私という運命について (角川文庫 し 32-4)

著者 :
  • 角川グループパブリッシング
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043720040

作品紹介・あらすじ

大手メーカーの営業部に総合職として勤務する冬木亜紀は、元恋人・佐藤康の結婚式の招待状に出欠の返事を出しかねていた。康との別離後、彼の母親から手紙をもらったことを思い出した亜紀は、2年の年月を経て、その手紙を読むことになり…。-女性にとって、恋愛、結婚、出産、家族、そして死とは?一人の女性の29歳から40歳までの"揺れる10年"を描き、運命の不可思議を鮮やかに映し出す、感動と圧巻の大傑作長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 白石一文さんの初読み。
    ※初読みキャンペーン継続中

    作品の中でも登録者が多く、ブグログ評価高め、あらすじも読みやすそうと判断して、初読み作品に。

    1994年頃の時代
    主人公の女の子29歳から40歳までの物語。
    当時の時代背景も、かなり入りばめられており、
    ああ、そんな事もあったなあと思いながら読める。

    構成は、下記四つの章?から。
    全て繋がってます。

    雪の手紙
    黄葉の手紙
    雷鳴の手紙
    愛する人の声

    プロポーズを断り、彼氏と別れたところから始まる、雷鳴の手紙は個人的に1番感情移入してしまいました…

    結婚とは?出産とは?幸せとは?運命とは?未来とは?と、いろんな考え方の価値観がでてきます。

    その中でも、
    p294
    もっともっと哀しい目に遭っている人が、今この世界に何千万人もいて、自分はその人たちのために何もできないでいる。自分が無力だってことを思い知るのが人生の基本だ。そしてその基本にわずかでも別の何かを付け加えていくのが生きる事なんだって。
    と、主人公の兄が後輩に伝えたフレーズ

    物語の本質の部分とは離れるのですが、妙に印象に残りました……。

    この本は女性が読むと、過去の元彼が今何してるんだろう?とか、あの時別れたのはなぜだったっけ?とか思い出すことになりそうです笑
    ただ、過去って相当美化されてるし、過去を後悔しても意味ないなと。
    運命は、未来の選択の連続であるというのを作品の中のお母様だったかな、の言葉で納得!

    なんか偶然にも最近は
    運命だとか、人生だとか、生きる、死ぬだとか、人間に深く関わる内容の本が連続、、脳がフル回転でした、、、なんかなんとも言えない読後感。

    次の本は違うテイストでリフレッシュしよう!
    ノーサイドゲーム by池井戸さん
    まち by小野寺さん

    の新作を狙って本屋行ったが、まだフライング陳列はされてませんでしたー、、

  • 主人公にどっぷりはまって感情移入してしまう私には、ものすごく感動した作品でした。「選ばなかった未来なんかどこにもない」という一説は、「あの時ああしとけば良かった」と思うことが多い自分には、痛かった。
    それにしても最後の最後、本当に悲しかった。

  • 読み応えあった。
    康の死亡フラグが立ったり消えたり。
    まぁ、最後はそうなるよな、と。
    面白かったです!

  • 泣きました。
    解説にもある通り、読み終わった今の心境は
    「広大な砂漠の真ん中で、途方に暮れてしまったような気持ち」です。

    それは恐らく、29歳から始まり、40歳まで描かれた亜紀の人生・運命がこの先どうなるのかが分からないから。

    この小説は自分の人生と同様に、生きていて、どのような結末を迎えるのかまだ分からないから、読み終えても、読み終えた感覚が得られにくいように思います。

    物語の大半を占める、30代の亜紀とちょうど同年代の女性である自分には手厳しいというか、目を逸らしている現実も描写されており、時々、自身と重ねては焦燥感に駆られる心境にもなりましたが、とにかく丁寧に描き上げられた作品だという事がひしひしと伝わってきました。

    「運命というのは、たとえ瞬時に察知したとしても受け入れるだけでは足りず、めぐり合ったそれを我が手に掴み取り、必死の思いで守り通してこそ初めて自らのものとなる」
    という文章が強く印象に残っています。
    果たして私は必死で守り通そうとしただろうかと、省みる気持ちになりました。

    白石氏の作品を読むのはこれで3作目ですが、勝手ながらこの方の持つ愛情や、死に対する感覚や、出来事への考え方・受け止め方が私の持つそれらと酷似しているように思います。
    善し悪しは別として。

    私とは20歳以上離れていますが、何だかあと20年後の自分から、言い聞かせられているような感覚で読み進めていった一冊です。

  • 細川連立内閣が成立した1993年。
    男女雇用機会均等法の成立で女性総合職のトップバッターとして、大手情報機器メーカーに入社した冬木亜紀は29歳だった。
    かつて交際しプロポーズまで受けた相手、佐藤康が、亜紀の後輩と結婚することとなり、亜紀はふたりの結婚式に招待されるも出席を迷っているところから物語は始まる。
     「雪の手紙」29歳、「黄葉の手紙」33歳、「雷鳴の手紙」34歳、「愛する人の声」37歳。そして40歳を迎えての2004年10月23日まで、私たちは亜紀という一人の女性の人生を追っていくことになる。
    読みながら、幾度も"運命"という言葉にふれ、幾度もその"運命"とやらに想いを巡らせた。

