偶然の祝福 (角川文庫)

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著者 : 小川洋子
  • 角川書店 (2004年1月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043410057

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偶然の祝福 (角川文庫)の感想・レビュー・書評

  • 孤独な女性小説家の過去、日常を描く連作小説。
    間違いなく日常が描かれているが、そこにあるのは、ミステリアス、生々しい神秘性、非現実感、虚構。
    最初はエッセイ?と勘違いしそうになりました。ご自身の経験も多かれ少なかれ盛り込まれてるとは思いますが。

    小川洋子さんは静謐な文章を書かれる方、と紹介されることが多いが、その通り喧騒とは正反対のところにいる。
    流れている時間がすべらかで秒針の音ひとつしないのだ。
    主人公の人生は穏やかなものではなく、しかし落ち着き払っている。
    終わり方はストンときたし好みだが、その後主人公にとってやさしい時間はやってくるのだろうか、という読後感が残った。
    暗い話が好きな私にとっては良い余韻だった。

  • よかった。
    小説家の私と息子と犬のアポロの、静かで、ときに残酷で、優しくもある不思議な空気を纏った連作短編集。
    各短編の時系列は違うけれど、読了後にもう一度最初に戻って読み直したくなる。
    いちばん好きなのは「失踪者たちの王国」。
    さよならも告げず、未練も残さず、秘密の抜け道をくぐってこちらの世界から消えていった、失踪者たちが住むという王国。
    客観的なフリをしながらもどことなく失踪者たちの王国に惹かれているような“私”の不安定さと、空気感が、絶妙。

  • 良質な短編集でした。キリコさんの失敗が良かった。

  • 小川洋子の小説は、博士が愛した数式しか読んだことがなかったけど、この人のほん。面白い。

    ほんの少しの非日常をこんなうふうに淡々とミステリアスに、そして、ささやかな幸福に、ほんの少しのラブストーリーに、不思議なホラーに、少しづつ姿を変えて読ませてくれる、身近によくある話のようで、なかなかないんだけど、なんか自分でも経験したような気になるような日常風景の中に取り込まれる世界。

    ふとした瞬間に、今の自分と本の中の主人公が簡単に入れ替われるほど普通の日常の出来事が、どんどん読ませてくれます。

    ゾクっとしたり、え!?そうくる!?って思ったりオチも完璧なのに、なぜかとても日常的。

    そんな不思議なもう一人の自分の人生のような一冊です。

    ハマるかも。小川洋子!

  • 徹底して、どこを切り取っても小川洋子の世界。漂う冷たさと静寂な空気、突き放したようでいてどかかにある暖かみ。リコーダー、恋人、声、さまざまな物が喪失する。それはその人の存在を形作ってきた象徴である。喪失は黄泉への旅立ちか、新しい世界への旅立ちを祝福するかのようである。

  • 不気味だけど懐かしい。キリコさんの失敗のパンの届くところ、盗作、失踪者。静謐は十分だったが、つながり、掘り下げがイマイチだったか。
    現実と創作が混じり合ったエーデルワイスの感じは好き。

  • 性愛の描写が無い著者の作品ばかり読んでいたので、少し意表を突かれた。

  • その人にだけ見える存在。

  • 短編連作、なんだけど。最果てアーケードとどことなく似た感じの作品。書いた時期は結構違うんだけどね。割と好き。

  • ああ、エッセイかと思って読んでいたから!
    すごいハラハラしちゃって。
    いまも、ほんとはエッセイ?とちょっと思ってる。
    作品と現実の境界線をいい意味で曖昧にしちゃったすごい作品だ。

  • 『涙が落ちて、それが宝石になる』

    わかっていることと理解していることは違う。このままじゃダメだと思っているのに、手を繋いだまま崖に向かっていってしまう。視野を、視野を広くしなくては。物語は誰かの視界を介して複雑に移り変わっていく。見ているものは一つなのに。それは赤く、丸く、重く、薫。リンゴを見てあなたはなにを一番に思い浮かべるのか。

  • 作家をめぐる弟、犬、子供、恋人にかかわる7つの短編。
    どれもが、適度な湿り気とざわざわした感じと、少しの光を兼ね備えた小川洋子の世界。
    航空会社の嘔吐袋を収集していた伯母さんと失ったものをあるべきところに戻してくれるキリコさんが印象的だった。

  • この方の小説は読了後いつのまにか半分以上内容を忘れてしまいます。しかし断片的に鮮明に覚えていて、どの小説にも美しかったなという印象を受けます。日常を丁寧に書いているのに普通の日常とは思えない、不思議できれいで、仄暗い雰囲気が好きです。

