- Amazon.co.jp ・本 (802ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043620043
作品紹介・あらすじ
文明開化の音がする明治十年。一等巡査の矢作剣之進らは、ある島の珍奇な伝説の真偽を確かめるべく、東京のはずれに庵を結ぶ隠居老人を訪ねることにした。一白翁と名のるこの老人、若い頃怪異譚を求めて諸国を巡ったほどの不思議話好き。奇妙な体験談を随分と沢山持っていた。翁は静かに、そしてゆっくりと、今は亡き者どもの話を語り始める。第130回直木賞受賞の妖怪時代小説の金字塔。
感想・レビュー・書評
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続巷説百物語が市内の図書館の蔵書になくて、一作飛ばして後巷説です。
時代は、江戸から明治へと移り、妖怪話を集めてきた百介もすっかりご隠居となりました。
そこへ、一人の巡査と仲間の若者達が、ちょっと妖しげな困り事があると、知識と知恵を借りに百介の元にやってくる。そこで、経験譚として若者達に妖怪話に含まれた人間の業を語り聞かせる。といった趣向。
巷説の最後を飾る「風の神」。古式に則った百物語が繰り広げられる。百介が最期に恨みを晴らす一芝居。
この本は、お厚めで少しずつ読んだんですが、切れ目がよくて、読み進めやすかったんです。後書を読むまで気が付かなかったのですが、見開きごとの文章のレイアウトにも気を配っているとか。こだわり感が凄い。
百物語を経験した事が無くて、一度、D瓶さんの本棚でいかがでしょう。蝋燭の絵文字を誰かに作ってもらって。
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最終話が良すぎて鳥肌たった。
百物語にはじまって百物語に終わる。
百介が最後まで百介で、そこがとてもよかった。
繋がりは、なくなってはなかった。
きっと彼らは、いつも見守ってくれていた。 -
「化物っていうのはつくりものですよ。江戸の人は知っておりました。皆、知っておりましたよ。信じておりませんよ。誰も。<承前>嘘をね、嘘と承知で信じ込むしか健やかに生きる術はないんだ。煙に巻かれて霞に眩まされてね、それでもいいと夢を見る、これは夢だと知り乍ら、知ってい乍ら信じ込む」世間の常識とは全く逆の「幸福」の形を描くその魅力はここでも健在。夢も見つづければそれは真実。辛く哀しいこの世の中で、そんな生き方を否定する必要がどこにある。百物語で始まったこの物語は、百物語で幕を閉じる。いいラストだった。
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シリーズ第三弾。
明治に入り、「一白翁」と名乗るようになった山岡百介のもとに、一等巡査の矢作剣之進、その元同僚である笹村与次郎、洋行帰りの倉田正馬、剣術指南の渋谷惣兵衛の四人が、奇妙な事件を持ち込み、百介が若いころに体験した出来事を彼らに語り聞かせるという形式で物語が進んでいくことになります。
文明開化の波が押し寄せる明治の日本に、怪異の背後に人びとの複雑な心のうごめきがひそんでいることを何度も見てきた百介の知恵が、生き生きとした語り口調によってとどけられるという仕掛けにうならされました。 -
百物語シリーズ3作目です。
時代は幕末から明治へと変わり、御行の又市、山猫廻しのおぎん、事触れの治平らが登場することはありません。かれらの過去の活躍が、思い出として語られるだけです。けれど当時の仕掛けが時を経て、明治の世へ引き継がれていたりもします。
語り部である山岡百介もすっかり歳をとり、本書では一白翁と名を変え、薬研堀で隠居暮らしをしています。時が流れていくということは、寂しいものですネ。
この世は、辛く悲しいものです。ですから人は自分を騙し、世間を騙しながら、嘘の中でなんとか生きているのです。この世はすべて嘘だらけ。その嘘を本当のことだと信じ込んでしまったら、いつかはきっと破綻してしまいます。けれど、嘘を嘘だとしてしまえば、それはそれで悲しく、辛く、生きてはいけません。だからこそ嘘を嘘と承知で信じることしか、健やかに生きていく術はないのかもしれません。騙し騙され、それでも良いと夢を見る。人は誰しも、夢を夢だとわかっていながら、夢の中で生きているのかもしれませんネ。
べそかきアルルカンの詩的日常
http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/
べそかきアルルカンの“スケッチブックを小脇に抱え”
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べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2 -
地震の日に泊り覚悟の夜明かし本として買ったもの。一話目は、まさかあんなことになっているとは知らずに読みふけっていました。。。
なんだか、これまでの巷説のなかで一番好きかも。
百介さん、アニメの印象が強いけどどんな爺さんになったんだろう~??
