トップ・レフト ウォール街の鷲を撃て (角川文庫)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043755028

作品紹介・あらすじ

日系自動車メーカーのイラン工場建設のため、一億五千万ドルの巨大融資案件がもちあがった。大手邦銀ロンドン支店次長・今西は、国際協調融資の主幹事(トップ・レフト)を獲得すべく交渉を開始するが、かつての同僚で日本を捨て、米系投資銀行に身を投じた龍花が立ちはだかる。そこに突如、世界を揺るがす敵対的買収が…。弱肉強食の国際金融の現場を余すところなく描いた衝撃のデビュー作。

感想・レビュー・書評

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  • 複数の銀行で巨額のローンを引き受けるシンジケートローンにまつわる話。重厚な金融小説。
    外資系投資銀行=証券会社のえげつないまでのお金への執着と、それに紐づいたトレーダーへの報酬制度があり、一方で、日本の銀行は社内政治に明け暮れて、賃金も安いし、成功報酬もほとんどないし、海外と戦う力ないという悲しき感じ。
    金融トレーダーとかスマートに見えて、結構ドロ臭い電話営業とかをこなさないといけないし、海外出張もしょっちゅうだし、当然言語の壁も超えないといけないし、突発的な作業もあるし、法律や海外政情にも詳しくないといけないしで、なかなか大変な世界なんだなというのが分かって面白かったです。なりたいとは思わない。
    素人向けにも分かるように金融用語を使ってくれているので、普通の小説としても楽しめるはず。駆け引きにつぐ駆け引き、そして用意された伏線とどんでん返しもあります。

  • 国際金融の世界を1つの大きなディールを軸に、日本の都市銀行(メガバン誕生日前)のロンドン支店で働く今西と、日本国籍を捨て米系投資銀行のロンドン支社で働く龍花の視点で描いた作品。

    金融知識は素人レベルですが解説のおかげで非常に読みやすかったです。
    自分は投資銀行の人間ではないですが、龍花に自己投影をする場面が何度かあり考えさせられるものがありました。
    場面と視点の切り替わりが激しく疲れますが、刻一刻と動く国際金融の臨場感が感じられる面白い作品でした。

  • 面白かったand金融系の知識がなさすぎて勉強になった。

    この業界にいる人曰く、
    「話がリアルすぎて仕事を思い出して嫌になる」
    と言ってたのはつい笑った。

    国際金融小説ではあるけど、
    あくまで主体、主人公は
    「日本」であるなと感じた。

    また、今と当時で
    日本の金融の位置は違うと思っていて、
    この頃の日本はまだ羽振りの良かった時代で、
    国際的なアクターになりやすい時代であったのだなと思った。

  • そう来たか!かなりエキサイティング。日本そして海外の金融の色々な方面からの描写がとても面白い。ただ15年近く前に描かれている外資の効率と日本の金融の効率の対比が現在でもよく見える対比であるのはとても見ていて悲しい。金融の世界に興味がある人には是非読んでほしい。

  •  どうして邦銀の上層部の人間はこうも無能になってしまうのか、またそのように描写されることに妙にリアリティを感じるのか?
     入行した当初はきっと今西や龍花のように、バンカーとしての誇りと大義に満ちていたはずなのに。

  • 龍花の最後が悲しかった
    金融かっこいいな

  • 邦銀と外銀の争いを描いたもの。

  • 二十年前以上に発表された本作。日系銀行から米系外資系投資銀行に移籍したやり手のインベストバンカーと、その同期で日系銀行に留まるエリート銀行員を中心とした、ロンドンを舞台にしたディール獲得を巡る金融系小説です。

    ・・・
    バブルが弾けて21世紀が産声を上げたころ、外資系投資ファンドはハゲタカなどと揶揄され、貪欲だとか強欲だとか言われた時代が日本にありました。しかしグローバル化が十分進んだ今、外資系金融機関を即強欲な投資銀行、とみなす風潮は殆どなくなったように思います。

    対して日系金融機関はどうでしょうか。上意下達、イエスマン、学閥や派閥に守られた異動・昇進・人事、といったイメージがありました。日本で銀行に勤めた経験はありませんが、金融庁検査やコンプラ重視のコーポレートガバナンスが進み、さすがに本書に出てくるように素人行員が初の海外駐在でトレジャリー部門に異動し自己勘定で大損をこくとかは、今の時代はもうないでしょう。

    しかし、ことなかれ主義であるとか、上の顔色を見て組織が動く、というのはいまだに色濃く残っているように思います(あくまでアジアの外野からしか見ていませんが)。それゆえか、本作の日系銀行次長今西が社内外の妨害にくじけずにディールを成立させる姿にちょっと胸が熱くなるのを感じました。

    本作のこうした勧善懲悪的・ハッピーエンド的結末が私以外にも受けるとすれば、その受けの原因は、物語の筋がリアルとか面白いとかいう要素以上に、どの会社でも多かれ少なかれ正当な努力が認識されないとか、マネジメント層が上しか見ないとか、形式・しがらみ・前例なしとか(ひっくるめて合理が立たないこと)のためにまっとうに仕事が進められないということが今でも依然として多くあるのだろうなあと思った次第です。つまり本作の日系銀行は日本企業の縮図なのではないか、と。

    そう考えると、みんながハッピーに働ける社会というのはやっぱりユートピアで、実らない努力は今後も出てくるし、報われない正直者も今後もいるだろうし、小手先や日和見でうまくいく人もまた出てくるのだろうと思いました。だからこそ本作のような(勧善懲悪的)成功譚が受けるのだし、今でもリアルに面白いと感じるのではないかと思った次第です。

    ・・・
    中表紙の作者欄を見ると、作者は都市銀、証券、商社に勤務経験ありということで、結局職務経験が全部本作のファクターとして組み込まれているようです。道理でリアルなはずです。しかも中東研究で修士号をとられているとのことで中東マーケットやトルコの場面が多いのもうなずけます。

    私の働くアジアの金融機関とは180度とはいかないまでも150度くらいは状況は違いますが、同じ金融の中でもキラキラした銀幕の世界を見るかのように楽しめました。

    銀行業務のほんの一部分しか切り取っていませんが、銀行業務の一部として銀行業・投資銀行を知りたい方にはお勧めできると思います。

  • 久しぶり(おそらく20年ぶり?)に読んだが、
    全然色褪せてなくて驚いた。読み物として、とても面白く、一気に読んだ。

    テクノロジーの時代、ロシアの問題、グローバルな問題、などずっとそこにある。自分がキャッチアップできてなくて、焦りも感じた。



  • 購入: 2006年5月27日
    廃棄: 2022年4月22日

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著者プロフィール

黒木 亮:1957年、北海道生まれ。カイロ・アメリカン大学大学院修士(中東研究科)。都市銀行、証券会社、総合商社を経て2000年、大型シンジケートローンを巡る攻防を描いた『トップ・レフト』でデビュー。著書に『巨大投資銀行』『エネルギー』『鉄のあけぼの』『法服の王国』『冬の喝采』『貸し込み』『カラ売り屋』など。英国在住。

「2021年 『カラ売り屋vs仮想通貨』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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