  • 小川洋子の最果てアーケード以来の連作。
    読みやすいけれど、相変わらず主人公の現実とは僅かに隔絶された感覚がしんどい。

  • 久々に小説に酔う、という体験をした。
    時差ボケで気持ち悪い、というのと似ていて、自分にとってまるで異世界であるSFやファンタジーの世界に入り込むのとは違った、例えばアメリカなどの海外と日本を行き来すると生じる体内時計のズレのような感覚。

    村山春樹さんの「ノルウェーの森」を読んだときも感じて、これは現実の話なんだけど、ある種私の知っている現実ではない。
    いわば、統合失調症の人が見る世界のよう。
    ノルウェーの森も、この作品も、どこにも「統合失調症」なんて出てこないけど、複数の世界を生きるかのようなこの感じは、統合失調症の人特有の世界の見え方な気がします。

    読んでいてこの小説は、すごく静か。驚くくらいに音がないです。
    事実だけを見ると波乱万丈な人生を送っている "私" ですが、どこか現実とは遠いところで生きているかのよう。
    生きにくさを抱えながらも、「書く」ということがいつも人生の危機から彼女を救ってくれていたように思います。それから、いつでも逃げ込める空想の世界が。

    朝起きて、何か夢を見たみたい、と感じるのと同じ読了感。不思議な、小説でした。この世界を作り出す小川さんの力がまたすごい。

  • ほぼ内容忘れちゃった。
    ただ、小川さんって
    読み終えて気持ち良かった
    ってのだけ残ってる…

    失踪者たちの王国
    盗作
    キリコさんの失敗
    エーデルワイス
    涙腺水晶結石症
    時計工場
    蘇生

  • この主人公の女性は、会話するときはどんな内容なんだろうか。返事ぐらいしかしないのかな。不思議ちゃん。お子さんが幸せになるといいなぁ。小川さんは既読感があまりない。ストーリーが思いもよらない展開をしたりするから。そこが面白い。

  • なんとも言えない。
    とても読ませる文章だし、気持ちになにか残ってるけど言葉に出来ない。
    注意深く読まないと章が変わった時どこにいるのか分からなくなる。
    アポロが助かって良かった。

  • なんでこの人の書く物語は
    こんなにかなしくて絶望的でくらくて
    なのになぜか優しくてどこかにひっそり希望が隠れてるんだろう

    そして、夢と現の狭間のような世界

  • 読んだ時の環境も影響しているのかもしれないが一貫性が感じられなくて読んだ後があまりすっきりしなかった。

  • お手伝いのキリコさんのお話は良かったな。自分の出来ることをやるとこ、私との内緒のおやつとか何でも話せる人になっていた。しかし、頼まれ事で失敗して辞めさせらてしまった。

  • 人間は全員クズだと豪語してはばからない私ではあるが、それでも人生のどこかで誰かに助けられた場面があったことは認めざるを得ない。いかに人間嫌いな私でも、たった一人で生きてきたわけではない。普通の人は助けてくれる人というのは家族であったり恋人や友達であったりするのかもしれない。だが極端に知り合いの少ない私は、いざというとき力になってくれたのは、赤の他人であることが多かった。通りすがりの優しいおばちゃんや、名前も告げずに去っていったサラリーマン。よくぞあの時あのタイミングで、と奇跡を信じたくなるほどありがたい助けもあった。
     たぶん、世の中はそいういうふうにできているのだ。不幸と幸福のバランスがとれるように、なんらかの物理的作用が働くに違いない。
     だから、用事が終わった後煙のように消えてしまってもちっとも不思議ではない。たとえそれが恋人であっても。役目を終えて舞台から降りただけなのだから。

  • 再読。
    夢と現の境界線が曖昧な寓話の様な7つの短編。
    "私"は少し特殊な生い立ちのせいか幼い頃から胸の内に孤独を抱えた女の子で、その"私"を現に繋ぎとめていたのが彼女の弟やキリコさんの存在だった。
    母親に顧みられない幼い"私"を魔法のように救け慈しんでくれたキリコさんはわずか1年ほどである出来事の責任を問われやめされられ、バラバラの家族の鎹であった弟の死で"私"と両親を繋ぐものはなくなってしまう。
    弟の死を機に"私"は彼方と此方を行ったり来たりするようになってしまう。
    ともすると彼方の世界に沈み込んでしまいそうになる"私"を現である此方側に引き戻してくれるのは、バスで乗り合わせる女性であったり、偽物の弟であったり、アナスタシアと名乗る老女であったり… どう考えても彼方側の住人と思われる人物たち。
    そして、まだ幼く言葉を発することも出来ない息子と、飼い犬のアポロ。
    息子とアポロの描写には穏やかで温かな陽だまりのような幸福を感じる。

    作品の全体を通して、かなりヘビーな人生を送っている"私"の物語は常に穏やかに静かに進行していてドラマチックさはないけれど、美しい文章に心を掴んで離さない魅力がある。

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