アンジェリーナ 佐野元春と10の短編 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043410019

作品紹介・あらすじ

時が過ぎようと、いつも聞こえ続ける歌がある――。佐野元春の代表曲にのせて、小川洋子がひとすじの思いを胸に心の震えを奏でる。物語の精霊たちの歌声が聞こえてくるような繊細で無垢で愛しい恋物語全十篇。

感想・レビュー・書評

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  • 佐野元春。

    オールドロックファンであれば
    忌野清志郎と共に
    知らない人はいないであろうロックンローラーであり、

    日本語のロックなど
    実質的には不可能であると言われていた時代に
    (ロックとは英語の音感やリズムを前提に作られたから当たり前なんやけど)

    洋楽のエッセンスをたっぷり詰め込み
    違和感なく日本語をビートに乗せた
    日本のビートロックの偉大なる先駆者なのです。
    (若い人にはドラマ「SPEC」で戸田恵梨香演じる当麻紗綾のお父さん役と言えばピンとくるかな?)


    都会で暮らす若者たちの
    恋と苦悩を描いた
    センチメンタルな歌詞は、
    学校では決して教えてくれない
    『リアル』で溢れていました。


    まるで一本の短編映画を観たかのような
    ストーリー性のある歌詞世界。


    詩人でもある彼の
    意志の詰まった言葉。

    何事にも揺らがない
    強靭なビート。



    信じる心を教えてくれた
    『SOMEDAY』は
    今でもずっと自分が泣ける歌No.1だし、
    デビュー曲の『アンジェリーナ』は
    バンドメンバーでカラオケ行ったら
    取り合いになるほどの人気曲です(笑)


    しかも佐野さんは
    ストーンズと同様に、
    懐メロなんかじゃなくて
    今も現役で転がり続けてるところが
    ほんまにカッコいい♪


    ロックとは
    ジャンルの名前ではなく、
    何かを越えていこうとする
    強い意志の名前であり、

    ただのキッズミュージックではないということを
    今も体現しようとしている
    真摯なミュージシャンなのです。


    そんな佐野元春の歌をモチーフにした短編集を
    あの小川さんが
    書いてたなんて!

    今更ながら嬉しい驚きでした。


    シャンデリアの街で
    靴を忘れたバレリーナと
    彼女を待ち続ける男。

    図書館で知らない男に託された
    猫の形をしたペーパーウェイト。
    そこに隠されていた悲恋とは…

    レンタルファミリーなる職業を生業とする
    ミステリアスな彼女に惹かれた僕は…

    左足の記憶を失った女と
    温室管理人の恋。

    青白い夜のプールで
    少年が語る
    ゆで卵を食べるという
    ナポレオンフィッシュの話。

    など佐野元春の名曲から生まれた
    不思議でロマンチックな短編は
    どれも味わい深く
    いつまでも余韻を残すものばかり。

    眠れない夜は
    元春を聴きながらこの小説を♪

    • まろんさん
      おお?!私が持ってるのと装幀が違~う!
      こちらのほうも素敵ですね。

      私も、『アンジェリーナ』を目覚ましがわりにかけて、毎朝元気をもらってま...
      おお?!私が持ってるのと装幀が違~う!
      こちらのほうも素敵ですね。

      私も、『アンジェリーナ』を目覚ましがわりにかけて、毎朝元気をもらってました。
      死と喪失の気配に満ちた作品を書かれている小川さんが
      佐野元春の大ファンだなんて思いもよらないことだったけれど
      作品を読んでいると、1曲1曲への愛情が伝わってきて、うれしくなって。
      好きな作家さんだけれど、ちょっと遠巻きに見ていた感じだったのに
      この本を読んで以来、急速に親近感が増してしまった、ゲンキンな私なのでした(*'-')フフ♪
      2013/04/25
    • 円軌道の外さん

      nico314さん、
      遅くなりましたが
      コメントありがとうございます!

      おおーっ!!
      佐野元春を知ってる人がいて
      良かっ...

      nico314さん、
      遅くなりましたが
      コメントありがとうございます!

      おおーっ!!
      佐野元春を知ってる人がいて
      良かったぁぁ〜(笑)(>_<)

      中学高校時代、
      かなりハマったし
      日本語のロックがダサく聞こえなかった
      最初のアーティストが
      自分にとっては
      佐野さんだったんです。


      あははは(笑)
      そうそう、自分も
      近所のロック兄ちゃんに貰ったカセットを
      擦り切れるまで聴いてました(笑)

      もうテープが伸びきって
      変な声になるくらい (笑)
      朝の通学の電車で
      いつもウォークマンで聴いてたなぁ〜♪
      (伸びたテープだとよく絡まるんスよね〜)

      つか、今の子は
      カセットテープって何?
      って意味が通じひんのやろなぁ〜(泣)(^_^;)

      自分もよく好きな子に
      マイベストソングのカセットを作って
      よくプレゼントしてました(笑)

      今考えたら
      こっ恥ずかしいですけどね(^_^;)


      2013/05/01
    • 円軌道の外さん

      まろんさん、連チャンコメント
      ありがとうございます!

