- Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043720019
作品紹介・あらすじ
三十八歳という若さで日本を代表する企業の人事課長に抜擢されたエリート・橋田浩介。彼は、男に絡まれていたところを助けたことがきっかけで、短大生・中平香折と知り合う。社内での派閥抗争に翻弄されるなか、橋田にとって彼女の存在は日増しに大きくなっていった。橋田は、香折との交流を通じて、これまでの自分の存在意義に疑問を感じ、本当に大切なことを見いだしていくのだった…。-混沌とした現代社会の中で真に必要とされるものは何かを問う、新たなる物語。各紙誌書評で絶賛と感動の声を集めた気鋭のデビュー作、待望の文庫化。
感想・レビュー・書評
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主人公は一人の短大生と出会う。香折は母親と兄から言われ無きイジメを受けてきた。そのトラウマ故に、精神を病む。そして、その後の兄の暴力で寝たきりになった。主人公は「これからはずっと二人で、絶対、離れ離れにならずに生きていこう。」と。重い一言に感動。
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著者、白石一文さん、どのような方かというと、ウィキペディアには次のように書かれています。
白石 一文(しらいし かずふみ、1958年8月27日 - )は、日本の小説家。父は直木賞作家の白石一郎。双子の弟は小説家の白石文郎。2010年「ほかならぬ人へ」で直木賞を受賞。初の親子二代での受賞となった。
本作の内容は、次のとおり。(コピペです)
三十八歳という若さで日本を代表する企業の人事課長に抜擢されたエリート・橋田浩介。彼は、男に絡まれていたところを助けたことがきっかけで、短大生・中平香折と知り合う。社内での派閥抗争に翻弄されるなか、橋田にとって彼女の存在は日増しに大きくなっていった。橋田は、香折との交流を通じて、これまでの自分の存在意義に疑問を感じ、本当に大切なことを見いだしていくのだった…。-混沌とした現代社会の中で真に必要とされるものは何かを問う、新たなる物語。各紙誌書評で絶賛と感動の声を集めた気鋭のデビュー作、待望の文庫化。 -
随分前に読んだ本でした。三菱重工のような一流企業ではありませんが、最初にこの本を読んだ当時は私も某企業でトップの側近の一人としてとても忙しく働いていました。単なる権力闘争だけではなく、同じように幹部社員の首吊り事件や国からの圧力によるトップ交替などドロドロした世界でしばらく過ごしましたが、主人公とは少し違う理由で今はその会社から去りました。避けているわけでもないのに、残念ながら(?)女性の出入りは全くこの本の人たちとは異なり極めて地味でしたが、橋田氏のような甲斐性や覚悟もない身なので、このような出会いがあったとして見て見ぬふりをするのがせいぜいだっただろうと思います。いまだに自分にとって何が最も大切なのか試行錯誤する日々を送っていますが、恋愛部分以外は十数年前の自分を思い出しながらしみじみと再読させてもらいました。良い本でした。
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生々しい虐待や社内政治を通じた孤独と愛の関係性について語っている。
恵まれた明るい環境で育ち豊富な愛を与える瑠衣と、凄惨極まりなくぎりぎりを生ていても微かな愛を与えてくれる香折、どちらが上かなんてことは決められようがない。
愛は交換理論では語りきれない。
自分を愛さない限り人を愛することはできない。しかし誰かを自分以上に愛した時、人は初めて、本当に自分を愛することができる。
本当に愛し合っていればセックスは一瞬一瞬の死の様であり、心中して嫌なことを全て無にして毎回光り輝く新たな自分に生まれ変わることができる。
肉体関係を持たず良き理解者として接してきた浩介が最後に香折に対し、兄弟や親を超えた愛情を認識した。
夢にて暗闇の中で香折を見つけ出し、過去を象徴する小脇の布団を燃やすことにより、生まれ変わったことを示唆することで、
人生を捧げた仕事を失い自身の存在価値への疑い、孤独を感じる中、浩介も香折を通じて本当の自分を愛したいと考える様になったのだろう。
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読みやすい文章の中に、生きるとは何か、愛とは何か、という示唆が散りばめられていて、素敵な小説だった。
自分を愛していないと人を愛することはできないが、人を自分以上に愛して初めて本当に自分を愛することができる
というメッセージは心に刺さった。
自分も死にたいと思った時に必ず顔が浮かぶ人がいる。その人のことを思うと、自分の死後その人はどれだけ悲しむだろうかと思うと死ぬことなどできないと思わされる。
もし自分が1人だけだったら自殺など簡単にできてしまう気がするが、私はその人を自分以上に大切にしたいと思えるから自分のことも大切にしようと思うのだ、と本書を読み終えて言語化できた。
『僕のなかの壊れていない部分』も良かったが、哲学書のようで、小説という観点だと個人的に本書の方が好みだ。 -
ちょっと理解できない人間の繋がりではありましたが、この先どうなるのだろうと読み続けました。私だったら見て見ないふりをしてしまいたいそんな女の子の結末がちょっと残念でした。
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改札口で別れるとき、「ほんとうにお世話になりました」香折はそう言って頭を下げると、振り返りもせずに駅の階段を昇って消えていった。ずっとその背中を目で追いながら、こうしたささいな気持ちの落差が、人と人とのつながりを決定づけるような気がした。(p.204)
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これが白石さんのデビュー作かぁ…という感じ。(良い意味で)
内容重め、香折のことイマイチ好きなれない、でも先が気になって一気読みだった。
読後感もよくないけど、なぜか惹きつけられるのが白石作品。笑 -
2019年、再読。
読み終わってから以前読んでいたことを知って驚愕。
全然思い出せなかった…。
5年経って私の考え方、感じ方が変わったのか以前のような感想は抱けませんでした。心が安定したからだと信じたい。
2019年の今の評価は★2つ。
2019年4冊目。
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「人に大切にされることが、自分を大切にすること」
というフレーズが、非常に心に残った一冊。
切ないくらい、様々な種類の愛情に溢れた作品です。
タイトルの「一瞬の光」を求め、一瞬一瞬を生きていくという道を主人公は選びます。
もちろん、誰しもが一瞬一瞬を生きているのですが、私も含め、多くの人が安定や穏やかさを無意識に望んでいるはず。
安定した生活、穏やかな明日があることを前提にしたうえでの「一瞬」を懸命に生きているのではないでしょうか。
主人公が選んだような、刹那を生き続けるようなことは私はどうやったって望むことができません。
生きること、愛ということ、幸せということ。
これらについて、考えさせられる一冊でした。
とりえあず、「人に大切にされる」ことが
大切にしてくれる人を幸せにするのだということを
知ることができました。
今の私には、それだけで。
2014年29冊目。