    重い心臓病をもつ沙織
    「子供の発達を研究していて私が知ったのは、人間にとって最も大切なのは愛されることだ、という点ですね。愛することが重要なのではなくて、愛されることが重要なんだと思います。だから、人と人との関係は、互いに愛し合う関係ではなくて互いに愛され合う関係でないと駄目なんだっていう気がします」
    「例えば、現在の母子関係の様々な問題も、児童心理学的に言うと、母親の子供への愛情が不足したり歪んだりしているからというよりは、母親側が、我が子がどれほど自分を必要とし、愛してくれているかということを掴み取れなくなっているところに最大の原因があるんです。」

    (愛してくれる人を愛することと、愛している人に愛されることと、それはどこがどう違うのだろう。)

     (あのとき、康との結婚を選ばなかったことは、私にとっての運命だったのだろうか。
     私は、ただ選ばなかった、選べなかっただけではなかっただろうか。佐知子の言うように選ばなかった未来など何もないのに、何もない未来を何かがある未来と錯覚して、単に自分を自分ではぐらかしただけではなかったろうか。選ばないことを選び、私のほんとうの未来を安易に投げ捨ててしまっただけではないだろうか。)

    純平の車に轢かれ怪我をした明日香からの手紙
    「冬姉ちゃん、人と人とのあいだには、きっと取り返しのつかないことばかり起きるけれど、それを取り返そうとするのは無理なのだから、取り返そうなんてしない方がいいんだと私は思います。大切なのは、その悲しい出来事を乗り越えて、そんな出来事なんかよりもっともっと大きな運命みたいなものを受け入れることなんだと思います。」

    【人生は自分自身の意志で切り開く】
    【運命という存在に身を任せ、あるがままを受け入れていく】
    この二つは矛盾なく両立するのだろうか。
    康と別れてしまった折に佐知子から綴られてきた手紙にある言葉を、気づけば私も亜紀のようにくりかえし読み返していた。

    《選べなかった未来、選ばなかった未来はどこにもない。未来など何一つ決まってはいない。だからこそ、一つ一つの選択が運命なのだ。私たちは、運命を紡ぎながら生きていく》

    それにしても、女性の10年間にはこれだけのことが起きる。私は今年28歳。まだこの物語のスタートラインにも立っていない。これからの未来は、きっとまだ決まっていない。決まってなどいないのだ。

  • 読み終えて、胸がつまるというか、ぼんやりと考え込んでしまうというか。
    お話自体はきちんとすっきり終わるのだけど、内容を自分と重ね合わせてしまう感じがある。
    29歳から40歳までの、女の10年の物語。
    自分自身がその只中にいる年齢だからこそ、そんな風になったのかも。

    大手メーカーの営業部に総合職として勤務する冬木亜紀。
    バブル期を抜けて、男女雇用機会均等法が成立して少し後の時代、亜紀は元彼である康の披露宴の招待状の返事を出しあぐねていた。彼からはプロポーズされたが断った過去がある。
    別れから2年の歳月を経て、亜紀は康の母・佐智子から届いたまま封を切っていなかった手紙を初めて読み、自分の運命というものを見つめはじめる。

    29歳からの10年、多くの女性はたくさんの選択を迫られたり、自分の往く道について思い悩んだりする。
    結婚はするのか。出産はするのか(できるのか)。
    結婚するとしたら、仕事は続けるのか。相手の家族と同居するのか。
    出産後は主婦になるのか、仕事復帰するのか。
    結婚しない人生を選んだとしたら、その後の生き方はどうするのか。
    理想通り、思った通りにはほとんどならない人生の中で、どのような選択をして、進んで行くのか。

    この小説の主人公・亜紀もそんな普通の女性の一人で、恋人と別れたり、また別の人と出逢ったり、仕事の面でも転勤になったりまた本社に戻ったり、家族の病気や身内の死、友人との関係の変化などが10年の間にさまざま起こる。
    比較的厚めの一冊にぎゅっと凝縮された10年だからものすごく波乱万丈に思えるけれど、実際は比較的落ち着いた時期や事件めいたことは起きない穏やかなときもあるだろうし、恋愛だってまったくしない時期もある。そういう余白を思えば、こういうこともあるだろう、という10年だと思う。

    10代や20代のときは、私自身、人生というものは自分で選択して切り開いていくものだと思っていたけれど、今になってみると少し違って、与えられた運命や自分の力では変えられない運命を受け入れて進んでいくことも、選択のひとつなのだと思う。
    当然自分で自分の思う道を選ぶことも必要なのだけど、それと同じくらい、受け入れることも実際は多いのだということ。
    諦めのように見えるけれど、それ自体自分の選択のひとつ。