      つか、まろんさんも
      佐野さんご存知だったとは
      いやぁ〜嬉しい驚きです...

      まろんさん、連チャンコメント
      ありがとうございます!

      つか、まろんさんも
      佐野さんご存知だったとは
      いやぁ〜嬉しい驚きです(^O^)


      この小説を知った時、
      ホンマ小川さんのイメージと
      佐野元春のイメージが結びつかなくて、 自分もかなりビックリでした。

      しかも歌の世界観を壊すことなく
      新たな物語を作り上げている
      その絶妙さに
      小川さんをもっと好きになりました。


      けど小説家でロック好きな人って
      意外と多いんスよね♪

      三浦しをんさんは
      自分も大ファンの
      the pillowsが好きらしいし、

      伊坂幸太郎は
      ビートルズとストーンズと斉藤和義のファンだと公言してるし、

      花村萬月はブルースに詳しいし、

      角田光代さんは
      忌野清志郎が昔から好きで
      旦那さんは
      現役ロックバンドのメンバーやし、

      町田康は伝説のパンクロッカーやし(笑)


      余談ですが
      ロック好きの作家と
      ロックバンドを一堂に集めた
      ロックと文学を融合したフェスを開くのが
      自分の夢のひとつでもあります(笑)


      2013/05/01
  • 佐野元春なくしては私の青春はないんです、と言い切れる❗️
    音楽だけで充分、味わう事が出来るのだけど、でも、小川洋子さんの表現もしっくり馴染んでさらに味わい深くなる。
    チョイスも全部私の大好きな曲だったので、何度も読み返していたな。

    また手に入れ直したので、本棚にプラス。

  • 読んでいて、とても心地よい短編集でした。
    不安定で、ちょっと現実離れしているけれど、その雰囲気がまた居心地がよくて、ずっと読んでいたい気がしました。

    佐野元春さんの曲は大好きで、以前よく聴いていました。
    好きなアーティストのうちの一人です。
    今年は、30周年だそうですね。
    こんな記念すべき年に、素敵な一冊に出会えて、とても光栄です。

  • 『アンジェリーナ』
    会社帰りの駅で拾ったバレエシューズ。新聞に出した〝アンジェリーナ、君の靴を預かってます。連絡乞う〟の広告。完璧な体の線を持った彼女はそして土曜日に現れた。
    『バルセロナの夜』
    三角関係のもつれがさらにこじれて会社を辞めた“私”はアパートのそばの公園の緑の奥に図書館を発見する。そこに通い始めた私は司書の女性の瞳の奥のかなしみに想いを馳せ、そしてスペインの歴史の棚でかなしい靴の鳴らし方をする青年から透明な猫のペーパーウエストを預かる。二人と私を結ぶ猫の中の光。
    『彼女はデリケート』
    レンタル家族の仕事をしている彼女は、もうすぐオジサマと飛行機に乗ろうとしていた。空港の中の僕は思い返す。家族を演じるたびに違う口紅をつける彼女。いま彼女は薔薇色の唇をして、いったい僕に止めてほしいのか、理解してほしいのか。
    『誰かが君のドアを叩いてる』
    ある日起きると左足の記憶を失っていた〝私〟は町中にある植物園へと足を向ける。そこは町で傷ついた人が癒される場所なのだという。そこで植物の世話をしている青年と私は失っていく体の記憶とともに過ごす。
    『奇妙な日』
    彼女が仲直りにやってくる日。坂の上の最近更地になった場所の工事が始まった。夜、ワインを持ってやってくる彼女のためにディナーを用意していた彼のもとに、厚化粧で小太りな中年の女がやってくる。女はあの空地が更地にされる前、いったい何が建っていたのかを僕に聞くのだが…。
    『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』
    私は訪れた町に水族館があると必ず入らずにはいられなかった。そして受付で聞くのだ「ナポレオンフィッシュはいますか」。それは私の18歳の時、バイトで出会った青年との思い出からの行動だった。
    『また明日…』
    彼は〝みみずくクラブ〟の扉を叩いた。それは彼が夜のニュースの終わりに聞こえてきた女性の声に恋をしたからだった。
    『クリスマスタイム・イン・ブルー』
    クリスマスの夜、私には思い出す風景が二つある。それは切ない思い出なのだけれど。機内で書き綴られる思い出の活写。
    『ガラスのジェネレーション』
    革の手袋を買いに来た私の前に現れたのは、中学の時に別れを切り出した彼だった。彼は私に聞く、「ねえ、君は別れを告げた次の日からの林間学校に行かずどこに行っていたの?」長いときを経て語られた二日間の出来事。
    『情けない週末』
    MOTOのコンサートの後は、雨が降ったわけでもないのに湿った気配が街を覆っていた。
    この夜はそして遠い私の中の彼との思い出の公園へと結びついていく。

