万葉集 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫 92 ビギナーズ・クラシックス)

著者 :
制作 : 角川書店 
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043574063

作品紹介・あらすじ

新元号の典拠部分の言及あり。

『万葉集』の梅花の歌三十二首并せて序にある、「時に、初春の令月にして、気淑く風和ぐ。梅は鏡前の粉を披く、蘭は珮後の香を薫らす」が新元号の典拠となっています。『万葉集 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典』153ページに、少々序文についての言及があります。

さまざまな階層の人々が自らの心を歌ったわが国最古の歌集「万葉集」から名歌約140首を選び丁寧に解説。参考歌を含めて約200首を収録。参考情報を付しながら、歌に託した万葉人のさまざまな思いがよくわかるように構成。原文も現代語訳も総ルビ付きで、朗読にも最適。

感想・レビュー・書評

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  • 大伴家持が、全国各地、身分の高い人から庶民まで、男も女も幅広く集めた、約130年にわたる歌を編纂したと言われる日本最古の歌集。その数約45百首。本書は約2百首を抄録してわかりやすい解説を施しています。情熱的な歌から死別離別の慟哭哀愁の歌まで人間の感情は変わりません。私はスケールが大きくてロマンティックな柿本人麻呂の歌が大好きです。万葉がなで書かれたものが250年後には今も私たちが使うかな文字に進化しています。その到達点と言われるものが「源氏物語」ですね。

  • 女も男も自分を飾ることなく、おおらかで素直な歌なんだなぁと、読み終えたとき一番に思い浮かびました。訪れない愛する人を待つ歌でも、人の噂にのぼる燃えるような恋愛の歌でも、地に足がついているような感覚です。揺るぎない想いが込められているのでしょう。
    歌には、ちょっぴり拗ねたような素振りを見せたり、捨てぜりふを吐いたりもありますが、何だか可愛げがありました。そして、愛しい人はこの人だけ。その想いがまっすぐ歌にのっています。
    だから、そのぶん愛する人の死を悼む挽歌には遺される者の哀しみが宿ります。それでも歌にすることによって、哀しみを受け入れながら前を向くことが出来たのではないでしょうか。

    そんな逞しくおおらかな人々が詠んだ「初期万葉」の時代。そう思えば、有名な額田王の『あかねさす……』は、忍ぶ恋心を詠んだというよりも宴席を盛り上げるためのきわどいやりとり……とのことも納得です。
    でも、やっぱり。大人の恋心が秘められていてほしいな……と思うのですが。
    太陽のような歌の合間にひっそりと降る絹糸のような雨。そんな印象を受けたのが、大伯皇女が訪ねてきた大津皇子を帰すときに詠んだ歌、そして挽歌です。運命の荒波に呑み込まれてしまった弟への愛が込められています。ひとりぼっちになる少女の心細さが溢れていました。
    そうかと思うと、高市皇子の妻である但馬皇女は、恋仲となった穂積皇子との恋愛についての噂話に対しての歌を詠んでいます。周囲の好き勝手に語るゴシップネタなんてどこ吹く風。そんなことものともしていません。
    歌によってそれぞれ皇女の性格が見えてきそうですね。
    最後に。
    『天の海に 雲の波立ち 月の舟 星の林に 漕ぎ隠る見ゆ』人麻呂歌集
    なんてSFちっくなんだろう。キラキラしてると思いませんか。

  • 言うまでもなく、最古の当時の全層の人々から収集した歌集である「万葉集」の入門書というか、「ビギナーズ クラシックス」な、ガイドブックである。
    義務教育にも、万葉集を取り上げられていて、今さら入門もないとおもうし、日本史史上初の、五経四書以外で、万葉集から引用された年号の令和の出典元であることから近年存在感が大きいとは思いますが。

    万葉集には、4期の編纂があって、20巻には、それぞれの特徴がある。さまざまな写本がつたえられていて、収録された歌の数は、4500あまりとされている。
    この書は、4540首を採用しているようだが、同じ、角川ソフィア文庫の新版「万葉集」全4巻の合計は、4516首である。

