月魚 (角川文庫)

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著者 : 三浦しをん
  • 角川書店 (2004年5月25日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043736027

月魚 (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 代々古書店 古窮堂を営む真志喜と、せどりの息子と言われながらも確かな目を持つ瀬名垣。

    本を愛し本に愛される二人の青年は、罪や傷を共有することでより強く結びつく。共に被害者でありながら共犯者でもある、密な関係。

    漱石の世界のように流れる言葉、萩尾望都の世界のような官能、さらにもう亡くなってしまったけれど北森鴻の古美術 冬狐堂シリーズを彷彿とさせるような。

    古いものはその歴史の分だけ、手に負えないなぁ。

  • 古書店、無窮堂の若き三代目である真志喜は、美しく中性的な容姿で、どこか浮世離れしていて人を寄せつけない雰囲気を持つ。そして同じく古書店を継いだ瀬名垣は、人好きする性格だ。
    対照的ながら幼馴染である二人は、幼い頃に起こったとある事件から、深く入り込めないのに離れられないという因果を引きずったまま、25歳になった。
    本を愛する二人の、古書店としての日々。そしてお互いへの想い。

    これは三浦しをんさんが真面目に取り組んだ淡いボーイズラブ、ということになるのだろうか。直截的な表現はないものの、きっとそうなのだろう、と匂わせる部分はそこかしこにあって、そういうものに嫌悪感を持つ人はもしかしたら駄目かもしれない。
    でも何か低温というか、透明感が漂っているというか。
    まさにタイトルの感じ。魚が泳ぐ夜の水面に、月がゆらゆらと写っているような、そういう雰囲気の小説だと思った。

    そして、古書店の仕事を垣間見ることが出来たのはとても興味深かった。古めかしい昔ながらの古書店って私の地元にも何軒かあるけれど、たくさん人が入っている様子はないし、こういうお店の人はどうやって稼いでいるのかという疑問が解けた。
    貴重な古書を見極める目を持つには勉強も必要だけど、持って生まれた才もかなり左右するということ。
    本を間に挟んだ人と人とのつながりであったり、本を愛する人の想いであったり。そういうものを見極めるのは、勉強よりも持ち前の才なのだと思う。

    そしてこの物語の核になっているのは、人は罪の意識を背負ったままで誰かをまっすぐに愛することが出来るのか、ということなのではないかと私は解釈した。
    この物語の二人もお互い惹かれ合ってはいるのに、昔の事件からくるお互いへの罪悪感に縛られていて、だからこそ惹かれ合うのかもしれないし、そうではないのかもしれないし…という複雑なところに身を置いている。
    その危うさがこの物語に透明感を与えているのかもしれない。

    二本目に二人の高校時代をとある国語教師の目線で描いた短編と、最後に書き下ろしの超短編という、充実した内容。
    真志喜の人を寄せつけないのに人を惹きつける感じが良かった。遠くから見つめていたい、という気持ちがとてもよく解る。

  • 2001年(平成13年)。
    古書に魅せられた者達の情念と業。
    内に秘められた官能の世界。

    青白い炎の方が熱い、と言っていたのは誰だったろう…。

    「罪」は、逆から読むと「蜜」なのだ。

  • とにかく綺麗で、というか綺麗って単語が陳腐なくらい、美麗で艶やかな文章でさらりと描かれたとても気持ちのよい一冊。

    思わず鳥肌がたつくらい、何もかもがいい。

    瀬名垣と真志喜の間に強くたちはばかっている過去の記憶と罪の重さ、その一方でずっとそばにいたいと思う気持ちの強さがひしひし伝わってくる。
    ひととひとの距離、これをこんなに上手に気持ちよく描けるひともいるんだなあ。
    それがこの物語を作っているのであり、もどかしさすら感じさせる。だけれど、そのもどかしさと同時に、登場人物の心の奥に込められた深い気持ちに触れてほんわかする。

    人は罪を負ったままでは人を愛してはいけないのだろうか。


    この「月魚」は、決して情熱的な話ではない。
    さらりとした、話。
    なのにこの作者の手にかかると、その淡白さがむしろ奥が深くてどっぷりとした世界観を作り上げる。

    三浦しをんというこの筆者に出逢えて本当によかった。

  • こいつらできてる(確信)

    ガチだった。からだの関係仄めかしまくりだった。開始20ページであまりのホモっぷりに逆にくじけそうになったけど、BL小説だと思って読み終えた。


    こらあかん萌えますわ…お互いがお互いに罪の意識持ってるっていうのがなんともいえない。らぶらぶなのになりきれてない。なにこれすっげーホモ。

    とりあえず「熱いくらいでしたよ」について瀬名垣よ詳しく頼む…お願い…詳しく…そういう意味にとっていいの…? ねえそうなの瀬名垣…答えろ瀬名垣…てめえ瀬名垣…名前で呼ぶときってなんだ瀬名垣…おい……