    佐野元春の音楽をもとにして生み出された物語たち。どれも寂しげに少し揺れて、掬い上げた手にしっとり吸い付くような質感がある。今の私にすごく合う文章だった。

  • 佐野元春の歌をモチーフとした10編の短篇集。
    それぞれ20ページほどの短い話だけれど、小川洋子のエッセンスがぎゅっと詰まっている。
    日常の中にふっと入ってくる非現実な世界。

    『バルセロナの夜』
    仕事を無くし図書館に入り浸っている無職の女。
    ある日出会った男に猫のペーパーウェイトを渡され、半年後に持ってきて欲しいと頼まれる。
    結構ベタだけど切ない愛の物語。

    『彼女はデリケート』
    依頼者の”家族”としてレンタルされ、ある時は娘に、ある時は母親にと様々な人物を演じてきた女。口紅で変身を表現しているのが鮮やか。
    コスメの種類はたくさんある中で、口紅を重視する作家って結構いる気がする。

    『誰かが君のドアを叩いている』
    これは『密やかな結晶』の元となったような話。
    女はある日自分の左足の記憶を無くす。そうやってどんどん自分のことを忘れていく。
    喪失は小川洋子の物語でよく出てくるテーマである。

    他の話も、ナポレオンフィッシュや帰ってこない恋人、フラミンゴと住むおじさん、きちんと詰め込まれた死人に届いた荷物など、心に引っかかるキーワードがうまく盛り込まれている。

    解説で江國香織が書いている通り、小川洋子の作品に出てくる人物はつるんとして無機質だ。だからうまく人物像を描けないのに印象的である。この矛盾はどうやって創りあげるのか。わからない。

  • 「アンジェリーナ」が高校の教科書に載っていて結構切なかったので借りて読んだ。

    佐野元春さんの代表曲にのせて書かれたというが、その人物を知らない…。
    でも、内容は知らない人でもよかったと思います。

    • まろんさん
      おお!「アンジェリーナ」が教科書に載る時代になったとは。。。感激です!
      佐野元春は、はるか昔になりますが、私の青春時代の憧れの人です。
      「ア...
      おお!「アンジェリーナ」が教科書に載る時代になったとは。。。感激です!
      佐野元春は、はるか昔になりますが、私の青春時代の憧れの人です。
      「アンジェリーナ」は、韻を踏んだ歌詞が素敵で
      毎朝、学校に行く前に聴いて元気をもらっていた曲です(*^_^*)
      2012/10/04
    • しをん。さん
      そうなのですか!
      初めて佐野元春さんを知って素敵だなあ・・・と。

      曲があると聞いて、驚きです♪
      さっそく、探してみようと思います(●^o^...
      そうなのですか!
      初めて佐野元春さんを知って素敵だなあ・・・と。

      曲があると聞いて、驚きです♪
      さっそく、探してみようと思います(●^o^●)
      2012/10/04
  • アルバムに10曲あれば一曲はいい曲があるもので、その他は、それを引き立てる。そう考えるとこの短編集はその一曲がいいと感じたならばいいアルバムなのである。そしてその一曲は確かにあった。

  • 佐野元春の歌を元にした短編集。設定、展開、描写、セリフ、オチ、それぞれにハッとする部分がそのうち、丁度、一つある感じ。

    アンジェリーナ:身体のたたずまいの描写
    バルセロナの夜:図書館の司書の女性
    彼女はデリケート:レンタルファミリー
    誰かが君のドアを叩いている:植物園。喪失していく過程こそ美しい。
    奇妙な日々:時間を織り込んだ地図の完成への執念がおばさんに集結
    ナポレオンフィッシュと泳ぐ日々:本当かよ
    また明日…:声。愛しすぎることの怖さ。
    クリスマスタイム・イン・ブルー:コインランドリーの出会い
    ガラスのジェネレーション:信じるだろ?
    情けない週末:ケーキの台無しさは本当に悲しい

    江國香織さんのあとがきが、またよい。「創造物への信頼」

  • 佐野さんの曲をモチーフにした短編集。
    どの曲も知らない曲ばかりなので、聴いてみようと思う。
    表題作のアンジェリーナが好き。

  • 佐野元春の楽曲からインスピレーションを得て紡ぎ出した短編集。
    アンジェリーナとクリスマスタイム・イン・ブルーが私好みでした。
    彼の楽曲に思い入れが深い人は違和感あるストーリーもあるかもしれないが、捉え方の違いを楽しめることも肝要。

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著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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