太陽の子 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043520107

作品紹介・あらすじ

ふうちゃんは、神戸生まれの女の子。おとうさんとおかあさんは沖縄出身で、神戸の下町で琉球料理の店「てだのふあ・おきなわ亭」を営んでいる。やさしい常連さんたちに囲まれて明るく育ったふうちゃんだが、六年生になった頃、おとうさんが心の病気で苦しむようになる。おとうさんの病気の原因は何なのか?ふうちゃんは、「沖縄と戦争」にその鍵があることに気づきはじめる…。戦争は本当に終わっているのだろうか。なぜおとうさんの心の中でだけ戦争は続くのか?今、日本人が本当に知らなくてはならないことがここにある。

感想・レビュー・書評

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  • 昔、若い時に読んだので、今子育てを経験してからまた読むと、きっと感想が違うだろう。


  • 神戸の沖縄料理店「太陽の子(てだのふあ)おきなわ亭」。
    そこに集まる沖縄出身の人々の過去の秘密や悲しみを、てだのふあを営む夫婦の娘、ふうちゃんの目を通して伝えた物語です。

    心の病に苦しむ父、片腕を失ったロクさん。この店に来る人はみんなかなしみを背負って生きています。
    つらいことを経験した分、他の人に同じ思いをさせまいと、周りに優しく接しているのです。

    現在、戦争は歴史の授業で年号や事がらだけを覚えて、受験が終わったらぜんぶ忘れてしまいます。
    しかしそこに人々のどんな思いがあったのかを知り、考え、そしてそれを忘れないでいることが、戦争の本当の学びなんだと思いました。

    過去の歴史もきちんと知った上で、またいつか今の美しい沖縄を見に行きたいなと思います。

  • 優しさとは何か、歴史を学ぶとはどういうことなのかが物語を通してじわじわ伝わってくる。沖縄で起きた惨劇は、その時も、その後も社会の中で形を変えて影響し続けた。

    ふうちゃんの幼さが人との出会いやお父さんの心の病気を通してどんどん成長していく。そんなふうちゃんの成長に合わせて読者も同じように喜んで、怒って、悲しんで、傷ついて、沖縄の歴史や本当の優しさを知っていく。

  • 沖縄出身の両親とともに神戸で生まれ育った「ふうちゃん」と家族が営む「てだのふあ・おきなわ亭」(沖縄の家庭料理の店)を舞台に、そこに集う沖縄出身の人々の物語。

    小学6年生のふうちゃんが主人公の物語ではあるが、本作は単なる物語と呼ぶべきではない。

    日本人とは、沖縄とは、生きるとは、死ぬとは...

    「とんび」(重松清)を読んだ時に感じた「考えさせられる」とはちょっと違いますが、本作もすごく考えさせられる作品でした。

    本作の中で少し触れられた先の大戦での沖縄の悲劇。

    「悲劇」なんて簡単な一言で済ませてはいけない。

    「太陽の子」というタイトルから想像していた内容よりもすごく深い作品でした。


    説明
    内容紹介
    ふうちゃんが六年生になった頃、お父さんが心の病気にかかった。お父さんの病気は、どうやら沖縄と戦争に原因があるらしい。なぜ、お父さんの心の中だけ戦争は続くのだろう? 著者渾身の長編小説!
    内容(「BOOK」データベースより)
    ふうちゃんは、神戸生まれの女の子。おとうさんとおかあさんは沖縄出身で、神戸の下町で琉球料理の店「てだのふあ・おきなわ亭」を営んでいる。やさしい常連さんたちに囲まれて明るく育ったふうちゃんだが、六年生になった頃、おとうさんが心の病気で苦しむようになる。おとうさんの病気の原因は何なのか?ふうちゃんは、「沖縄と戦争」にその鍵があることに気づきはじめる…。戦争は本当に終わっているのだろうか。なぜおとうさんの心の中でだけ戦争は続くのか?今、日本人が本当に知らなくてはならないことがここにある。

