街場の大学論 ウチダ式教育再生 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043707041

感想・レビュー・書評

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  • 何気なく手にとってみたら, 案外面白かった.

  • 『狼少年のパラドクス』(朝日新聞社 2007)の単行本に
    文科省の杉野剛さんとの再会対談記が加えられて文庫化されたもの。

    さすがです。内田さん。
    本を最初から読んでいくと最後の方で「あれ?」と矛盾に思うところが
    あって、あとがきを読むとちゃんと断り書きもある。
    「大学教育についての自分の意見がこの十年間でずいぶん変わった」と。

    内容が濃いすぎてまだ頭のなかで整理がつかないけれど
    内田さんの仰る「読む人への愛」をたっぷりと受け取りました。

    内田さんのように物事をしっかり考えて意見が言えるように
    せめてご著書を読破する気合いはあるんだけど、追いつかないなぁ。

    自分的にヒットしたキーワード
    「象牙の塔」


    そういえば、『大学論』を読み始めるより前から読んでいて
    まだ読み終わっていない本川達雄さんの『世界平和はナマコとともに』
    と共通することがたくさんあって、いつかお二人の対談とか
    ぜひ聞いてみたいと思った。
    ぜったいに面白い。

  • 以前,「街場のメディア論」が面白かったので。
    恥ずかしながら教育論なるものを読んだことがなかったため,読み進めていくうちに様々なことを知りました。(地方の国立大学の存在意義など)
    なかでも印象に残ったのは,「制度内に組み込まれたなかで埋没してしまう個性など,個性ではない」ということや,「ブレイクスルーは突如起こるものだから予測できるはずもないし,来年度のシラバスなんてきっちりと決められるはずもない」「教員評価制度は,できる人の時間の浪費」「学ぶことは努力と成果の等価交換ではないし,大学に消費者的態度で来てはならない」など。
    こういう警告がされるほど,大学はビジネス化してきているんですね…。
    まあ,私が通う大学も私学なので,学生を金の支払い者として見ている節もあるのかもしれませんが…?
    友人や知人に是非一読してほしい本です。

  • ・大学の企業化,巨大化,均質化について。
    ・ダウンサイジングの検討について。
    ・文科省による制度化の弊害について。

  • 【大学での生き方を見直せる一冊】

    今日は大学で授業のTAがあるので大学論をとりあげます。
    個人的に内田樹さんの文章が好きなんです。
    優しく語りかけてくれるようで読んでてとても癒される上に、
    知的好奇心がどんどん湧いてくるような感覚がして。
    苗字が同じだからというのは…関係ないか。

    この本の中で印象に残っているのは、
    ①教育が子どもを均質化しようとしていること。
    ②就職活動は「時間割通り」にやりなさい。
    ③人文系が強化されないといけない理由。

    ①教育システムは「うまくゆきすぎた」ために、バグやノイズを消そうとしすぎているとのこと。システムの効率を「上げる」のではなく、「下げる」ことを考えてみることの提案をしています。

    ②僕が就職活動の当事者なのもありますが、この論には納得しました。僕達はまだ大学生であって、いま、ここでやらなきゃならないことである勉強(授業を受けること等)を放棄してまで面接とかに行くような人間を社会人として信用出来るのか、といったことです。
    周りが騒いでるときこそ落ち着きなさいというお話。

    ③日本の大学では理系分野は世界と張り合えているのに、今一歩そこから上に行けないのは人文系の分野がまだまだ発達出来るからであると述べられています。日本社会全体のものの考え方、発想の仕方が育たないためとのこと。僕も人文系といえばそうなので自戒の念を込めて。

    長々と書きましたが、議論の余地がある部分もあると思うので、「教育」に関することに興味がある方には強くオススメしたい本です。

  •  内田樹の読書シリーズは密かにまだ続いている。この本はずいぶん前に購入しておいたものだが、改めて読み始めて、読了した。文科省幹部との対談やかつての日比谷高校の様子など、引き込まれるものがいくつかあった。頭を刺激しつつ、執筆に疲れた頭をいやすのには最適な読書である。

     次は『街場の読書論』に行こうか。そのうち、『街場のアメリカ論』『街場の中国論』なども読みたいものだ。

  • 新しい知識や物の見方がどんどん自分の中に入ってきて、読んでいる間は興奮が収まらなかった。ほんとうに。

    実学志向に対する危機感や、教育への市場の介入に対する批判等々、普段自分がぼんやり考えていたことと一致している部分もいくつかあってちょっと嬉しかった。

    そしてとにかく筆者の文章の書き方の上手さには、読みながら何度も舌を巻いた。思わずうなずいてしまうし、何より読んでいて楽しい。
    本当に頭の良い人にしか書けない文章だろうなあと思った。
    ああいう洒落た文章を書いてみたい…

  • 知的興奮が味わえました。頭の良い人が書く文章は、内容が多少難解でも、なんとなく理解できてしまう。久々に「いい本(いい書き手)」に出会えた、そんな一冊でした。

  • ほんと、「そうなんだよ!」と納得するばかり、感心するばかりの本だった。ダンナが大学院で大学について勉強したり、自分も仕事で図書館のラーニング・コモンズに携わったりする中で、以前から漠然とあった大学教育への疑問や不満の正体が少しずつ見えてきていたのだけれど、この本を読んで一気に目の前が開けたような気がする。明解な論理とわかりやすい比喩、そして軽快な語り口。ここで「軽快な」というのは大変重要。論理が正しくても、人を不快にしたり不安にしたりして自分の論理を通そうとするのはもってのほかです。そのあたりの行き届き方が読んでて大変気持ちよかった。さて、内容は、というと、FDやリベラル・アーツ、自己点検・評価など、現在の大学を取り巻く「改革」について。なんだけど、大学で学ぶことの意義や、論文とは何か、などについても書かれている。学術論文に必要なもの、それは「読む人への愛」だそうですよ。これは第7章に書かれているんだけど、図書館でレポート作成についての授業をすることができたら、この部分をテキストにしたい。おしなべて今の教育はスキルばかり教えて精神を教えないから、一つ一つを覚えていくだけで他のことに汎化できなくなってると思いますが、この第7章を読めば、どうしてそうなのか、という根幹の部分がしっかり伝わると思います。他にも教育効果は数値化できない、という話や、大学の評価活動で教育活動が疲弊している話、あれこれと工夫をすることも大事だが、結局目の前の学生と楽しく過ごすほうが長いスパンでは有効ではないのか、という話などが興味深かった。大学で働く人に薦めてまわりたい本です。

  • キャリア教育の抱える問題点は、
    著者がいろんなとこに書いているけれど、
    教育現場は実学を教える場所ではない、
    というのは一貫した主張であるし、わたしもそう思う。

    キャリア教育や教育ビジネスが間違っているのは、
    教育が本来担っている「社会の成員を育成する」
    ということをまったく勘定に入れずに、
    個人主義や市場原理主義のアポリアに陥っているところである。

    そもそも市場原理は、
    ある条件のもと個人の利益を最大化するように市場に参加する人々が振る舞えば、
    結果的に公共の利益にもなる、
    という考えである(たぶん)。

    しかし現在は「長期的に見る」という点がすっぽり抜け落ちていて、
    短期的な個人の利益追求のみが求められてしまっている。

    企業ならそれでいい(ある程度は)。
    けれど教育は違うじゃないですか。
    学ぶってそういうことじゃないじゃないですか。
    なぞと息巻いてみる。

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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