    人はよく選ばなかった道に思いを馳せたりするけれど、実際手に出来るのは、選んできたその道だけ。
    <選べなかった未来、選ばなかった未来はどこにもないのです>
    佐智子の手紙の一節が、すとんと腑に落ちた。
    別れた人とまた出会うという運命の流れも時にはあって、それを自ら掴みに行くかどうかは自分の選択にかかっていたりする。

    色んな人の色んな人生が絡み合って、ひとつの舟に乗って進んでいく。
    時に自分がその舟を降りて別の舟に乗り換えたり、どうしようもない運命に引っぱられて誰かがその舟を降りることもある。
    自分が往く先はどこなのか。選択の只中にいる私は、考えずにはいられなかった。

    余談としては、白石一文さんの小説ってもっと理屈っぽいイメージがあったのだけど、この小説はとても読みやすかった。

  • 結婚について、現在あるいは過去に、惑い、悩み、考えている(いた)女性は、自らを置き換え、読むこともあるだろう。
    29歳で恋人にプロポーズされ、逡巡のうえ別々の道を歩み、40歳で再会後に結婚する女性の物語。
    彼女がこだわり、常に離れないのが「運命」という存在。

    義母となる人からの手紙に
    「選べなかった未来、選ばなかった未来はどこにもないのです。未来など何一つ決まってはいません。しかし、だからこそ、私たち女性にとって一つ一つの選択が運命なのです」
    義妹の手紙で
    「運命というのは、たとえ瞬時に察知したとしても受け入れるだけでは足りず、めぐり合ったそれを我が手に掴み取り、必死の思いで守り通してこそ初めて自らのものになるのだ」

    読んだ誰でもが、私という運命について、考えを巡らせてしまう小説といえよう。

  • すごい、すごすぎる。今までいろいろ本を読んできたが、こんなに揺さぶられたことはない。中盤から涙があふれ続け、読破した直後は声にならない声を出しながら、号泣してしまった。
    「運命」の伏線に触れる度に「ああっ」と頭をかかえたりして。出会ったことのない衝撃をくれた小説でした。
    冷静になった今、他の人のレビューを読むと自分ほどの大きな感動を受けた人がいないことにそーなのかと思ってしまう。人の感じ方ってほんと人それぞれ。

  • 運命、恋愛、運命、別れ、運命、結婚、運命、出産、運命、死
    何が運命で何が運命ではないのか。

    結局、ひとつの選択を運命と決めるのは自分で、運命ではないと決めるのも自分。
    そうだとすると、単純な選択以上の「運命」とはなんなのだろうか。
    個人的には、ただの後付け的な都合のいい言い訳にすぎない気もするが、
    それ以上の主体的な選択以上の何かを信じたい気もする。

    白石さんの作品を読むと、運命というものを信じてみようかなという気にもさせられる。
    運命を扱っていても、安易に結びつかない、ひねくれた運命だからこそ魅かれるのかも。

    前は、恋愛小説とか好きじゃなかったけど、最近は意外と抵抗なく読んでるな。

    「選べなかった未来、選ばなかった未来はどこにもない。未来など何一つ決まってはいない。だからこそ、一つ一つの選択が運命なのだ。私たちは、運命を紡ぎながら生きていく」

  • 読み終わって本を閉じたとき、思わず「読み終わったー」と口に出して言ってしまった。比較的厚い本なのでバッグに入れて持ち歩くのも重かったが、その内容も充分に重かった。

    主人公の冬木亜紀の、29歳から40歳までの約10年間を描いた超大作である。
    恋愛、仕事、結婚、出産。
    いくつになっても夢は諦める必要はないと世間は言うけど、でもやっぱり年齢的なものが原因で、手放さざるを得ない願いはある。
    あのときああしていれば、もしかしたら。
    違う選択をしていたら、今頃は。
    そんな気持ちになったことがない人なんて、この世にいるのだろうか。

    『運命』という漢字は、ウンメイともサダメとも読める。
    サダメと読むと『定める』と似ているので、運命というものは、生まれつき決まっていて、どうすることも出来ないものなのだと思っていたが、実はそれは『宿命』というらしい。
    運命とは、人の意思によって変えることは出来ないが、巡り合わせによるものなので、日々の行動や考え方などにより、結果として変わっていくもの。
    まさしくこの本の内容は、そのタイトルにふさわしい。

    登場人物たちのセリフが、わたしの心を傷つけ、考えることを避けてきた事柄を無理矢理目の前に突き付けてきた。そしてあるときはそっと支えてくれたり、やさしく背中を押してくれた。
    最後はどうしても涙がでた。
    人生にはいろんなことがある。
    いくら色々な経験をして強くなったとしても、本当の哀しみにだけは慣れることができないから。

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著者プロフィール

1958年、福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。文藝春秋に勤務していた2000年、『一瞬の光』を刊行。各紙誌で絶賛され、鮮烈なデビューを飾る。09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞を、翌10年には『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞。巧みなストーリーテリングと生きる意味を真摯に問いかける思索的な作風で、現代日本文学シーンにおいて唯一無二の存在感を放っている。『不自由な心』『すぐそばの彼方』『私という運命について』など著作多数。

「2023年 『松雪先生は空を飛んだ 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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