  • 【いまも戦争はおわっていない。】
    神戸にある沖縄料理屋『てだのふあ・おきなわ亭』に集う人たちの人生を小学生のふうちゃんの純粋な心を介して紐解いていく物語。沖縄とそれ以外の日本との間にある構造的な差別や不平等が登場人物の生と一緒にあぶりだされています。
    てだのふあ・おきなわ亭の人たちと触れ合うことで自分自身の生をみつめたキヨシ少年が言っています。「日本は沖縄の心にふれて、だんだんまともになっていくのとちがうやろか。そやなかったら日本は死ぬだけや。」
    太陽のような明るい未来への象徴ともいえる、こどもの生に、戦争という暗闇で散っていった命。沖縄戦や原爆で深い苦痛、悲しみを負った人たちの生を対比させていくことで、生と死、過去と未来を対極ではなく、連なり合う一つのものだと伝えてくれています。自分の生がどれほど沢山の人の悲しみの果てにあるのかを思うことで、本当の平和について考えたふうちゃんの心は、今を生きる私たちにも必要な心なのではないでしょうか。(菊地・PITOPE)

  • 「いい話」かどうかは、わからない。
    それでも、読んでいて、涙がこぼれてきた。
    ふうちゃんの、キラキラとした真っ直ぐな目が、眩しくて美しい。

    生まれる前から沖縄に基地はあった。
    そんな私達からすると、沖縄の問題はどこか他人事だったのかもしれない。
    沖縄の明るい人柄を思い浮かべて、あの人達なら乗り越えられる、なんて勝手に考えてたのかもしれない。
    沖縄の人たちは、琉球の時代からずっと、ずっと虐げられてきていた。
    平等って、なんなんだろう。

    『今、生きているぼくたちの方から歴史をたどる勉強を、はじめようやないか。』

  • 11歳の少女ふうちゃんの目線で語られていて、人間の喜びや悲しみ、優しさや醜さや愚かさ、戦争の悲惨さなどが、すごくわかりやすく多感に表現されている。
    ふうちゃんの感受性の強さ、人から学んでいく心の柔軟さ、そして可愛らしさに心打たれ感動します。
    ふうちゃんを取り巻く人々の強さから来る優しさも心に沁みる。そして彼らが告白する沖縄戦の惨状は壮絶を極めており、戦後沖縄の人に対する差別が酷かった事にも衝撃を受け沖縄に対する理解も深まった様に思う。
    10代とかもっと早く読んでおけば良かった。しかし歳を重ねないとわからない事もある。知るべき事、理解すべき事はまだまだたくさんあると痛感する。

  • 戦場になった沖縄、そこで戦わざるをえなかった人たち。生き残っても心の傷が癒えず、一生苦しみを抱えて生きていかなければならない人もいる。

    主人公の12歳の女の子が、ノイローゼになり働けなくなってしまったお父さんを健気に支えながら、なぜお父さんはこんな風になってしまったのか、沖縄で起きた戦争とは、沖縄の人たちの思いとは、などについて一生懸命学んでいこうとする姿に何度も涙が溢れました。

    沖縄で起こったことを忘れないように、毎年読もうと思った一冊です。

  •  最後は切ないけど、とても心温まる素敵なお話だった。ふうちゃんのお父さんは、沖縄での戦争という一人ではとても背負いきれない経験のために、心を病んでしまった。主人公のふうちゃん自身はもちろん、ふうちゃんの周りの大人たちも同級生のときちゃんも真剣に物事に向き合っている人たちばかり。私も子ども時代、何かと物事を隠しがちな大人は嫌いだったが、時期を考えず何でもかんでも教えてしまってもいけなかったのかと気づいた。
     集団就職や沖縄差別があったことを初めて知った。特に沖縄の人への風当たりが強かったのはなぜだったんだろう。沖縄の人への差別というか、自分の属するコミュニティ以外を区別して排斥しようとする行動はどこにでもあるんだろうな。

  • 沖縄の歴史なんて、詳しいわけでも精通しているわけでもないけど、それでも、人は辛い時、苦しい時、悲しい時にこそ、絆というものが一番大切なのだと思う。
    それにしても、ふうちゃんのなんと愛らしいこと!
    その一途さに、心が震えるほどだ。彼女に愛される全ての人は幸せだ。

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著者プロフィール

1974年に発表した『兎の眼』が大ベストセラーに。1979年、同作品で第一回路傍の石文学賞を受賞。生涯を通じて、子どもの可能性を信じた作品を生み出し続けた。代表作に『太陽の子』『天の瞳』シリーズなど。2006年没。

「2009年 『天の瞳 最終話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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