嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)

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著者 : 米原万里
  • 角川学芸出版 (2004年6月25日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043756018

嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 10歳から14歳をプラハのソビエト学校で過ごした著者が、30年を経て当時の友人に再会するノンフィクション。
    ギリシャ人のリッツァ、ルーマニア人のアーニャ、ユーゴスラビア人のヤスミンカ。それぞれ当時は思いもしなかった人生を時代の波に翻弄されながら生きてきた。しかし、著者と彼女たちが再会した時の若い頃に戻ったような姿は、誰しも経験した事のある感動に溢れていた。第二次世界大戦後の中・東欧にとっては変動の時代、彼女たちは特に戦争や災害に巻き込まれ苦渋を味わったというわけではないが、それでも日本の平和さを実感させられる。

    私もよく幼き頃の友人の事を思い出すことがある。米原さんのように、国を越え、時代の変動を越える程の大きなものではないが、きっとかつての友人たちも大なり小なり様々な体験をして生きているだろう。いつか会いたいと同時に、会った時に恥ずかしくない自分でありたいとも思った。

  • これ程胸に迫るエッセイには、今後なかなか出会えないと思いました。

    共産党員だった父親の仕事の関係で、今のロシア周辺が「ソビエト連邦」だった1960年代前半の少女時代をチェコのプラハにあるソビエト学校で過ごした米原万里さん。後年、ロシア語通訳者となった彼女が1990年前後に、ソビエト共産主義の崩壊を軸に運命を翻弄され続ける同級生3人を捜し歩いた再会の日を少女時代の思い出と共に綴ったエッセイ集。

    祖国ギリシアの晴れ渡る青空に狂おしい程恋焦がれていた蓮っ葉なリッツァ。
    気はいいけど、共産革命的賛辞を異常に好み、嘘つき癖のあったルーマニア人のアーニャ。
    頭が良く超然としているようで、孤独にもがいていたユーゴスラビア人のヤースナ。

    ソ連と祖国の関係性や政情不安に翻弄され続けながら、ロシアでも各人の祖国でも多感な時期を過ごしたチェコでもない、第三国で生きることになった三者三様のそれぞれの劇的な人生と邂逅しながら、彼女たちの複雑な郷愁や欺瞞、孤独、恐怖、そして、それでも生きていく力強さなどが、少女時代の思い出と親友たちの変わりゆく姿への感傷と、冷静な観察眼の程よい絡まり合いのもとで、過不足のない簡潔な言葉で余すところなく綴られていて、ほとんどイッキ読みしてしまいました。

    まるで少女向けの童話のように可愛らしいタイトルと装丁ですが、反して、中身は体験者にしか描くことが許されない生(なま)の歴史に満ちています。(私はソ連崩壊の意味を肌で感じることは出来なかった世代ですが、それでも色々考えされられました)

  • 童話のように可愛いタイトルに惹かれジャケ買いならぬタイトル買いだったが、
    まさかのドキュメンタリー。
    大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。

    1960年から5年間作者が通っていたチェコの在プラハ・ソビエト学校で
    同級生だった3人の異国の友達を、約30年の時を越えて訪ねて行くというストーリー。
    この30年間彼女らが過ごした東欧は
    民主化闘争・社会主義体制崩壊と激動の時代だった。
    その波をかぶりながらも生き抜いた彼女らとの再会。
    そして、真っ赤な真実とは?

    各章とも前半の子供時代の可愛いエピソードと、後半の細い細い糸を辿りながらの
    スリリングな捜索が対比となるストーリー運びが素晴しく、読み始めてすぐに心を鷲掴みに。
    ノンフィクションゆえのドキドキする緊迫感は、最後のページを閉じるまで止むことがない。
    読書冥利につきるとは、こういう本を言うのだろう。

  • これは面白い!
    この本の評価を最高の5つ★にしたので、これまで読んだ本の評価の★を一つづつ減らしたほどだ。(笑)

