それでもドキュメンタリーは嘘をつく (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.69
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本棚登録 : 297
感想 : 31
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043625055

作品紹介・あらすじ

「公正中立」な視点という共同幻想に支えられながら、撮り手の主観と作為から逃れられないドキュメンタリーの虚構性と魅力とは何か?情報が「正義」と「悪」にわかりやすく二元論化され、安易な結論へと導かれる現代メディア社会の中で、ドキュメンタリーを作る覚悟と表現することの意味を考察したエッセイ。自らの製作体験や話題の作品を分析しつつ、自問と煩悶の末に浮き彫りにした思考の軌跡。

感想・レビュー・書評

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  • 後れ馳せながらここを通過した
    様々な価値観と視線による差異がある
    それと共にあらゆるグラデーションもある

  • うーん、面白かったようなそうでもないような。森達也の事は「いのちの食べかた」で知ったんだけど、AもA2もまだ観ていない。別のこの人にドキュメンタリー映像の歴史を紐解いてもらわなくてもよかったし、なんか主語がでかいし、語り口は甘ったれてるのにやたら使い慣れない難しい言葉を繰り出したがる(平易に表現が十分にできるのに!)ところがなんか気に入らなかったな。中身以前に文章が嫌いなんだな。ただ興味深い部分も沢山あったよ。ドキュメンタリーとドラマに本質的な違いはない事、モザイク処理の罪について、セルフドキュメンタリーについて、とかね。

  • 森達也のドキュメンタリー論とでも呼ぶのが正しいのだろうか。

    たしかに本書に書かれているように、「ドキュメンタリー=公正なもの」という意識は我々の中に根付いている。
    ただ、実際は監督の意思にそって進められている映像作品であり、それが正義だとは限らない。
    しかし、観ることで自分のなかに問題定義を呼びかけてくる作品かどうかは重要で、少なくとも私にとって森氏の映像作品や著者はそういう存在であることは確かだ。

    ドキュメンタリーが好きだと自負する人こそ、本書を読んで頭をガツンと殴られてほしい。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「「ドキュメンタリー=公正なもの」という意識は」確かに見る時は、そこからスタートしている。これからは気を引き締めて見始めなきゃ。。。
      「「ドキュメンタリー=公正なもの」という意識は」確かに見る時は、そこからスタートしている。これからは気を引き締めて見始めなきゃ。。。
      2012/03/02
    • ayami Imanishiさん
      ドキュメンタリーを観て「かわいいそう」だとか「いい話」だとか思うのは簡単なのですが、映像から何を嗅ぎとるかということが大事なのかなぁと思いま...
      ドキュメンタリーを観て「かわいいそう」だとか「いい話」だとか思うのは簡単なのですが、映像から何を嗅ぎとるかということが大事なのかなぁと思います。難しいんですけどね……。
      2013/03/13
  • もりたつは、私のメディア的なものへの視点に大きな影響をくれた人です。
    「真実」を語るジャーナリストと「現実」を語るドキュメンタリーが何よりもうさんくさいと思う私には、好きなメディア論。

    ・ドキュメンタリーが描くのは、異物が関与することによって変質したメタ状況なのだ。作り手が問われるべきは、その事実に対して、どれだけ自覚的になり、主体的に仕掛けられるかだろう。
    ・その仕事は、客観的な事実を事象から切り取ることではなく、主観的な真実を事象から抽出することだ。
    ・わかりやすさばかりが優先された情報のパッケージ化をマスメディアが一様に目指す状況だからこそ、あいまいな領域に焦点をあてるドキュメンタリーの補完作用は重要な意味をもつ。
    ・自らのパーソナルな主観・世界観を表出することが最優先順位にあるドキュメンタリーと、可能な限りは客観性や中立性をつねに意識におかなければいけないジャーナリストとは、本来は水と油の関係のはずだ。
    ・内面的な矛盾や葛藤が過剰であればあるほど、被写体としての魅力は増大する。
    ・撮る側の主体と意識が問われる・・・その覚悟がなければ、現実に負ける。
    ・アメリカの病理の本質は、高揚した正義であり、徹底した善意でもある。
    ・言葉の最大の機能は規定だ。そして僕の考えるドキュメンタリーは、その規定からつねにはみだす領域にある。だからこそ、ドキュメンタリーそのもを規定できない。

    ・・・読みながら、「THE COVE」を見た時感じた強烈な違和感がはっきりしました。なるほどね。

  • <シラバス掲載参考図書一覧は、図書館HPから確認できます>https://libipu.iwate-pu.ac.jp/drupal/ja/node/190

  • 2020年10月3日読了。

  • (01)
    ドキュメンタリーの作り手によりドキュメンタリーが解説される。そこには、ドキュメンタリーが本当か嘘かという葛藤とともに、内幕や内情、そして弁明も、言語(*02)として領域化している。つまり、「ドキュメンタリーは嘘をつく」という言明によって、嘘をつくドキュメンタリーを救いつつ、ドキュメンタリーの作り手は、「嘘をつく」ことに嘘をつかずに真摯に向き合っている姿勢が示される。

    (02)
    特に序盤では、ドキュメンタリーの歴史が綴られ、映画界とテレビ界の双方で占めていた位置が指し示される。著名なドキュメンタリーの作家や作品、著作も紹介され、ドキュメンタリーの入門編として読むこともできる。こうした作り手との交流の場面や著作からの引用もところどころに挟まれながら、著者自身の自作の制作プロセスについても言及されている。
    報道との違い、セルフドキュメンタリーの内向きなど、ドキュメンタリー内外の差異についても触れており、逆に劇映画におけるフィクション性とは何かを考える機会も与えている。

  • 「 A 」観たいなぁ。
    「 A2 」も。
    「 A3 」にも期待。

  • 170814読了

  • ドキュメンタリーに特化したエッセイだけに、いつものようにテーマの使い回しがなく、またドキュメンタリー映画案内としても参考になる。

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著者プロフィール

森 達也(もり・たつや)
1956年、広島県呉市生まれ。映画監督、作家。テレビ番組制作会社を経て独立。98年、オウム真理教を描いたドキュメンタリー映画『A』を公開。2001年、続編『A2』が山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞。佐村河内守のゴーストライター問題を追った16年の映画『FAKE』、東京新聞の記者・望月衣塑子を密着取材した19年の映画『i-新聞記者ドキュメント-』が話題に。10年に刊行した『A3』で講談社ノンフィクション賞。著書に、『放送禁止歌』(光文社知恵の森文庫)、『「A」マスコミが報道しなかったオウムの素顔』『職業欄はエスパー』(角川文庫)、『A2』(現代書館)、『ご臨終メディア』(集英社)、『死刑』(朝日出版社)、『東京スタンピード』(毎日新聞社)、『マジョガリガリ』(エフエム東京)、『神さまってなに?』(河出書房新社)、『虐殺のスイッチ』(出版芸術社)、『フェイクニュースがあふれる世界に生きる君たちへ』(ミツイパブリッシング)、『U 相模原に現れた世界の憂鬱な断面』(講談社現代新書)、『千代田区一番一号のラビリンス』(現代書館)、『増補版 悪役レスラーは笑う』(岩波現代文庫)など多数。

「2023年 『あの公園のベンチには、なぜ仕切りがあるのか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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