    25っていうわたしの萌えポイントを的確についてくる年齢に古書店、さらに着流しという怒涛の萌えな?真志喜かわいいよ真志喜

    はーえらいこっちゃ…思考がとっちらかってますねいつものことです

    ただなんかちょっと物足りなかったような気がしないでもない。続編、続編を…真志喜のデレをもっとくれ…わたし思ってたより真志喜好きだ……はーもえた。ホモかきたい。おわる。





    @市立図書館

  • 古書店『無窮堂』の若き当主、真志喜とその友人で同じ業界に身を置く瀬名垣。二人は幼い頃から、密かな罪の意識をずっと共有してきた―。瀬名垣の父親は「せどり屋」とよばれる古書界の嫌われ者だったが、その才能を見抜いた真志喜の祖父に目をかけられたことで、幼い二人は兄弟のように育ったのだ。しかし、ある夏の午後起きた事件によって、二人の関係は大きく変っていき…。透明な硝子の文体に包まれた濃密な感情。月光の中で一瞬魅せる、魚の跳躍のようなきらめきを映し出した物語。
    「BOOK」データベース より

    「BOOK」データベースの本紹介、最後の一文うまい.
    本に対する情熱はどちらも引けをとらない.過去に確執があったらしいが、その辺はちょっとよく分からない.まぁ、え、そんなこと?と人が思うことも当人にとっては一大事、ということはよくあることだ、と思えば、一大事なのだ.
    二人のさらりとしているかと思えば濃密な関係性が読んでいて心がざわざわする.

  • 果たしてこれを、BLといいきって
    ホモと言っても良いのだろうか。
    奇しくも古書店を舞台にしたものが注目される中、月魚に出会えたのは偶然とも必然とも思える。


    しかして感想をかけと言われればこの感動や安堵感はなんとも言葉にし難い。
    冷え冷えとした冬の中にぽっかり浮かぶ、透明なびいだまを覗き込んでいるときのような不思議な感覚。
    心がすっと通るような冬の冷たさと心地の良い息苦しさ。
    続編には、眩しくてくらむような夏の話も。

    息をするようにそばにいる友人がいる人ならば、真志喜や瀬名垣のなんとも言い難い距離感に多少なりとも身に覚えがあるのではないか。

    瀬名垣のような感情を抱かずとも、そういう友に身に覚えのある私はやはり、萌えと感動の間で困っている。

  • 真志喜の描写が特に細かく、美しい
    色素の薄い髪、抜けるような肌、着流しの華奢な体躯、といった麗しい言葉でありありとそこにいる
    瀬名垣との間に流れる静かで潔く、それでいて熱情的な空気がたまらない
    2人以外の人間を排した世界に、とりまく人々も魅せられる
    無駄のないあっさりとした文体だからこそ際立つ、登場人物たちの清廉な美しさ

    また、古書を取り巻く人々の生き方に
    憧憬とも羨望とも違う愛しさを感じる
    美しい2人の男
    纏う古書と土の香り
    この空気に酔うことが、この話の全てだと思った。

  • カドフェス2015に紹介されていて、かつ有名な作者だからと手に取ったがBL作品でした。正直なところ、そうなのだという表記が欲しい。
    序盤から隠しはせず匂わせてきたため驚きました。
    結局最後まで読んだけど、正直同性愛に抵抗がある人も多いため「これおもしろいよ」とは勧めにくいです。
    ただし作品のまとう空気感は好きでした。

    十三年前の些細な、それこそ子供ながら純粋に「これが欲しい!」という思いから起こした行動が一人の大人を傷つけ、家庭を崩壊させてしまったことへの罪悪感を抱えている瀬名垣と、古書店の店主・真志喜の両片思い。
    予期せぬ再会、新たな出発への覚悟と短いながら盛りだくさんで読み応えありました。

  • 装丁も題名も田舎っていう設定も……全て繊細な雰囲気を漂わせておきながらその芯は意外と力強い。
    またBLも含むということでどんな風に描かれるのだろうと身構えてたけど、匂い系とガチ系のやつの狭間っていう絶妙な所で小説の内容に対する違和感もないし、むしろその関係がないと!って思える。
    綺麗で繊細なテーマに見えて実は力強い。
    また古書を取り扱うってのも、魅力的(ビブリア古書堂読んでるせいかもだけど…)。
    いろんな人の青春や思い出とかが詰まってる美しい作品だと思う。

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