使命と魂のリミット (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (452ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043718078

作品紹介・あらすじ

あの日なくしたものを取り戻すため、私は命を賭ける――。心臓外科医を目指す夕紀は、誰にも言えないある目的を胸に秘めていた。それを果たすべき日に、手術室を前代未聞の危機が襲う。大傑作長編サスペンス。

感想・レビュー・書評

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  • 「ぼんやり生きてちゃだめだぞ。一生懸命勉強して、他人のことを思いやって生きていれば、自ずといろいろなことがわかってくる。人間というのは、その人にしか果たせない使命というものを持っているものなんだ。誰もがそういうものを持って生まれてきてるんだ」
    友紀は父の最後の言葉を胸に医師研修医になった。もうひとつ、父の手術失敗は仕方なかったのか故意だったのか確かめるために。それは必然的に、医師の「使命」を確かめることにもなるだろう。

    その物語と並行して、大手自動車会社社長の殺害計画が進んでいた。

    自動車の品質保証システムが、社長が気まぐれで設定したノルマに縛られて簡略化された。「確かに社長はシステムの簡略化は認めてはいません。でも目標値をさげろとも言わなかった」「何かあったときには責任逃れができる様にしてあったんです」そのことによって大切な恋人が殺されたと思った若者は、用意周到な「手術失敗計画」を立てる。

    単行本の発行は2007年だけど、まるでつい最近の大手自動車会社の安全保障システム簡略化の経緯そのままだ。現実でもこの社長は、当然政治家も動かせる大物だから、罰せられたのは下部幹部止まりだったし、尚且つテレビCMで、その元社長は、悪いのは部下たちだと言わんばかりに「これからは組織風土を変えよう」と大見得を切っている(あくまでも小説と現実は違うから、私は変な言いがかりをつけている可能性はある)。

    医師の使命と技量との関係、突然のトラブルの対処の仕方。研修医の成長。多くの医療小説では出てくるテーマだけど、それをちゃんとエンタメミステリ仕立てにする技量に感服する。

    岡山市文学フェスタで初めて一箱古本市に行った。そこで出会った一冊。

  • 東野圭吾の医療ミステリー。
    凄く熱い作品だった。東野圭吾さんのイメージといえば少年犯罪や死刑制度などの社会派の印象だったが、今回は希望のある人間ドラマであった。自分の実の父親を殺したかもしれない男の元で研修医として働く主人公が謎の脅迫事件に巻き込まれていくというもので、疑いながらも医療と向き合っていく物語。島原総一郎の手術というレベルの高い手術に彼女をアシスタントとして採用した理由が、自分の手術姿を見せて自分の彼女からの疑いを晴らそうとする姿がとてもかっこよかったです。そしてその結果、自分の身を削り倒れた時に夕紀が助ける展開がとても熱かったです。氷室も西園も犯人の直井も刑事である七尾も自分の使命に生き続ける姿がとてもグッとくるものがありました。東野圭吾作品の中では、話題に上がりづらい作品ですが皆さんも読んでみてください。

    この作品をアニメ化した際の声優陣を自分なりのキャスティングしてみたので読む際に参考にしてください(敬称略)
    氷室夕紀:雨宮天
    西園陽平:井上和彦
    元宮誠一:小西克幸
    氷室健介:三木眞一郎
    氷室百合恵:山崎和佳奈
    直井穣治:小野賢章
    真瀬望:和氣あず未
    七尾行成:神奈延年
    島原総一郎:若本規夫
    中塚芳恵:一城みゆ希
    森本久美:黒沢ともよ
    西園道孝:古川慎

  • やっぱり東野圭吾さんは凄かった。
    だんだんと物語が繋がってきて真相が見えてきそうで見えない、この感覚は何度体験しても気持ち良いな、と。

    愛を感じる人間関係、希望を感じる医療ミステリー。
    こんなキャッチコピーを帯につけたりしてみたい笑

    作中に何度も登場する「使命」という言葉。
    最後まで読み終わってより深い意味を感じた。
    氷室先生も、西園教授も、氷室先生の父や七尾警部も、それぞれが自分の使命を自分なりに全力で真っ当して任務に当たっている姿にこみ上げるものがあった。
    自分は自分の使命を全う出来ているだろうか?自分自身に問いかける良い機会になった。

  • 突然の脅迫状に揺れる帝都大学病院。
    「医療ミスはない」と断言する西園教授。
    しかしその言葉を鵜呑みにできない研修医の夕紀。
    彼女はとある疑念を抱き、医師になりこの病院に配属されて。
    様々な人間関係が渦巻く物語。
    その中で医師としての使命と、ひとりの人間としての心情。
    展開としては目が離せなく夢中になって読んでいたのですが。
    終盤にかけて少し都合良すぎるかたちかな。
    ストーリーは面白かったけど、自分的にあまりハマらない作品でした。

  • 七尾刑事??
    賢すぎでしょ(^_^;)
    どんでん返しがあるのかも?と思ってたけどの綺麗に進んで綺麗に終わりました。

  • ヒロインの夕紀が指導医と母に疑念を持っているところから始まる。その疑念が晴れるのか、新たな展開があるのか。西園教授の疑念が薄れてきた時に、また疑念を持つことになり黒くなりかけ最後に真っ白になるという・・ぐいぐい引き込まれて行った。

    行動で示す、親の背中を見せる、誠意を持って示した西園教授だった。

    結末は、ずっと涙が出っぱなしだった。穣治だけが使命を間違えていたけれど全員が使命を果たそうと懸命だった。美しくきれいに最後のページを締めている。しかも余韻を思いっきり残して。さすがだ。やっぱり東野先生だと思った。

  • 東野圭吾さんの医療ミステリー。
    新鮮な気持ちで読みました。

    研修医の夕紀、謎の男・穣治、
    刑事の七尾の3人の視点で
    物語は進んでいきます。

    研修医の夕紀は指導医の西園と
    自分の母が再婚することもあり、
    疑いを持ちつつ仕事に臨む。

    謎の男・穣治はなにか企みがあり
    ナースに近づき、恋人になり
    必要な情報を得ていく。

    刑事の七尾は病院に送られてきた
    脅迫文に関する事件を追っていく。

    様々な登場人物の想いや行動、
    今までの過去が交錯していく。

    そして全てが繋がった時、
    そういうことか!と感嘆しました。

    最後は一気に読んでしまいました。
    さすが東野圭吾さん。面白かったです。

    最後の夕紀の言葉が好き。

    私の使命とは、一体何だろう。

  • 面白かった♪愛も感動も詰まったサスペンス作品でした。医療ものだけれど、読みさすさはさすが東野先生です!

    「その人にしか果たせない使命」
    私の「使命」はなんだろう...と考える読後。



  • 何よりも圧倒されたのは最後の手術シーン。
    昼休みの教室で読んでいたのですが、
    手術シーンに入った時は、教室の喧騒などは何も聞こえなくなっていました。

    それくらいの臨場感です。医療サスペンス系の小説を読んだのは
    これが初めてでしたが、本当に読んでよかったです。

    そして感動のエンディング。
    いい小説を読んだなあっていう心地よい余韻が残る一冊でした。

  • 病院を舞台にしたサスペンス。読み進めながら、あるいは読み終えたときに、彼らにとって医者としての「使命」とは一体なんだったのか、そして人間としての「使命」とは一体なんなのか、を深く考えさせられる一品。

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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