夜はやさし(下) (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042976028

作品紹介・あらすじ

自らの臨床医としてのキャリアを犠牲にした妻ニコルへの献身に疲弊していたディックは、自分への一途な愛を貫くローズマリーを愛するようになり、やがて破滅の道を辿るようになる――。

感想・レビュー・書評

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  • 前半の好感度抜群のディックがアルコールで身体も人格も破綻していく様が非常にリアルに描かれていた。ディックとニコル夫妻が行く先々で事件が起こり、それが物語を二転三転させて面白くしている。その辺のもって行き方も上手いなと感心した。

  • 人を愛し救おうとすることが、自分を破滅させるなんて哀しき。
    さすがフィツジェラルド、20年代のアメリカの大金持ちがいかにヨーロッパでぶんぶん鳴らし、嫌われていたかを実体験から描き出してくれて、ひとときリッチな世界に酔えましたとも。
    なんたってタイトルが好きだ。Tender is the night.

  • タイミングの良さにおどろき
    家族の病気や荒れる主人公
    時代や場所は変わっても人間て普遍

  • 前半から一転した展開に驚きを感じながらも読み進めていました。

    上巻は読みながらも「ディックの自制心が限界を迎えつつあるが為に家族は綻んでいくのだろう」と思っていましたが、事実彼の自制心は限界を迎えていたものの、彼は妻に対しては最後まで真摯に向き合っていました。

    そして初めて彼が医者ではなく1人の男としてニコルと向き合える様になった時には彼女の心は別の男へと向いていた状況がなんとも儚く悲惨であったことか。

    終盤の船上から海に2人して飛び込んでいたら彼等は永遠に1つになれたかも知れないのに…とはいえ行き過ぎた理想が崩れていく事がまた魅力的で美しいのだけれども

    医者と患者として出逢ったが故に迎えた関係性の破滅であり、逆にそうではなければ出逢わなかった2人、そしてfemme fataleの様に現れたローズマリー、ちょうど20世紀初頭のロマンスを詰め込んだ作品でした。

  • 10年積ん読やったのを思い立って読んでみました。いや、10年置いといて良かった気がする。10年前、もしくは初めてフィッツジェラルドを読んだ20年前やったらハマらんかった。気がつけばオイラもフィッツジェラルドが死んだ年に近い。前半はどうってことないんやけど後半が刺さる。海でダンナが若い頃みたいにムチャしようとして失敗するのを嫁さんが冷ややかに見てるシーン、ツラすぎる。酒で身を持ち崩す展開、身につまされ過ぎる。
    あと、解説で狂ったとか発狂したとか書いててすげーなと思ったけど昭和三十五年刊行の復刊か。時代やなぁ。

  • フィッツジェラルドの儚い願いを託された一作。書くということで彼は浄化を求め、慰めを受けたかったに違いない。ディック博士のようなあっけない幕引きを望んで夢みて、物語に託した。
    失われていってしまったものへの哀惜。だけど、それはどこまでも自分だけのもので、誰に知らせることもできない。ただ、笑って波風立てぬよう過ごしていくより他ない。またしてもギャッツビーが現れる。優雅や気品さというものは、そうやって作り上げていくものだ。
    彼の文体がどこか断片的でとりとめのないように感じられるのは、思い出を壊したくなくて、バラバラに壊してしまった、そんな彼のやさしさゆえなのだと思う。子どもの大切にしまっておいた花や草・虫が、大切にするあまり色褪せて萎びてしまったのに似ている。そして、そんな残り滓なんていらないと、すべて粉々に砕いてしまいたくなる。
    彼にとっての慰めは、酒による酩酊と、書くということによってしか見いだせなかった。そんな彼を受け入れてくれるのは夜の闇のやわらかさだけだった。存在をくっきり浮き立たせる眩しい光より、存在が溶けて広がる闇を愛した、孤独な輝き。だが人生は虚構のようにはできていなかった。

  • 下巻のほうが転落ぶりが面白くってすぐ読めた。違う訳のものも読んでみたい。

  • 改訂版とオリジナル版があるが、先にこちらを読んだからかもしれないが、改訂版のほうが話の流れがなじんだ。とにかくストーリと描写のスムーズさに感激する。
    また、南仏は個人的に大好きな場所でなんども行っているので、時代は別として、そのイメージで読めるから、ますますのめり込む。何度でも読み返した1冊。

  • 村上春樹の影響で背伸びしてフィッツジェラルドを読んでるけど、1回読んだだけじゃ理解できないよー。自分の読書力の低さに嫌気がさす。2011/014

  • かつてのエイブのようにアルコールに溺れ転落していく主人公のディック。田舎の貧乏牧師の息子が一流大学を出て、優秀な医師・研究者として身を立てるはずが、ニコルと出会って金持ちになり、アメリカを離れてヨーロッパをさ迷い、道を外れていく様子が怒涛の後半で描かれる。しかしディックが道を誤るきっかけになるスイスも、ローズマリーも、リヴィエラも、パリも、崩壊する妻のニコルでさえも、フィッツジェラルドの目に映ったそのままのように生き生きと描写され、対岸の光や遠くの窓の灯のように眩しく美しい。ディックの結末は胸が締め付けられるような思いで読んだ。

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著者プロフィール

1896年ミネソタ生まれ。ヘミングウェイとともに「失われた世代」の作家として知られる。大学在学中から小説を書きはじめ、『グレート・ギャツビー』を刊行して一躍時代の寵児となる。激しい恋愛の末、美貌の女性ゼルダと結婚、贅をつくした生活を送る。しかし、夜ごとの饗宴を支えるため乱作をはじめ、次第に人気を失い、ハリウッドの台本書きへと転落の道を辿る。1940年、再起をかけて執筆していた『ラスト・タイクーン』が未完のまま、心臓発作で逝去。

「2022年 『グレート・ギャツビー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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