空と山のあいだ: 岩木山遭難・大館鳳鳴高生の五日間 (角川文庫 た 44-1)
- KADOKAWA (2003年1月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043689019
感想・レビュー・書評
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遭難したメンバー以外に捜索にあたった人たちの話があり、その遭難事件に関わった沢山の人達がそれぞれなにを思って行動したのかがドラマのように描かれていてドキドキしながら読んだ
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津軽富士と言われ地元で親しまれている岩木山。1,625mの単独峰は
登るのに難しい山ではない。
しかし、この山で遭難事故が発生した。東京オリンピックを控えた
1964年1月。山頂への登頂を果たした大舘鳳鳴高校山岳部の
5人が、吹雪の中で遭難した。
夏の岩木山になら経験している山岳部員だったが、冬山には
初めての挑戦だった。それが5人中4人死亡という悲劇を起こした。
本書は唯一の生存者の証言を元に、遭難の様子、単独での下山の
みちのり、大規模捜索の模様を綴っている。
福岡大学ワンゲル部ヒグマ襲撃事件は知っていたが、この岩木山
遭難事件は知らなかった。
若気の至りと言ってしまったらそれまでだろう。装備などは今とは
比べられないくらい貧弱なのだろうが、それでも準備不足は確か
にあったし、経験も不足していた。
下山の際に吹雪を警戒して山頂の石室にこもっていれば、こんな
大事故には至らなかっただろう。普段、慣れしたんだ山であった
からこその油断があったのかもしれない。
著者は一切の判断をしていない。知りえた事実を淡々と綴って
いるだけ。そのなかで引っ掛かったのは、学校側の対応だった。
生死の境をさまよいながら、やっと下山して来た生徒に対し教師は
「学校は登山を許可していないと言え」早々と指示している。
その後、校長も同じ内容を主張することになる。
「雪山で火をおこすことも知らなかったのか」とOBが悲しみを
湛えて語った山岳部員たち。確かに学校への届けは「スキー
訓練」だったのだが、学校側がいち早く保身に回ってしまったら、
生徒や家族の立場ってないよね。
死亡した4人の遺体はばらばらの場所で見つかっているのだが、
寒さと疲労で意識がもうろうとなりながらも互いをかばい合って
いた彼らの心境を思うと切ない。 -
昭和39年に発生した山岳遭難のノンフィクション。
この作品は良作だ。まえがきの3ページを読んだだけで分かる。
ノンフィクションのリアリティと緊迫感を保ちながら、小説のように読者を惹き込む構成と文章力がある。 -
遭難ものはどれを読んでも興味深い。
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丁度三浦さんがエベレスト最高齢到達の時に何故か読んでしまった。よく手に取る山の遭難ものはだいたいプロか山岳部で、いかに生と死が紙一重か、技術だけでは乗り切れない何かを思うし、何せ山男達は冷静で、ダメだと思えば友人のザイルも平気で切るし、置いてゆく。これは山の技術などほとんどない高校生たちの1600級の冬山遭難事故。哀れの一言。山などハイキング程度の私ですら知っているようなことも知らなければ、地形も知らない、道具もない。しかし道具が発達して、お金を出せばある程度の装備が買えるようになった。でも昔の重い装備というのは、一種の山へ入ることへの、関門というか、気軽に入らないで済んだのかもしれない。近年の気楽な登山客の事故をきくにつけて思う。後輩を抱きかかえて死んだリーダーも憐れで涙をさそうが、動けなくなった友人に自分のヤッケを残して生還した村井に眼がしらが熱くなった。
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先輩たちが遭遇した、あまりにも悲しい出来事。