    万葉の葉とは年という意味で、いつまでも(1万年後でも)残る歌集であるという当時の意気込みが伝わってきます。

    ・枕言葉 ある語の前に置かれる決まった表現 千早振る+神代もきかず... 300弱あり、他にも、序詞(じょことば)がある

    ・長歌と反歌 長歌とは、七五調でかかられた長文の歌であり、その歌を受けて、続けれられる 五七五七七の短歌が、反歌である。長歌は、260余首あり、他の歌集には、ない多さである。

    ・部立(ぶだて) 歌の種類をいう。

       挽歌 死者を悼む歌
       相聞 恋、情をうたった歌
       雑歌 挽歌でも、相聞でもない歌
       正述心緒 心情をまっすぐに述べる
       寄物陳思 事物に託して心情をのべる

       他 東歌 東国の人の歌
     
    ・万葉集の成立 本書によれば、雄略天皇や磐姫皇后の伝承歌を除くと、629年から759年までの130年の歌が収められている。その成立は、700年から780年ごろにかけてとある。
    4期にわたっているようであり、母体となったテキストに追加されている形で、膨大なアーカイブが成立したようだ。

    構成は、2部20巻

    第1部
     巻1 各天皇の歌、雑歌  
     巻2 各天皇の歌、相聞、挽歌 これが、第1期、第2期になる

     巻3 第3期、第4期
     巻4 同上 相聞

     巻5 大伴旅人、山上憶良を中心といた大宰府官人の歌、漢詩を含む
     巻6 雑歌、 ここまですべて歌人が判明

     巻7 すべてよみびと知らず 雑歌、譬喩歌、挽歌の3部からなる、旋頭歌25首、人麻呂歌集から60首
     巻8 四季の歌、雑歌と相聞
     巻9 雑歌、相聞、挽歌の3部
     巻10 四季の歌、雑歌、相聞、ほとんど、よみびと知らず、人麻呂歌集より70首
     巻11 2巻セットで、古今相聞往来歌上
     巻12 2巻セットで、古今相聞往来歌下
     巻13 大和あたりの長歌 よみびと知らず
     巻14 東歌 よみびと知らず
     巻15 部立はなく、遣新羅使節の歌、中臣宅守と狭野弟上娘子の贈答歌群
     巻16 由縁有る雑歌 伝説歌、地方民謡 巻15,16は、付属ではないかと推測している

    第2部 大伴家持編
     巻17 家持の歌が日次で巻19までが収められている。
     巻18 同上
     巻19 同上
     巻20 防人の歌(家持が役人として担当していた)

    掲載されていた歌の中でこれはと思ったのはこの3首でした。

    悲劇の皇子、有間皇子の歌
      家にあれば 笥に盛る飯を 草枕 旅にしあれば 椎の葉に盛る(142)

    笠郎女
      わが形見 見つつ思はせ あらたまの 年の緒長く われも思はむ(587)

    遣唐使の母 反歌
      旅人の 宿りせむ野に 霜降らば 吾が子羽ぐくめ 天の鶴群(1791)

  • 1300年前には歌しかなかったからなのか、心の有り様を言葉で表現することにおいては現代人よりも遥かに上手(うわて)です。いや、というよりも、気持ちを言葉にすることって、現代人にとっては遠ざかってしまったことのような気もします。

    風の様、土のにおい、草木花々の彩り香り、天気や月、星雲の形、誰かを想う気持ちーー。ありとあらゆるものを歌材にしようとする態度は、一瞬一瞬を楽しもうとする姿にも感じます。これほど豊かな表現で万物を歌い上げられる万葉人が我々を見たら、きっと嘆くんだろうなあ。

    古典に触れ、その感情を現代で追体験することで、これまでよりずっと素直で豊かな生活が送れるものと思います。

  • 最近私の中で日本文化や日本人の心とは何だろうということが気になっていて、その流れで万葉集にも触れてみるかと一番易しそうなのを購入。解説には初歩的だけど一般の人は知らないことがきちんと書いてあって、初心者には嬉しい。適切な挿絵やコラムからも読者への配慮を感じた。

