哀愁的東京 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043646043

感想・レビュー・書評

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  • 絵本を出版したことのあるフリーライター、進藤宏。もう今では絵本が書けない。
    ゴーストライターやゴシップ雑誌の読み飛ばし記事、名前の出ない汚れ仕事でも何でもやる男。
    雑誌の取材や自身の過去と向き合うために、何人かのひとたちと会って話す。進藤さんも含め、出会うひと全員がかつて輝いた時期があった。そして今は落ちぶれている。負け犬と呼ばれる人々なのかもしれない。
    過去の栄光を忘れられず、お互いの傷跡を傷をなめ合う負け犬たちがただただセンチメンタル。哀愁的。

    -------------------------------

    人生プラスマイナスゼロという話がある。良いことがあればその分の悪いことがあり、その逆もまた然り、という話。

    充実している時間を過ごしているひとはそれを失わないように幸せにしがみつくし、
    今がどん底だと思うひとはこれから人生巻き返しだと儚い希望を生きる糧にする。

    人の一生がプラスマイナスゼロなわけない。
    だけど、今あるものを失う不安は捨てられないし、勝手な希望を持ってしまう。だからどうしたと言われればそれまでなんだけど、そういう弱さに人間味を感じる。
    過去を振り返るとき、思い出に勝てるものなんてない。弱くて当たり前なのに勝とうとする、自分だけは勝てるような気がしてしまう。そんな弱さを人間味とかそういうふうに呼ぶのかな。

  • 東京に引っ越してきてから読んだ本。東京、哀愁。どこか寂しく、切なくなる本なのだけど、読み終わったあとにはそのどちらとも違う感情がぽっと沸きあがってくる本。

  • ひとりの人間が様々な人と接している。
    ページをめくるように、時間は過ぎゆく。

    亡くしたものは、もう戻らない。
    亡くしたもので、見つけたものがある。
    見つけたことで、いつかは亡くしてしまう。

    したいけど出来ないもの。
    やりたくなくても出来るもの。
    人よりは自分はきっと幸せなのだ。
    幸せだからこそ、
    切なくてしょうがないのかも知れない。

    仕事が遅くなったけど、家に帰るわけでもない。
    ほんの少しだけにぎやかなバーで読むのにいかが。

  • シマちゃんが喜ぶ絵本が、きっと出来たんじゃないかと思う。

  • タイトル通り哀愁感を存分に感じられた。
    本を読みながら自分を通り過ぎて行った人々のことを考えてしまうような、メランコリーな気持ちになれる本でした。こういうテーマの小説が好きな人って、懐古主義なのかも。

  • 重松清の文には、どんな状況であっても常に『切なさ』が絡んでいるように思う。
    東京という街が生み出す切ない光景を、自身を取り巻く切ない日常を、他人が抱える切ない毎日を、丁寧に描く、切ない文章。私の思う重松清の魅力は、そういうところにある。

    一つの絵本をきっかけに巡る人間模様の在り方が、哀愁という言葉でか細く繋がる。飛沫のような小さな一つ一つのきっかけが、東京を描くひとつの絵になる。ひとつひとつの絵の集束する東京という街の姿は、やはり、哀愁ということばで、強く繋がっていく。
    これは、そんな過程を描いた物語だ。東京に住む私は、哀愁的東京という言葉を、きっと忘れることができない。

  • 『哀愁的東京』

    このタイトルが好き。なんか胸に響くんだな。
    重松さんの本はよく読むけど、人の心の微妙なまでの変化を鮮明に捉え、それを言葉にして描くことが非常に上手な人だなと思います。
    東京という街が織りなすドラマ。哀しみで終わる「今日」であっても、必ず始まる「明日」へ。弱々しくもその一歩一歩先に希望の光を灯してくれる作品です。
    面白かった!

  • 重松清本と出会って”哀愁”
    の意味がほんまにわかるよーなた。

    ”回想的”<”哀愁的”



    絶望的卒業
    願望的就職。

  • さすが重松清って感じ。
    王道。

    短編集でありながら、主人公は通して同じ。
    すっきりしていて読みやすい。

    内容が今の世相を驚くほどはっきりと現していて
    それがなんとも切ない。

    オススメの1冊。

  • あー。
    すごい好きかも。
    重松さん。

    このテンポ、題材。
    ひとりひとりの感情がすごく深いところまで入ってくる。

    まだ若い私にはわからないことも多かったけど、しんみりと味わえるものを感じました。

    でもそれにしても、最後の最後までゆるやかな下り坂で、
    ここで上りが入ってくると台無しになるかもしれないんだけど、
    それでもなんていうか、
    救われない思いがしました。

著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木三十五賞、10年『十字架』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『カシオペアの丘で』『とんび』『ステップ』『きみ去りしのち』『峠うどん物語』など多数。

「2023年 『カモナマイハウス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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