    著者を通して、これまでとは違う角度で東欧の歴史を知ることができ、とても勉強になる。

    過酷な現実が、私の多感な高校・大学時代にも世界のどこかで多くの人々を傷つけてきたこと、

    その時代に生きていながらも、その現実を知らなかったこと、

    でも遅くはない、知った時から考えていくべき事柄も見えて来た。


    特に私は「白い都のヤスミンカ」が好き。

    半年前にバルカンを旅したおかげで、より身近に感じられたこの作品。
    少し歴史を知ってこの本を読んだからか、内容がリアルに頭の中で映像化された。

    もちろん、この本を読んでから改めて歴史を知るのも、難しく複雑な東欧の現代史を学ぶ時に役立つと思う。
    この本に出会えて本当に良かった。

    そして、昔から長い黒髪にこだわっていた自分の深層心理をも、自分で理解できた気がする。(笑)

    http://picchuko.blog.fc2.com/blog-entry-966.html

  •  とあるお人に

     「読書リハビリになるような読みやすい文体で、
     且つ文章が巧くて内容があって面白い本はないか」

     と無茶な質問をしたところ、「米原万里」とのお返事を頂き、
     図書館で適当に探して見つけて読んでみたのが本作。
     米原万里は初めて読む。



     最初、「確かに文体は簡潔で巧いし魅力的だ」と思ったものの、

     同時に
     「共産主義や社会主義、世界史、地理の知識に乏しい自分が読むには
     難しそうだ」
     と感じた。


     しかし読み進めてみたらそれらの知識が無くても充分楽しめた。


     主人公であり筆者自身である「マリ」が
     少女時代に交流した個性的な友人たちとやり取りは微笑ましかったし、
     大人になったマリが彼女たちを探しに旅に出るくだりはハラハラしたし、

     ついに再会を果たしたあとの彼女たちの変化と
     それに対するマリの心情には「うーむ」とうならされた(いい意味で)。


     しかしダメ元でオススメを訊いたのに、いい作家を教えてもらったものだ。人脈って大事ね。

  • 米原万里さんのことは"ロシアに精通した方"と思っていたので
    お住まいもきっとロシアと想像していまたら
    プラハで暮らしてたことがおありだったとここで初めて知りました。

    そしてこちらの著書
    「嘘つきアーニャと真っ赤な真実」は
    そのプラハにお住まいだった頃(小中学校時代)の思い出の物語と
    日本に帰国されてから約30年後、中東欧紛争の影響で音信の途絶えてしまった
    懐かしい友の消息を訪ねる旅の手記です。

    元はギリシャ人で、チェコスロバキア(当時)には5歳の時に
    一家で亡命してきているリッツァ。

    ルーマニア人だけど、生まれはインドのデリーで育ったのは北京。
    パパが大使で、五歳のとき、毛沢東にだっこしてもらったこともあるという
    アーニャ。

    母国ユーゴスラビア連邦(当時)ベオグラード市についての歴史を
    冷静に淡々と事実を突き放して語るヤスミンカ。
    そしてマリ...。

    中東欧紛争の真っただ中をどこでどう生きているのだろうかと
    気に病まずにはいられない三人の友。
    また会いたい...と万里さんの心を突き動かすバイタリティには
    感慨深く胸打たれました。

    三人の友達との懐かしい思い出物語の中で心和んだのは
    「白い都のヤスミンカ」
    ヤスミンカが話してくれた祖国の白い都のお話が好きです。

  • 自分の知らない現実についても少しは知らなきゃいけないと思い、フィクションだけでなくノンフィクション小説にも手を出すことにした。その第1冊目である。
    最近はずっと自分個人に意識が向かっていて、読む小説も個人的な葛藤を描いたものに偏っていた。そのため、民族や国家という大きな規模の問題に巻き込まれる人々の生の声を書いた本書は、より俯瞰的な視点を与えてくれるように感じた。旧友との感動の再会にも喜びだけでなく価値観の相違を目の当たりにするなど、フィクションにはない現実の味わいがあった。

