愚者と愚者 (下) ジェンダー・ファッカー・シスターズ (角川文庫 う 15-6)

著者 :
  • 角川グループパブリッシング
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  • Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043615063

感想・レビュー・書評

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  • 二律背反の根源は男性と女性。

  • 「出たとこ勝負だ!」
    と叫びながらキュートな女の子たちがAK片手に武装蜂起するなんて、最高にクレイジー。パンプキン!

     文庫下巻の解説にて「打海さんにはまだまだ書かなければいけない物語があるんだよ、と」記されています。私も同感です。だからこそ、この作品で感じたものを汲み取れたらなと思います。

     時代がきっとこの作品を遠からず必要とする時がくるのではないかと思わずに入られない。

  • 孤児たちの戦争シリーズ第2弾の下巻。パンプキンガールズを中心に、より差別と反差別に満ちた愚者が数多く登場します。市街戦で中心人物がまた何人も死んでいきますが、不思議と悲惨な空気が無いのは作者の狙いなのでしょう

  • もういい、スタバのことはもういい!!ディティールに関してこの小説に求める事自体が間違っていたのだ。
    ただ、押井守とか若手のアニメの演出家が食指を伸ばしそうだか嫌だな、なんだか嫌だなそういうの。
    だって戦争や内乱においてイデオロギーとか思想は理想は後付じゃないの?そこを前面に押し出されても、ねぇ。
    後、下巻で若干ぼろが出たので触れておくと、日本という国はジェンダーが極めて強い国なのに、その特性を小説で上手く生かせてないので、下巻の主人公たちが類型的に成ってしまってる。それは勿体無い気がする。あと後半に行くに従って、殆ど「年表」や「ニュース記事」状態になってる事態の推移は問題である。まあでもこの小説はそういう所をつついても仕方ない気がするけど。

  • 小説を読むときはだいたい俯瞰しているように世界に入り込むのだけど、
    このシリーズはその世界に立っているような気分にたびたび陥る。
    そしてよく置いてきぼりを食らう。
    一言で言ってしまえば、リアルだ。

  • ボーイズ編の上巻から替わって、ガールズ編、下巻です。

    主人公は月田椿子さん。今はひとりで組織のボスを務めます。彼女たちの組織とその動きはどちらかといえば、「正攻法で生き残ろうとする」軍人の裏をいくものです。そういった「ノーマル(厳密には違うと思うけどあえて言ってみる)」な立場からはじき出された者をすくい上げることも、「ノーマル」な世界の瓦解に喜ぶことも彼女たちのお仕事。戦況も上巻よりますます厳しく、安穏としてもいられなくなるけれど、どんな局面でも「出たとこ勝負!」の掛け声が華やかで凛々しい(笑)。

    海人は後方へ退き、戦友の葉郎が前面に出てくるのも新鮮に読めました。これは単に持ち場の関係だと思いますが、次巻以降の展開の必要性から立ち位置を変えつつもあったのでしょう。

    このシリーズは次に「覇者と覇者」と題される巻で完結する予定だったと聞きましたが、打海さんのご逝去によって未完となりました。このノーマン・メイラーの著書をもじった題名も、初めは違和感を持ちましたが、読んでいるとそれなりに納得がいく。誰と誰が覇者になるのか、続きが見たかった反面、中途半端なオチだったら暴れる(笑)とも思いますので、これでよかったのかも…と思いながら読み終えました。

    この作品を通してみるに、戦乱のディテールと進行はやけにリアルで、松本仁一さんの「カラシニコフ」そのままの混沌が生きていますが、おおむね「ファンタジックな戦記(ただし劇物と爆薬満載:笑)」かなぁとも思うのです。登場人物が妙にまっすぐで、ゆがんだ悪意とは別のところで生きていたり、小道具の文学的センスがきらきら光る局面もあったりして、「打海さんのお好きだったもの」がすべて詰め込まれているような印象を受けました。

    解説は吉田伸子さんが担当しておられ、「裸者と−」の北上次郎さんとともに「本の雑誌」関係者の書評ツートップと豪華(笑)。吉田さんの書評は私にとって、「いいこと言うなぁ!」と「何それ?」と思うときの両極端なのですが、今回は…。もう少しロジカルにお願いします。というわけで、4巻まとめてこの☆の数です。ありがとうございました。

  • 今週は結構飲み会や出張が多くて、これまた平和な一週間。
    電車に乗らねばならないことが多く、電車の中や待ち時間で少しずつ本の中の内乱の様を読む。
    ないのは秩序だけという革命の揺籃期に、女の指令官に率いられた国軍の残党、戦争狂の外人部隊、性的マイノリティの過激派、正真正銘のマフィア、どこへ向かうかわからない暴力的な女の子たち、などなど様々なグループが跳梁跋扈する混沌の世界。
    物語の中心は、前編の終章で桜子が吹っ飛ばされて後に残った椿子とパンプキンガールズ。
    「お前が罪を犯すなら、私も罪を犯そう」をテーゼに、分かり易く言うと“たにんのために命をはるってことさ”と駆けずり回り遊び狂う、この女の子の生理がエロくてキュート。
    全編を通じて突きつけられる自分が思うように生きることの尊さ(“自分で女の子と思えば女の子”)と人種性別年令主義思想の差別のない世界への希求。
    作家はこの後、逝ってしまい、どのような決着をつけたかったのかは知る由もないが、凄惨な場面を描きながら最後まで血生臭くならず、折々に描かれる葉郎の成長やラストに見る生への賛歌を見るにつけ、捨てたものでもないという戦後を想像するのも難くない。

  • 「裸者と裸者」同様、下巻は椿子を中心として描かれている。
    59歳という歳でなくなった打海氏の最後の作品。
    残念ながら未完にしてこの夜を去ってしまった。
    作品的には重く暗いイメージが付きまとうものの、
    そこには打海ワールドならぬちょっとしたスパイスが入っている。
    重いジャンルながらもちょっとしたところに
    垣間見ることのできるユーモアが
    読んでいる読者の心を和ませてくれる。
    本当に惜しい人が逝ってしまったなと感じた作品だった。

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著者プロフィール

1948年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。92年『灰姫鏡の国のスパイ』が第13回横溝正史賞優秀作を受賞し作家デビュー。2003年『ハルビン・カフェ』で第5回大藪春彦賞を受賞。07年10月逝去。

「2022年 『Memories of the never happened1 ロビンソンの家』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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