということ。
    魔法の眼鏡をくれて、この眼鏡で見つめれば、お化けに火傷をさせることが出来る。
    ただ、自分の目も痛むので、そういつも使うわけにはいかない手段。

    町を出ることにしたペギー・スー一家。
    父は遠い仕事先にいて、母親と姉のジュリアと3人でキャンピングカーで移動して、父のいる方角へ向かう。
    ひなびた町ポイント・ブラフで車が止まってしまい、滞在することにする。
    悪い予感を覚えるペギーだが、しばらくは平和で、初めての友達も出来る。
    ところが、町に青い太陽が昇り、誰も町の外に出られなくなってしまう。
    青い太陽の光を浴びると、一時的に頭が凄く良くなることがわかる。
    ペギー・スーの友達ソニアも平凡な子だったが、急に天才となり、町で一番頭の良い先生セス・ブランチをチェスで負かす。
    頭が良くなっている間に発明して金儲けをしようとする人で、町は狂乱状態になる。

    悪影響もわかって、人は家に閉じこもるようになるが、騒動の間に、動物たちは野放しだった。
    ペギー・スーは、リーダーになった青い犬に頭の中に話しかけられて、動物たちの意志を伝える役をする羽目に。
    知恵のついた動物たちは、人間に反省を求め、復讐を始める。
    ペギー・スーがほのかに好きだった同級生の男の子ダッドリーは、雌牛の養子になってしまう。
    ファンタジーというよりもSF的な文明批判を感じさせる内容で、ホラー的な展開でもあります。

    強力なお化けに対して、絶望的な戦いと孤独が強烈。
    それでも生命感のあるヒロイン。
    決死の状況を戦い抜くのを読むと、冒険を果たしたような気分になります。
    児童書といっても低学年には無理でしょう。
    作家は、フランスのスティーヴン・キングと言われている人だそうで、なるほど!
    お化けは原題を見るとフランス語でファントム。
    2001年の作品。

  • 恐ろしいには恐ろしいが、自然と次作にも手が伸びそうな予感。ペギー視点で見る街の住人は滑稽なことこの上ない。この子もこの子で運命に順応しすぎている、ハリーポッター並。

  • 本当に懐かしい!自分が小学生の頃に大ハマりした。20歳を過ぎてみてもう一度読んだけれど、思い出補正が強かったのか、今読むと少し拍子抜けかも…?ハラハラ部分のストーリーが長く、解決するパートがかなり少ないかなという気がしました。
    でも、これからハラハラの冒険が待ち受けてるとたまらない!
    2巻も楽しみです。

  • 町田尚子さんのイラストと、タイトルに釣られて買ってしまったけど…。ペギー・スーが頭の中で考えるだけで、「言ってもムダ」「やってもムダ」と、試しもしないであきらめてしまうのが腹立つ。一か八かやってみなよ!って。冒険モノでこうも守りに入る主人公も珍しい。腹を立てながらも一気に読んでしまったということは、やっぱ面白かったんだな。救いがまるでないような話しだけど、青い犬が出てくる最後で「終わりよければ全てよし」な気分になった。この話でお腹いっぱいって思ったけど、なんだか不思議と次が読みたい。青い犬が仲間になってると知って、ますます続編が読みたくなっている。

  • ただひとり、幽霊のみえる女の子のお話。
    14歳のペギー・スーとあくどい幽霊たちとのたたかい。

    もっと明るい感じのエンターテイメントかと思っていたら、わりとエグいお話だった。おばけたちが結構残酷で、結末も落ち着くところに落ち着くものの、ペギー・スーにとってはハッピーエンドではない。フランスの作家と知って妙に納得したけど、フランス児童文学ってわりとこんな感じなのかしら。読みやすい本ではあるし、これからペギー・スーがどうやっておばけたちに立ち向かっていくのかは読んでみたい気もする。

  • 大人も楽しめる子供用ファンタジー、と言っても内容はかなり怖めだし、読み応えがあった。主人公の女の子は悲しさに健気に耐えつつ、楽しくてハチャメチャな出来事がどんどん展開されていって目が離せない。外国ならではのどんちゃん騒ぎっぷりは面白かった。

  • ファンタジーとは思えない展開でハラハラしました。青い犬が面白くて、けっこう好きなキャラクターです。

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著者プロフィール

1951年、フランスパリ生まれの人気SF作家、推理小説。
母親の精神障害のせいで不遇な幼年時代を送る。80年に発表した『病める都市の断面図』でフランスSF大賞を受賞。81年の『深淵に種蒔く人々』でアポロ賞受賞。その後SFのジャンルを超えて、幻想小説、ミステリー、歴史小説にも進出し、94年に発表した『真夜中の犬』でフランス冒険小説大賞を受賞。2000年からはサン=ジェルマン出版のマスク双書の編集主任も務める。
2001年から刊行したジュニア向けファンタジー『ペギー・スー』シリーズは30ヶ国語に翻訳された。
2010年代に入っても『エージェント13』シリーズなど数多くの作品を発表してい る。

「2017年 『闇夜にさまよう女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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