独航記 (角川文庫)

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著者 : 辺見庸
  • 角川書店 (2004年1月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (425ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043417094

独航記 (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  •  流連荒亡と著者は言うが、大樹に寄らず生身の人間の感性を尖らせて、社会、政治、経済、国際関係にまで言及していく凄さに圧倒されてしまう。
     初出が1966年からだが、冒頭のオームの麻原、死刑存廃、日米関係、石原都知事のアジア観など、今なおいずれも目を離せない問題ばかりだ。
     1981年の「アジア」に書かれた「中国の失われた世代」はリアルタイムで読んだもので、懐かしく中国への関心をより深めたキッカケとなった思い出の一文。最近でもまた中国でデモや、活動家の拘束や日本人記者の取材妨害があり、これもまた終わりをみない問題だ。
     本書の中では閑話休題となるのかエッセイの「遊糸」がいい。蜘蛛が糸を出しながら空中移動をする様、日本の山形では雪迎えという現象を私も見てみたくなった。その情景が浮かんできそう。
     辺見氏の作品が好きなのは、私自身が平和で、翌日の命があってあたりまえの様な生活のなかで気付かないことに、目を向けさせてくれること。

  • 2004年出版。四半世紀にわたって書かれた発言や評論、コラム、エッセイなどから、辺見氏が自ら選定したノンジャンルの一冊。

    硬派なジャーナリストの印象とは違った、だらしのない一面を見せつつも、やはりベトナム戦争や中国・民主の壁事件、日本のメディアに対する指摘・洞察は、自身の体験も含め、鋭く、正鵠を射ている。

    辺見氏が昔からよく使用する「鵺のような全体主義」というキーワード。その厄介さは「主体」がなく、明確な責任をもった主体が皆無に等しく、全員が自覚なき共犯者で、無責任に絡まりあい発光しあう、と。

    今の日本の世相と変わらないどころか、むしろ酷くなっているのではないか。

  • しんどいドキュメンタリー。

  • 辺見庸という作家の本質は「眼」である。読者に日常世界の異様を伝えようとする、そのたぐいまれなる視覚。異者としての視点。<ふつう>には吸収しきれない自己。短文になればなるほど、辺見の文章は重みを増す。細部に踏みいるほど、自己さえも裏返してしまう。こんなにも自己をさらけ出してしまうと、結局は無防備に自己の弱さのなかに存在を切り刻んでしまいかねないのだが、辺見の魂は根ぶとい。彼の地下茎はそんじょそこらの右翼連中には掘り返せない。漢字を使いながら中国を批判する輩(やから)。焼き肉を食いながら韓国を批判する輩(やから)。その程度のレベルの読者では批判しきれない深度がこの本にはある。

  • 今このY字路にさしかかって。こっちのキレイな道とこっちの汚い道。アナタはどっちを通るか?と聞かれれば。それは最初から答えが決められていて誰もがキレイな道を通ろうと思うに決まっているではないか。じつに腹立たしく馬鹿馬鹿しい。それは今まで汚いもの、醜いものを避けてきたキレイ好きな者たちが散々食い散らかした挙句に思いついた自己欺瞞も甚だしい愚問だと著者は真っ向から反論するだろうと想像した。著者にとってこのY字路は最終的に一本の道で繋がっていくことなど端からお見通しだ。キレイな道は最初から最後までキレイな道だ。汚い道は最初から最後までとことん汚い道だ。この最後の最後で道は交わる。著者はいつもこのゴールフラッグ辺りで両者を待ち構えているような感じがする。オレはY字路なんて通らない。もう一本作って先で待ってる。どのみち繋がってんだ。言葉の魔術師。ありきたりでしょーもない表現だがボクは著者の文章表現に毎回ド肝を抜かれる。

  • すごい。

  • 戦争の共犯者と成り下がったメディアへの反論。なかでも「手の幻想」にある氏がポルポトの掌から直接感じた素直な感想は読み応えあり。

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独航記 (角川文庫)の作品紹介

愛と記憶から始まる甘美なエロティシズムへの誘い。一見豊かな風景が内蔵するこの国の神経症的な不安と脆さ。メディアと戦争の鵺のような共犯関係への指摘-ジャーナリストとして作家として、まったく独自の歩みをする著者の四半世紀にわたる全ジャンル表現の中から、節目になった文芸作品、発言、評論など計85編を収録。ラディカルで豊饒な辺見庸文学の鮮やかな足跡と刻印。巻末に書き下ろし最新原稿を収録。

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