ピンク・バス (角川文庫 か 39-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043726028

作品紹介・あらすじ

夫・タクジとの間に子を授かり浮かれるサエコの家に、タクジの姉・実夏子が突然訪れてくる。不審な行動を繰り返す実夏子。その言動に対して何も言わない夫に苛つき、サエコの心はかき乱されていく。

感想・レビュー・書評

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  • 中編2編。標題作は読んでいてとても疲れるが、疲れる理由が自身にあると知る。そうなんですよ、演じてきたことが血肉になっているのか、簡単にこそぎ落とせるのか...。
    2編目の方が好み。諦めや焦燥などの感情にどっぷりと浸る。帰ってくるのかな、イタガキ...。

  • 突然居候するようになった夫の姉にかき乱される、過去にホームレス体験をした妊婦のサエコも、かつてピアノの天才だったカオルの友人たちとの日常も、親近感はない。ぬるい水に浸かり粘着質な空気を纏うような気だるげな倦怠感。各登場人物にとってのリアルという具体的で確固とした不思議な説得力。芯を掴むには少し難解。

  • 角田さんの頭のなかは一体どうなってるのだろう。想像力とか創造とかそういうのを遙かに超えてしまっていないか?その人になってみなければ分からないような感覚が、小説のなかで生き生きと描かれることにいつも感嘆のため息ならぬ、感嘆のまばたきをパチパチとしてしまう。
    現実感あふれる世界にある汚くて臭いものすら、愛おしいものだと抱きしめたくなる不思議な気持ちになってしまった。

  • 「ピンク・バス」と「昨夜はたくさん夢を見た」の2作品。
    2作品とも、読み手の好みが分かれる作品なのでは・・・

    ・「ピンクバス」
    少しシュールな雰囲気漂うストーリー。
    意味不明なお話だと感じつつも、サエコになんとなく感情移入できるのは、何故なんだろ・・・と思いながら、後書き(「角田光代の”疲労感”について 石川忠司」)を読んだら、
    「ピンク・バス」が扱っている問題は「意思」と「運命」との対立だと言っていいだろう。
    ・・・とあり、納得。
    そういう観点から読むと、なかなか面白い作品だと思った。

    ・「昨夜はたくさん夢を見た」
    生死にかかわらず、身近な人との別れに直面した時の、残された側の心情が描かれた作品。

  • 始まりから終わりまで夏の寝苦しい夜に見る夢みたいな感じ
    変な汗かいた後みたいな不快感が欲しい人に

  • どんどん気が滅入っていくかんじ。

  • そこらのイヤミスよりもよほど後味が悪く、白昼夢を見ているみたいな作品だった。

  • うーん、あまり好きじゃなかった
    ピンクバスと昨夜はたくさん夢を見たの2作なんだけどどっちも登場人物の言動が理解するの難しかった

    ピンクバスはタクジと結婚して妊娠したハッピ〜なサエコのところに変な姉が突然現れて二人の家に居候する
    この姉は妊婦ってキミが悪い的なことをサエコに初対面の時に言ったり家事を全く手伝わず同じところにずっと立ってたりとにかく怖い
    サエコのホームレスと10ヶ月も過ごしたという消したい過去も謎すぎて怖かった
    文章はうまいなぁという感じで読みやすいんだけど、読んだ後特に何の感想もないな、という感じ

    昨夜はたくさん夢を見た
    は友達と旅行に行ってた彼氏が帰ってきてから今までと違う人になったような気がしてるうちにインドにいっちゃう話
    そのインドから送られてきた手紙に恋人とか家族とかと今まで同じものを見て同じ感想を持ってみたいな感じだと思ってたけど実は違うってことに気がついて絶望した。
    実はお互い別々の瓶に入っていてそこからみてるみたいなのはああ〜なんかわかるなってなった

  • なるほど初期作品だなと思う。
    後期作品にあるわかりやすさと実社会の事象への寄り添いが少なく、より主人公の内面にフォーカスしている。一方で角田作品特有の主人公のゆらぎ、これは信用できない語り手なんじゃないか、と思わせる感覚は強くそこに存在していて、角田作品と認識できる。

    危うさの描写こそそこにあったものの、危うさの根源にの描写がなく、そもそもなぜ主人公は揺らいでるのか、これからどこに行くのかがよく分からなかったし、想像力もかきたてられなかったということで少し低めの評価。

    でも一度角田光代さんの作品を順番を追って読んでみたいかもと思わせてくれる読書体験だった。

  • 2022.04.15 表題作のみ
    表題作のみ読んだ為、評価低め(自分の戒め)

    ”通常と異常がこの生温い時間を作った”

    角田光代さんの本は「愛がなんだ」「薄闇シルエット」を筆頭に、エッセイなども読ませて頂いてきた。
    今回の作品に関しては、夜中に読んでしまい、ちょっと後悔した。「ウゥッ!コワァっ!」と深夜に胸がざわついてしまい、翌日の朝までグルグルと何もないことを考えてしまう羽目となった。
    というのも、特に私をグルグルと考えさせたのは、「サエコの精神状態」に関してである。
    先日、兄弟が子を産んだ。姉は元来、ドーンと構えるたちである。であるにも関わらず、「妊娠」「母となる状況」となると、姉でさえも、精神がやや不安定であるように思えた。何か思いがけな小さなハプニングが発生した際の騒ぎ立て方が、サエコの精神状態を俯瞰で見た時に、サエコと姉が、少し似通っているようにも思えた。

    さて、話の内容的には「はて?」と思う部分もあったわけだが、その部分の解釈に関しては、頭の片隅に置いておくことにしておいて。個人の独断と偏見と解釈になるのでね。
    表題作を読み終え、少しの苛立ちと悲しさを抱えていた。しかし、客観的に見た時に「あれ、これって誰がおかしいんだろう」とゾワゾワとしてきたのである。
    確かにサエコも変わっている。タクジも実夏子も変。けれども、サエコの精神状態を踏まえた主観として話を進めるので、サエコよりもタクジと実夏子の方が異常者のように思えてきてしまう。
    独特の精神状態により、どこかには存在する様相なのに、どこにも存在しない異常が生み出されたのだろう。

    妊婦の精神状態を知っていたからこそ、何もかも異常だという言葉では片づけられなくなったように思える。(それもどちらかと言うと「自分が妊婦」というよりも「他の人(友人なり兄弟なり)が妊婦」と言う状況下にあった人は、『ウッワ!』となるような気がする)

    ま、兎にも角にも。夜中に読んでしまったこともあり、ゾワゾワしてしまつ内容であるということで。
    ちょっと人間的な怖さに興味がある人は良いのではなかろうか。ちょっと人間的な怖さが苦手でありながらも、怖いもの見たさの方は、明るい人が多いところでキンキンの水出し珈琲でも飲みながら読むことをお勧めする(唐突な独断と偏見)

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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