    一読してみた全体の印象としては「素朴さ」をすごく感じた。どの歌でも湧き上がった感情が素直に表現されている感じ。なかにはこれ単に事実を述べてるだけじゃないかと思うのもあったが、それも含めて飾り気のなさには好印象を受けた。そのほかよかったと思うのは、貴族を中心に千年以上前の暮らしぶりがうかがい知れたこと。平民の歌も収録されていて、比べると情緒の面では身分で差はなかったんだなあと思った。今でも広く語られている浦島太郎伝説などの説話も万葉集にすでに載っていて、昔話の歴史の長さに驚いた。

  • 「万葉集」は現存最古の歌集と言われている。二十巻。歌数は約4,540首。舒明天皇の時代(629年~641年)から天平宝字3年(759年)まで、約130年間の歌が収められている。700年から780年頃まで数次にわたる作業を経て、奈良時代末に現行の体裁が整ったという。
    本書はその中から約140首を選んである。
    1200年も前だというのに、歌われている風景が目の前に立ち上がり、心情が心に響く。これは同じ日本人だからだろうか。海外の人がこの本を読んでどのような感想を抱くのか興味がある。
    最後に一首引用しておく。
    田子の浦に うち出てて見れば 真白にぞ 富士の高嶺に 雪は降りける
    田子の浦を通ってひろびろと視界がひらけるところに出てみるとなんと真っ白に富士の高値には雪が積もっていたのだった

  • 急に古典文学を読みたくなったので購入。
    選ばれている歌の傾向なのかも知れないが、悲惨な境遇の歌が多い。特に目につくのが死別の歌。柿本人麻呂と大伴旅人の亡き妻を悼む歌、山上憶良の幼児の死を悼む歌は心痛いかばかりであったろうかと思わずにいられない。

  • 他人の作った和歌が読みたいなあ、、とふと思いまずは万葉集からでしょと手にとってみました。

    万葉集はますらをぶりと言われるだけあって、一首一首が力強く、はっきりとしていて、直接的で感情がダイレクトに伝わる気がする。
    悲しい歌は悲しく、恋しい歌は恋しく、1000年以上の時が経っても人が感情を動かされる場面は変わらず、私たちは遠い昔の人々のことを思い感情を動かされる。…とても素敵で素晴らしく、万葉集を読んでよかったと思いました。

    好きな歌は笠郎女の歌で、大伴家持を恋しく想いながら歌った気持ちが痛いほど伝わります。
    きっと彼女は燃えるように恋をして、耐えがたいほど悲しかったのでしょう。

    君に恋ひ いたもすべなみ 奈良山の 小松が下に 立ち嘆くかも

    また、本書は寸評が逸材です。
    現代語訳だけだとイマイチ想像しづらい場面もあるのですが、そこを寸評で補っていて、歌が読まれた空気感や情景が目の前に浮かんできます。
    この寸評のおかげで更に読みやすく、感情移入しやすくなっていると言っても過言ではないですね。

    全首読んでみたいなと思ったので、また全首載っているものを買います。

  •  入試の為に三年ぶりに再読。以前読んだときはさほど魅力が分からず、あまり印象に残らなかった。今回読了して万葉集の文字の間から溢れる躍動感に翻弄されっぱなし。むしろ、三年前の自分を殴りたくなるほど。相聞・挽歌以外にも長歌や、地域の伝承歌など…、本当に多様で読んでいて胸が躍っていた。今までは額田王以外にも推し歌人が増えた。 
     一人目は、大伴坂上郎女。大伴家持の叔母で熟練されつつも、鮮度の高い歌がとても魅力的。特に好きなのは、
    「恋ひ恋ひて 逢える時だに うるはしき 言尽くしてよ 長くと思はば」
    逢瀬の時くらい甘い言葉を聞きたいと思う女性の心情が素直に詠まれているところがいじらしい。特に「恋ひ恋ひて」と「言尽くしてよ」の音の響きが可愛くて口ずさみたくなる。

  • 現代語訳と解説付きで、万葉集の魅力を知ることができました。大伴旅人の歌がとても気に入りました。

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著者プロフィール



「2015年 『生きる 劉連仁の物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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