爺ぶりもなかなかでしたが、いつもの見ててハラハラする百介ぶりが最後にチラッと見えて、少しほっとしました。 -
再読
若者4人のキャラが立たず、導入がつらかった。
江戸の雰囲気、仕掛けの巧妙さは愉しい。 -
お話の筋や仕掛けやあれやこれやは好きなんだけど、与次郎達4人の会話に苛々してしまって、読み進めるのに苦労してしまった。
でも好きですよ。
由良家の発端を知れるところが良い。
あと、和田智弁ね。
又市はスーパースターであり元凶でもある‥。
百介さんは、又市さん(達)のことが本当に、好きで好きでたまらなかったのね‥。
なんだか切なくなってしまった。
それ以外のことは重さも厚みもない、そういう体験をしてしまったら、仕方ないのかな。
小夜さんを託されて良かったね、百介さん。 -
あれから◯年後・・・
時代を感じられるのが面白いです。文明開化の後の、武士の時代から明治へ、妖怪が当たり前にいそうな江戸時代の終焉。
懐かしい人、懐かしい名前。
若者たちがわいのわいのと騒ぐのを丸く収めるあの人の懐かしい感じがいい。 -
『続』の方が話としては面白いのですが、こちらにはまさかの仕掛けが施されています。
京極夏彦の作品全ての、契機になっている作品で、これを読まないと髄まで愉しむ事が出来ないのです。
本編自体も、必殺仕事人的面白さは健在で単体で読んでも十二分に楽しめますが。
このシリーズ程、続編が読みたいものはない。 -
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「百物語」のシリーズ、おもしろいですよね。自分はこれをきっかけに京極夏彦に興味をもちました。「百物語」のシリーズ、おもしろいですよね。自分はこれをきっかけに京極夏彦に興味をもちました。2017/09/08
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あれは又市の仕掛けだったのか。でも、もう会えないと思うと淋しい…。
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▼福岡県立大学附属図書館の所蔵はこちらです
https://library.fukuoka-pu.ac.jp/opac/volume/151803 -
今までの話は大体綺麗さっぱり忘れがちなのですが、京極堂シリーズも全く同じなのですが、ちょうど鉄鼠の檻を読んだところだったので、百鬼夜行シリーズともつながってるのー!となりました。
あと、圓朝祭り行きたいな、と。
ナウでヤングなナンパお兄さんたちは京極夏彦を知らないらしく、つまり妖怪の本ですと言ったら爆笑してお帰りになりました。人選ミスですよ!!! -
巷説百物語シリーズ第3弾
時は明治の世。
一等巡査である矢作剣之進は奇妙な伝説の真偽をめぐり、友人たちと言い争いになる。
議論に収拾はつかず、彼らは東京の外れに住む老人を訪ねる。
一白翁と名乗るこの老人、若い頃は諸国の不思議話を収集してまわったこともあるという。
老人は昔遭遇した不思議な事件を語り始めた…。
収録作品:赤えいの魚 天火 手負蛇 山男 五位の光 風の神 -
シリーズ二作目「続巷説百物語」の「老人火」で早くも主人公同士の別れのシーンがあり、三作目の本書はそれから40年後明治の話。
ずっと心の中で交流していたのだな。
満足げに静かに微笑んで終わる人生でありたいな。自分の意思で笑って。
「枯れた小さな老人は、その紙束の中で目を閉じで笑っていた。何だか子供のようだった。」
鉄鼠の檻や陰摩羅鬼の瑕など、百鬼夜行シリーズ登場人物の祖先も登場してくるおまけつきで嬉しかった。 -
島が沈む話、かなり怖かったけど一番好きだったかも
由良氏登場でおおーっとなった
又市さんから京極堂へと受け継がれていくかんじなのかな -
何故に私はこの本を長い間積読にしていたのか。。。傑作です。さすが直木賞作。冒頭の「赤えいの魚」は読み始めたら本当に止まらなくなってしまった。
