- Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043437023
作品紹介・あらすじ
家族ってなんだろう。社会の最小単位、万人のルーツでもある家族という名の病とぶつかり合い。それでも、今そこにある人々の心。淡々とした語りかけが深い共感を呼ぶ、芥川賞作家によるエッセイ集。
感想・レビュー・書評
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おそらく初読みの作家さん。短編ならば読んだ事があるかもしれない。
暗い話を書き続ける作家として評される事もあるみたいですが、私はほっとする気持になれた本でした。
題名どおり家族がテーマになっていて、重たい話もサラッと書かれています。
家族の中で起きる理屈ではないどうにも出来ない事をただ事実を淡々と書かれています。
そんなものだよねと、救われはしなくてもこれが家族というものなんだと腑に落ちるような気持になれました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
あまり思い出せないです。
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読んでいてすっごく面白いか、という評価軸はおいておいて。
形態様々な家族を標本のようにして、その本質に迫ろうとしている本。というか、サンプルも多く、その本質が結局見つからないことを示唆していたり。
家族というものは、少なからず皆がその一部として関わってきたルーツであり、ある部分からは一定レベルの直接的理解ができるもの。万国共通であり、それが人間社会の発展を支えていたシステムそのものだったから。関わらざるを得ない束縛的な。ただ、その直接的理解を勝手に拡大させ、自己解釈の範囲を増やしてしまうと、説明的理解が必要な他者にまで敷衍してしまう可能性がある。その可能性は、人類共通だからこそ大きくなるもので、さらに経験値が上がる年嵩と比例して上増させるのではないか。「家族」の話はそれが可能なのだ。
それは一言で経験の傲慢というのでしょう。
「家族」のエピソードをポロポロと読んでいて、その傲慢さが私にはあるな、と反省させてくれた。
テーマが違えど通ずる話題は数多見つかるでしょう。よく覚えときます。
まあそれを望んで柳さんがそれを狙って書いたかわからないのですが。
渡辺万里の解説も好き。 -
エッセイというジャンルなので読み始めた時「違うじゃん!」と思ったのですが、エッセイというより観察記録に近いですね。でも星新一先生なみのショートリアルストーリーで「耳袋」並みの怖さで良かったです。最後はちゃんとしたエッセイになってましたし、構成も凄い良かったです。
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初の柳美里。様々な家族の一場面の切り取り。まさに標本。
他者を、中でも他者の家族を受け入れるには、自分の経験や感受性では足らない。 -
冷静な観察眼と筆致に読ませられたが
個人的には読書は楽しい方が良い -
家族にまつわるエッセイ集。
そのほとんどが世間の理想像、
もしくは「普通」と呼ばれる家族の体をなしていない。
悲しみや苦しみ、怒りに満ちた家族像である。
そういった家族を取り上げ、
自らの家族をも取り上げ、
家族を切り取る。
そこに余分な考察を加えないのも、
「標本」と題名に記したところなのだと思う。
作品に記されたように柳美里さん自身が幸福な生い立ちとは遠い。
しかし、この作品では世間の家族の虚像を暴きながらも、
「普通」の家族を追い求めているように見える。
そんな「普通」を実際に見てみたいという欲望を感じる。
家族という宇宙に夢を見たいと感じるのだ。 -
簡潔に感情を交えずに淡々とたくさんの家族の話を描いているエッセイで、小説よりもとても印象に残る。読後にいつまでも考えてしまう。