    社会主義と資本主義の対立、民族紛争、人種差別。在プラハ・ソビエト学校時代の旧友との対話により明らかにされるのは、こうした大きな枠組みの問題に人生を左右されることの理不尽さと不幸である。当事者の口から語られる体験や想いにはずしりとした重みがあった。枠の大きな問題も細かく拡大して見れば、そこには常に一人一人の生身の人間がいて、個々の信念や立場があり、それぞれの感情を抱えているということを実感させられる。『抽象的な人類の一員など一人も存在しない』という言葉に大切にすべきことがすべて詰まっていると感じた。そして、社会というのは巨大すぎて抽象的なものと捉えがちだが、個人からなる具体的なものであると気づかされた。

  •  著者米原万里が幼少に通った「在プラハ・ソビエト学校」での思い出。そして当時の友人を訪ねた時の体験を綴ったノンフィクション・エッセイ。

     米原さんの文章は流石ロシア語同時通訳の第一人者という感じで、知らない文化圏での様子がありありと伝わってくる。それでいて表情豊かで裏表のない実直さがある。

     社会の変動に運命を翻弄された少女たちが、その激動の東欧の中でどのように生きたかを辿っていく米原さん。かつての友人を想うばかりに肝を冷やす場面は読んでいるこちらまでハラハラしてくる。友人の一人アーニャを訪ねた際にルーマニアを案内してくれた青年の言葉が印象に残る。

    “「人は自分の経験をベースにして想像力を働かせますからね。不幸な経験なんてなければないに越したことはないんですよ。」”(161ページ)

    この言葉を受けて、この日本で当たり前のように平和を享受している自分がいかにノー天気かを痛感した。リッツァ、アーニャ、ヤスミンカ、そして「在プラハ・ソビエト学校」に通う子どもたちは故国の文化と歴史を背負ってやってきている。そしてその意識は子どもとは思えないほどに強烈な信念である。(むしろ大人になって再会した時のほうが若干柔和されているように感じた。)そう感じるのもまた僕自身にそこまで高い愛国意識がないことと、ナショナリズムにしても批判できるほどに至っていない、つまりなんとなく生きてきてしまっているという恥じらいがあるからだ。

     この本は米原さんでなければ書けなかったし、彼女が書かなければこうして知りうることも無かったかもしれない東欧の現代史である。友人との再会をテーマにすることでこうもわかりやすく歴史文化というものに入り込ませ考えさせようとしてくれる米原さんが若くしてお亡くなりになられたことは心底悔やまれる。もし彼女が今の日本を見たらどのように思い、感じ、そしてどんな言葉を吐いただろう。それがどんな言葉であろうともう聞こえてはこないのである。ならばせめてマリに怒られないような一人の日本人としてありたいと思うのだ。

  • この本を読む前にYou tubeでこの本の元になった『わが心の旅』を観た。それで、興味が沸きこの本を読んだ。

    アーニャの兄とのイタリアレストランでの会話が印象的。
    共産主義というのは、みんなが平等に貧富の差がない生活を目指すべきなのに、幹部とその家族だけが特権階級の恩恵を享受し、とても豪奢な生活を続けている事に憤りを感じているようだった。
    そして、あんなにも愛国心の強かったアーニャが、祖国をいとも簡単に捨ててイギリスへ渡ってしまった。
    軽蔑が入り混じった複雑な気持ちになったのであろう。
    そういうことがものすごく、はっきりと書かれていた。

    今後の友情は大丈夫なのか。。。

    小説のようなノンフィクションのような内容は非常に面白く、一気に読んでしまった。

  • 先々月にプラハを訪れたこともあり、米原さんの描写に町並みを思い浮かべながら読みました。表紙もプラハを描いた絵、まさにあの通り赤い屋根が続く景色だったなぁ。

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嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)の作品紹介

一九六〇年、プラハ。小学生のマリはソビエト学校で個性的な友だちに囲まれていた。男の見極め方を教えてくれるギリシア人のリッツァ。嘘つきでもみなに愛されているルーマニア人のアーニャ。クラス1の優等生、ユーゴスラビア人のヤスミンカ。それから三十年、激動の東欧で音信が途絶えた三人を捜し当てたマリは、少女時代には知り得なかった真実に出会う!大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。

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