- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043572014
感想・レビュー・書評
-
文庫本の初版が出てから15年以上。今の表紙はこれではなくて、映像化されるさいなどに付けられる二重表紙とかでもなくて、壇蜜の上半身写真なのです。このタイトルで壇蜜で、ストーカーの話となると、エロ系なのか。そうじゃない。
11年前の学生だった頃にたった一度、向かい合ってコーヒーを飲んだだけの憧れの女性。もう一度だけ一緒にコーヒーを飲めたら。そんな思いを抱いて彼女をストーキングする男・三井。合鍵をつくって彼女の家に侵入し、ベッドやソファの下に潜り込んで一部始終を観察するのですから、明らかに変態。なのにストーカー男に感情移入してしまうのはなぜでしょう。
存在感がまるでなくて、誰からも忘れられてきた彼は、妄想を募らせたりしないから。ひとときの夢を見させてくれた彼女に、幸せでいてほしい、それだけ。幸せになる相手が自分でなくたっていいし、自分がその相手になれるとは少しも思っちゃいません。
ストーカーを応援することになって苦笑。だけどちょっぴりほろ苦く、甘酸っぱい、情熱に満ちた恋と喜び。もう少しだけ、望みを抱いてもいいかもよ、三井クン。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「彼女は今頃どうしているだろう?」
孤独な人生に唯一の幸せをくれた、彼女に一目だけでも会いたい。
探し出した11年ぶりの彼女は変わり果てた姿だった。何があったのか?理由を知る為に取った手段は…
「どんなにおどろおどろしい話なのだろう!」と期待しました。
期待通りの働きを見せた主人公でしたが、不思議と嫌悪感を持たなかった。
最終的には純愛小説にすら感じられましたが、フィクションだから許されるよなぁ。
ストーカーか、純愛か。面白かった。 -
大石圭の人気ホラー。
過去ログ。 -
読み終わって本を抱きしめキスしたくなった作品。タイトルからは想像も付かない爽快な一冊。ストーキングをしている対象の女性が、夫から凄まじいDVを受けているという話。ストーカーを応援したのは初めて。最後はどうなるんだろう?とページを捲る手を止められなかった。快作。
-
友達に勧められたので読んでみた。自分からは手に取らないジャンルの小説で、この作家さんとの相性が悪かったので今後も読むことはない……と思う。
ストーカー行為と家庭内の虐待、というシリアスな内容を描いている割に文章は平易で、良く言えば読みやすく、悪く言えば味わいがない。一人称で進むんだけどただただ事実を書き連ねている感じが強いので、三人称の方が良かったのでは……。
主人公が観賞魚店を営んでるんだけど、魚の描写が執拗すぎて、そこに文章を割きすぎるあまり、見識のある人からのツッコミを必死に避けようとしているように見えてしまう。熱帯魚が後半の展開に大きく影響を及ぼすとかならまだしも、ただ知識を披露されるだけなので「いや、それはもう分かったからさ……」となってしまって……。
一番気になったのはどこかちぐはぐなリアリティと、人物造形の弱さ。「暴力夫の家に忍び込んで初恋の相手を見守る」って、結構大きめの嘘だと思うんです。現実的に考えれば絶対にバレるし、妻の方が薄々気付いているなら、潔癖症っぽく書かれている夫が気付かないわけがないよなぁと。なので、その大きな嘘をこの物語の一番面白いところとして採用しているのだから、それ以外の部分はリアリティの担保に努めてほしかったというのが自分の感想。それに付随するイメージなのかもしれないけど、人間造形については、3人とも一貫した人間としての書かれ方がされてないように感じてしまった。食に全く興味が無いと描写されていた主人公が夫婦の食卓に並んだ料理について触れてしまっていたり、世間体をもの凄く気にする夫として書かれている割に、簡単に顔殴ったり……(会社の同僚や自分の両親に会わせる機会を想定するなら徹底して服の下のみを痛めつけるべきでは)
これもある種の純愛、みたいなテーマ自体は嫌いじゃないです。でもまあ、これで主人公の容姿がもの凄く醜いものだったとしても、同じ結末になったかなぁとは思ってしまう。最後までこれといって予想を裏切る展開もなかったので、評価は低め。とか書いちゃって平気かな……この作者の人、めっちゃエゴサしてそうなんだよな。まあいいか。 -
ストーカー行為に及ぶ人に興味が湧いて読んでみました。
現実に存在するストーカーが、実際にこの小説の主人公のような生育環境を理由に生まれるのかは定かではありませんが、少なくとも、なるほどと納得し、いつのまにか自分もストーカーになっていました。
こういった奇異な行動をとる人も、読者と地続きの場所にいる存在だと感じさせることができることが小説の良いところだと思うので、そういった点において私にはとても愉快なエンタメでした。ただし、暴力的な描写が多いので、苦手な方にはお勧めしません。
ひとつ残念だったのは、読者に余白があまり与えられない点です。読み進めて得られる情報は、登場人物の苦渋だけに終始しており、文中の言葉の深遠さや人物描写に陶酔することはありませんでした。
-
主人公?の「ぼく」はそこそこ順調にイカれてる粘着気質のストーカーなのですが、その主人公の気持ち悪さを遥かに凌駕するほどのヒロイン夫婦の破綻ぶりが素晴らしく、主人公が幸せになっても良いんじゃないかなあ、と思わせるようなストーリー展開でした。ラストも美しさを感じて良かったです。サスペンスと言うより、ラブストーリーですね。
-
ストーカーの主人公が昔好きだった女性の家に潜んで、いかれた暴力夫に酷い扱いを受けている彼女を歯ぎしりしながらただ眺めているというような話。
あらすじだけ見れば江戸川乱歩の『人間椅子』か、乙一の『暗いところで待ち合わせ』かといった風で面白そうに見える、んだけど、とにかく出てくるキャラクターの行動や思考が類型的で薄っぺらく、主人公のストーカーも、暴力をふるう旦那も、ふるわれるヒロインもみんな予想のつくようなセリフしか言わないしやりそうなことしかしない。とにかくこちらの予測から一歩も足を踏み出してこない。
50頁ほど読み飛ばしてあとから不明な点をこちらの想像で補ったとしても大体当たってるから問題ないのではないかと思えてしまうような小説だった。
全体に平易な文章でまとまっていて読みやすくはあった。