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再読。巷説百物語シリーズ第三弾。だいぶ昔に読んだ割には殆ど内容は覚えていた。それでも最後の「風の神」を読んだ後の読後感は何とも言い難い、物悲しいような妙にさっぱりした気持ちになるようなそんな感情が残る。百介さんはきっとこの終わりまで夢の中で生きられたんだろう。
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回想シーンが大半を占めるため、前作までのような緊迫感は無かったが、不条理ホラー的展開(赤えい)あり、密室モノ(手負蛇)ありでバラエティーに富んでいた。
結局、前作最終話(老人火)の真相はよく分からなかったが…
最終話のオカルト人脈大集結!みたいな展開はわくわくする。 -
シリーズ3作目
時代は明治へ。
血気盛んな4人の男たちが、何かに詰まると
頼るところ・・・
80歳を超えた百介が語る過去の物語
前作の藩全体を騙る凄さと比べると
過去を語る形なだけにちょっと物足りない。
でもラストの「百物語」の話は
過去と現在が繋がり、面白かった! -
再読。百介さんと一緒に又市さん達を懐かしみながら読みました。新しい登場人物の若者たちは、新しい時代に生きていて、時間は繋がっているけど時代はあきらかにつながっていないのですね。その時代に生きていた人達はどの位の変化を実際に感じていたのでしょう?妖怪が科学に乗っ取られて、ひっそりと書物にだけ生きるようになったのと同じに、ちょんまげはお話の中の侍のものになってしまったのでしょうか?それにしても重かった。筋肉痛になります。Kindleに交換してほしいです。
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一白翁こと山岡百介の語る、若き日に出会った種も仕掛けもある不思議な話。赤えいの魚が、一番ファンタジーっぼく、美しく、恐ろしい。
小夜を託されたと知ったとき、百介がどれだけ嬉しかったかと思うとなんだか切ない。百介は又市らに憧れ、尊敬していたが、又市らも、身分にこだわらず、まっすぐな百介を眩しく思っていたのだろう。ちょっと切ないラストも、温かくてよかった。百介さん、お疲れ様でした。 -
江戸で妖怪が受け入れられていた時代から、近代化を押し進め妖怪は古いと言われるようになった明治での巷説百物語。 八十を超えた百介が又市たちと関わった不思議な出来事を懐かしく思いながら語っていく話。 百介からの視点なので、百介が又市一行をどのように捉え、感じていたかが分かる。越えられない一線の向こう側で生きる又市たちに憧れを持っているのが切に分かった。 最後の「風の神」は長い仕掛けの幕閉じであり、涙がほろりと零れそうになる。
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又市の物語の締めの一冊……かな。
「西の……」は未読だが、どうやらあちらはスピンオフ的な内容らしいので。
出てくる話、出てくる話、皆どこかで聞き覚えのあるような説話……シリーズの小編ひとつひとつに繋がっているのだから、当然か。
一冊目から再読したくなってくる(笑)。
又市の仕掛けを話のメインに据えておきながら、その実、又市は一度も登場しないという作りが、何ともにくいね。
続編は書かれていないとのことなので、既存の御行話は読み尽くしてしまったということ……が、寂しい限り。
★5つ、10ポケット。
2016.03.24.図。
※「五位の光」は……、遥かに時を越えての、『狂骨の夢』の前日譚か?
京極ファンにはニンマリものだね。
いやいや、一週間かけました。
なんと、京極先生は、文章を次ページにまたがない。製本が変わるとやり直すらしい。
いやいや、一週間かけました。
なんと、京極先生は、文章を次ページにまたがない。製本が変わるとやり直すらしい。