- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043648016
作品紹介・あらすじ
なぜ八〇〇メートルを始めたのかって訊かれたなら、雨上がりの日の芝生の匂いのせいだ、って答えるぜ。思い込んだら一直線、がむしゃらに突進する中沢と、何事も緻密に計算して理性的な行動をする広瀬。まったく対照的なふたりのTWO LAP RUNNERSが走って、競い合って、そして恋をする-。青空とトラック、汗と風、セックスと恋、すべての要素がひとつにまじりあった、型破りにエネルギッシュなノンストップ青春小説。
感想・レビュー・書評
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10代の頃に初めて読んで気に入って、遠く離れたこの地まで連れてきていた一冊。ページをめくるのは実に15年以上ぶりで、物凄く久し振りの再読である。
読み出す前から、薄々感じていたことが裏付けされていく数日間だった。今の私の感覚では、もうこの作品を純粋に楽しむことができない。出産を経験したことが大きいのかもしれないが、明らかに子どもである登場人物がカジュアルに法律違反してしまうのが、もう駄目で。それが物語の中で重要な鍵になっていたりとか、キャラクターを引き立たせるための行動描写だったりは平気なのだけれど、ここではみんながみんな当たり前のように受け入れている。いや、わかる、昔は大らかだったの。その空気感はしっかり経験してるからわかってはいるんだ。ただ「当たり前」で「イケてる若者は皆そうでしょ?」みたいなのが、もう感覚的に受け入れられない。性的な触れ合いも、微妙さを感じて現実に引き戻されてしまうことがままあった。
でもやっぱり、文章の疾走感は圧倒的に清々しくて。中沢と広瀬のコントラストと、交わる関係性とを乗り越えた先にある新人戦のレースは改めて読んでもゾクゾクする。一人称だからだろうか、800mを駆け抜ける二人の身体感覚にシンクロできるのが気持ち良い。ラストのレース描写によって、青春の爽やかさはしっかりと得られた。
そう、爽やかさは確かに感じはしたのだけども……若かりし頃とは作品の印象ががらっと変わってしまったことが寂しい。あと地元出身者として「相模湾はそんなにきれいだったかなあ……」という野暮な疑問さえ頭をよぎった。作品を摂取するには適切な年代がある場合もあるんだなあ……と、しみじみと今、考えている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
水と油のような二人の高校生目線が交互に入れ替わって話が進んでいく。
走ることの気持ち良さが夏の爽やかな風、キラキラした日差しの雰囲気と共に伝わってくる。
高校生らしい、友人や恋愛・性に関する悩みとかがあって陸上一色で生きてる訳ではないリアルさがある。
物語の結末のレースに立った時「自分らしさ」を求めて走る姿が爽快だった。 -
走る中で自分を見つめ直し、精神を研ぎ澄ます。そんな彼等と対峙する少女達も自ずから精神性を向上させていく。対照的な二人のランナーと、彼らの出会う仲間達による、情熱的かつ優美的な物語。個人的に非常に好みでした。
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読了直後は文句ナシの名作だ!と思ったけれど、中高生の性体験、飲酒、喫煙を臆することなく書いているだけで、現役作家さんがとても書けないことを書いちゃってるので、今西祐行さんや江國香織さんが惚れ込んじゃう、玄人ウケする作品なんだろうなーと思いました。
受賞作になると物議を醸し出しそうな点では、吉村萬壱さん作品に通じるものがあるけれど、吉村さんの方は現代の日本が抱える問題をエグるだけのメッセージ性がありますよね。
さて、この作品。
ぶっちゃけ、息子が800をやっているから手に取ったのです。
陸上関連の描写は素晴らしいけれど、乱れた私生活⁈の描写は、やはり戸惑ってしまいますね。
中学生でコレは、いくらなんでもアカンやろー(笑)。
設定が大学生あたりなら、まだナットクできるけど…ただ、男の子が肉体的に1番美しいのって、中高生の年代なんですよね^^;
最後の方、広瀬がハルキっぽいぞ!登場人物、みんなモテ過ぎ〜┐(´ー`)┌ 村上春樹、伊坂幸太郎ワールドになってました(笑)。
玄人ウケする川島誠さん、絵本も出されているので、今後もチェックしたい作家さんです。 -
陸上の800m走を専門種目とする、2人の男子高校生が主役の青春小説。元800mランナーとして手に取らずにはいられませんでした。
競技中の描写を読むと、未経験の方にも800m走、あるいは陸上競技の良さが伝わるかと思います。R18的な部分が強いのが少し残念。 -
感想
吹き抜ける風。そこには汗と肉の薫りがのる。青春は綺麗なだけではない。大人たちの作った枠の中では手足を伸ばせない。だからはみ出る。 -
おしゃべり文学決定版。中学生に薦めたい本。
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再読。登録してないからにはかなり昔読んだかな。そんな安安と兄弟なるな。妹に手出す女たらしをなんとも思わんのか。と思うがこれもおおらかな時代の青春小説なのかな。中澤が伊田さんに惚れてしまうのがいいね
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「ぼくは、負けるかもしれない、と初めて思った。ぼくよりも、速いやつがここにいる」